<汚職にまみれたアゼルバイジャンでの取引は、トランプ・ホテルを含めて丸ごとレッドカードの可能性が高い>
大統領選中も大統領就任後も、ドナルド・トランプと切っても切り離せない疑惑の1つが大統領職とビジネスの利益相反問題だ。米誌ニューヨーカーは最新号で、これまでトランプが行った取引の中で倫理的に最もグレーで、トランプ一族が経営する不動産会社「トランプ・オーガニゼーション」が刑事訴追されかねない汚点を取り上げた。
その内容は、アゼルバイジャンのホテルの建設やマネジメント契約をめぐり、トランプ・オーガニゼーションが汚職まみれの財閥と手を結んだというもの。しかもその財閥は、イラン革命防衛隊と親密な関係を持つ一族とつながっているという。
【参考記事】親馬鹿トランプ、イバンカをかばい「利益相反」体質さらす
アゼルバイジャンの首都バクーにある「トランプ・インターナショナル・ホテル&タワー・バクー」は2008年に事業計画が決まり、建物はほぼ完成したが、一度も公開はされていない。ホテルの建設にあたりトランプ・オーガニゼーションは、当時のアゼルバイジャン交通相で地元の有力財閥を率いるジヤ・ママドフと手を組んだ。立地が悪いなど、事業には問題が山積みだった。だが、しばしば採算度外視のビジネスがまかり通るアゼルバイジャンでは、ともかく事業が進んでしまう。
イラン革命防衛隊と関与?
ニューヨーカーの記事によればママドフは、数年前に内部告発サイト「ウィキリークス」が公表した米国務省の外交公電の中で「汚職が蔓延するアゼルバイジャンでもとりわけ汚職にまみれている」と言われた人物。ママドフとその家族は、イランの著名な実業家一族であるダルビッシュ家との親密な関係でも知られる。そのダルビッシュ家が経営するのが、イラン国外でのテロを支援し、麻薬取引や資金洗浄などの違法活動に関与したとして米政府が非難しているイラン革命防衛隊系の事業会社だ。
【参考記事】ウィキリークス新暴露の衝撃度
ニューヨーカーは、バクーのホテル事業を通じて、トランプ・オーガニゼーションが海外腐敗行為防止法(FCPA)を含む連邦法に違反した可能性を指摘する。汚職が日常茶飯事のアゼルバイジャンで、トランプは事業に乗り出す前の正当な注意義務を怠り、その法的責任を負う可能性があるという。
「バクーでの全ての取引が、とてつもないレッドカードに相当する。外国政府の高官やその一族が直接関与したうえ、彼らはイラン革命防衛軍とつながっていた。汚職の危険を示す兆候がこれほどあからさまなケースはない」と、FCPAの専門家で米ジョージ・ワシントン大学法科大学院の部長補佐ジェシカ・ティリップマンは語った。
【参考記事】弁護士グループがトランプ大統領を提訴、外国金脈を暴けるか
「バクーのホテル事業が示すのは、世界各地の汚職政権が関わるビジネス取引で、トランプが移民に求めているような『厳格な審査』を行わなかったことだ。米議会もトランプ政権も、トランプ大統領やその家族が、所有するビジネスを通じて直接間接にテロリストへの資金提供や資金清浄その他の不適切な取引に関与していないかどうか調査を行う義務がある」と、民主党のシェロッド・ブラウン上院議員(オハイオ州選出)はニューヨーカーの取材に対しメールで回答した。
20カ国以上に事業を展開するトランプ帝国が抱える利益相反のタネは、バクーのホテルだけではない。トランプは大統領就任後に全ての事業から手を引き、経営権を長男のドナルド・トランプ・ジュニアと二男のエリック・トランプに譲渡すると誓った。だが保有資産を一時的に信託に移したに過ぎず、権利は保有している。米政府倫理局のウォルター・シャウブ局長など倫理の専門家は、トランプは大統領職を務めながら、事業を十分に切り離していないと指摘している。彼らが懸念するのは、トランプが政策決定の際、自社の利益を優先することだ。
トランプ帝国の代償を払うのは、アメリカの納税者だけでない。ニューヨーカーによると、アゼルバイジャン政府は2011年、「政府にとって重大な意義のある」事業を立ち上げるとして、30戸の家族を強制的に立ち退かせた。その事業こそ、いまだベールに包まれたままのトランプ・ホテルなのだ。
From Foreign Policy Magazine
