<アイルランドの下院は、石炭や石油、ガスなどの一切の化石燃料への投資を停止する法案を可決した。化石燃料からの投資撤退を推進する活動は、欧米で急速に広がっている...>
アイルランドの下院は、2017年1月26日、同国の経済活動や雇用を支援するべく創設された「アイルランド戦略投資基金(ISIF)」において、石炭や石油、ガスなどの一切の化石燃料への投資を停止する法案を賛成多数で可決した。
この法案が成立すれば、アイルランド国債管理庁(NTMA)により、今後5年間をかけて、81億ユーロ(約9,720億円)規模にのぼるISIFの資金がすべての化石燃料から引き揚げられることとなる。
化石燃料からの投資撤退を推進する活動は、近年、欧米で急速に広がってきた。
世界最大の石油財閥・ロックフェラー家の関連財団であるロックフェラー兄弟財団(RBF)が2014年9月に化石燃料からの投資の引き揚げを宣言したほか、米サンフランシスコ、仏パリ、独ベルリン、英オックスフォード、豪シドニーなど、世界70都市でも同様の動きがみられる。
国レベルでは、ノルウェー議会が、2015年6月、石炭からの投資の引き揚げを決議した例があるが、すべての化石燃料を対象とした投資の引き揚げを法律で定めるのは、アイルランドが世界で初めてだ。
アイルランド環境保護庁(EPA)によると、アイルランドの温室効果ガス(GHG)総排出量は、2001年の7,140万トンをピークに減少傾向にあり、2015年時点で5,984万トン。うち、エネルギー分野に起因するものの割合が19.7%を占めている。
アイルランド政府は、温室効果ガスの排出量を2030年までに2005年比で30%削減することを目標に掲げ、持続可能エネルギー局(SEAI)を中心に、省エネルギー化や再生可能エネルギーへのシフトを積極的に推進してきた。
また、首都ダブリンでも、2010年12月、持続可能な都市づくりを目指す10カ年計画「Dublin City Energy Action Plan 2010 - 2020」において、2020年までにエネルギー消費量を33%削減する目標を示している。
ISIFの化石燃料からの投資撤退にまつわる法案には、政府への請願に署名した1万1,000人以上のアイルランド国民の声も後押ししたとみられている。
この法案は、財政委員会での審議などを経て、数ヶ月以内に成立する見込み。投資の観点から"化石燃料からの脱却"の意思を明確にしたアイルランドに対して、世界の政財界がどのような反応を示すのかも、興味深いところだ。
松岡由希子
アイルランドの下院は、2017年1月26日、同国の経済活動や雇用を支援するべく創設された「アイルランド戦略投資基金(ISIF)」において、石炭や石油、ガスなどの一切の化石燃料への投資を停止する法案を賛成多数で可決した。
この法案が成立すれば、アイルランド国債管理庁(NTMA)により、今後5年間をかけて、81億ユーロ(約9,720億円)規模にのぼるISIFの資金がすべての化石燃料から引き揚げられることとなる。
化石燃料からの投資撤退を推進する活動は、近年、欧米で急速に広がってきた。
世界最大の石油財閥・ロックフェラー家の関連財団であるロックフェラー兄弟財団(RBF)が2014年9月に化石燃料からの投資の引き揚げを宣言したほか、米サンフランシスコ、仏パリ、独ベルリン、英オックスフォード、豪シドニーなど、世界70都市でも同様の動きがみられる。
国レベルでは、ノルウェー議会が、2015年6月、石炭からの投資の引き揚げを決議した例があるが、すべての化石燃料を対象とした投資の引き揚げを法律で定めるのは、アイルランドが世界で初めてだ。
アイルランド環境保護庁(EPA)によると、アイルランドの温室効果ガス(GHG)総排出量は、2001年の7,140万トンをピークに減少傾向にあり、2015年時点で5,984万トン。うち、エネルギー分野に起因するものの割合が19.7%を占めている。
アイルランド政府は、温室効果ガスの排出量を2030年までに2005年比で30%削減することを目標に掲げ、持続可能エネルギー局(SEAI)を中心に、省エネルギー化や再生可能エネルギーへのシフトを積極的に推進してきた。
また、首都ダブリンでも、2010年12月、持続可能な都市づくりを目指す10カ年計画「Dublin City Energy Action Plan 2010 - 2020」において、2020年までにエネルギー消費量を33%削減する目標を示している。
ISIFの化石燃料からの投資撤退にまつわる法案には、政府への請願に署名した1万1,000人以上のアイルランド国民の声も後押ししたとみられている。
この法案は、財政委員会での審議などを経て、数ヶ月以内に成立する見込み。投資の観点から"化石燃料からの脱却"の意思を明確にしたアイルランドに対して、世界の政財界がどのような反応を示すのかも、興味深いところだ。
松岡由希子