ロビー・グラマー
大統領選中も大統領就任後も、ドナルド・トランプと切っても切り離せない疑惑の1つが大統領職とビジネスの利益相反問題だ。米誌ニューヨーカーは最新号で、これまでトランプが行った取引の中で倫理的に最もグレーで、トランプ一族が経営する不動産会社「トランプ・オーガニゼーション」が刑事訴追されかねない汚点を取り上げた。
その内容は、アゼルバイジャンのホテルの建設やマネジメント契約をめぐり、トランプ・オーガニゼーションが汚職まみれの財閥と手を結んだというもの。しかもその財閥は、イラン革命防衛隊と親密な関係を持つ一族とつながっているという。
【参考記事】親馬鹿トランプ、イバンカをかばい「利益相反」体質さらす
アゼルバイジャンの首都バクーにある「トランプ・インターナショナル・ホテル&タワー・バクー」は2008年に事業計画が決まり、建物はほぼ完成したが、一度も公開はされていない。ホテルの建設にあたりトランプ・オーガニゼーションは、当時のアゼルバイジャン交通相で地元の有力財閥を率いるジヤ・ママドフと手を組んだ。立地が悪いなど、事業には問題が山積みだった。だが、しばしば採算度外視のビジネスがまかり通るアゼルバイジャンでは、ともかく事業が進んでしまう。
イラン革命防衛隊と関与?
ニューヨーカーの記事によればママドフは、数年前に内部告発サイト「ウィキリークス」が公表した米国務省の外交公電の中で「汚職が蔓延するアゼルバイジャンでもとりわけ汚職にまみれている」と言われた人物。ママドフとその家族は、イランの著名な実業家一族であるダルビッシュ家との親密な関係でも知られる。そのダルビッシュ家が経営するのが、イラン国外でのテロを支援し、麻薬取引や資金洗浄などの違法活動に関与したとして米政府が非難しているイラン革命防衛隊系の事業会社だ。
【参考記事】ウィキリークス新暴露の衝撃度
ニューヨーカーは、バクーのホテル事業を通じて、トランプ・オーガニゼーションが海外腐敗行為防止法(FCPA)を含む連邦法に違反した可能性を指摘する。汚職が日常茶飯事のアゼルバイジャンで、トランプは事業に乗り出す前の正当な注意義務を怠り、その法的責任を負う可能性があるという。
「バクーでの全ての取引が、とてつもないレッドカードに相当する。外国政府の高官やその一族が直接関与したうえ、彼らはイラン革命防衛軍とつながっていた。汚職の危険を示す兆候がこれほどあからさまなケースはない」と、FCPAの専門家で米ジョージ・ワシントン大学法科大学院の部長補佐ジェシカ・ティリップマンは語った。
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「バクーのホテル事業が示すのは、世界各地の汚職政権が関わるビジネス取引で、トランプが移民に求めているような『厳格な審査』を行わなかったことだ。米議会もトランプ政権も、トランプ大統領やその家族が、所有するビジネスを通じて直接間接にテロリストへの資金提供や資金清浄その他の不適切な取引に関与していないかどうか調査を行う義務がある」と、民主党のシェロッド・ブラウン上院議員(オハイオ州選出)はニューヨーカーの取材に対しメールで回答した。
20カ国以上に事業を展開するトランプ帝国が抱える利益相反のタネは、バクーのホテルだけではない。トランプは大統領就任後に全ての事業から手を引き、経営権を長男のドナルド・トランプ・ジュニアと二男のエリック・トランプに譲渡すると誓った。だが保有資産を一時的に信託に移したに過ぎず、権利は保有している。米政府倫理局のウォルター・シャウブ局長など倫理の専門家は、トランプは大統領職を務めながら、事業を十分に切り離していないと指摘している。彼らが懸念するのは、トランプが政策決定の際、自社の利益を優先することだ。
トランプ帝国の代償を払うのは、アメリカの納税者だけでない。ニューヨーカーによると、アゼルバイジャン政府は2011年、「政府にとって重大な意義のある」事業を立ち上げるとして、30戸の家族を強制的に立ち退かせた。その事業こそ、いまだベールに包まれたままのトランプ・ホテルなのだ。
From Foreign Policy Magazine
ロビー・グラマー