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おしっこプールは実在する 75リットルの尿を検出

ニューズウィーク日本版 2017年3月9日 18時0分

子供のころ、小さな子たちが遊ぶ浅いプールを「おしっこプール」などと呼んでいた経験はないだろうか? 半ば冗談だった記憶があるが、実は大人のプールでさえも、本当におしっこが含まれていることがこのほど明らかになった。

オリンピックサイズ1/3で75ℓ

調査したのは、カナダのアルバータ大学で博士課程を学ぶリンジー・ブラックストック氏の研究チーム。人工甘味料のアセスルファム・カリウム(アセスルファムKとも呼ばれる)は、人間の体で分解されずにそのまま尿として排出されるため、プールの水にどれだけのアセスルファム・カリウムが含まれているかで、プールの中にどれだけ尿が混ざっているかを算出できるという。アセスルファム・カリウムは、低カロリー食品を中心に、たいていの加工食品に含まれている。

調査は、カナダの2つの都市で、31のプールとジャグジーから250以上のサンプルを採取して測定した。その結果、濃度はプールやジャグジーによって大きく異なるものの、全サンプル、つまり全てのプールとジャグジーからアセスルファム・カリウムが検出されたという。

その後、83万リットル(オリンピックサイズのプールの約1/3)と42万リットル、大小2つの公共プールを3週間にわたり調査した。それぞれの水に含まれるアセスルファム・カリウムを計算すると、大きい方のプールには約75リットル相当、小さい方のプールには約30リットル相当の尿が含まれている計算になった。つまり、尿の割合としては0.01%に満たないが、プールで密かにおしっこをしている人は確実にいるということだ。

またガーディアンによると、尿のレベルはプールよりもジャグジーの方がはるかに高いという。あるホテルのジャグジーで検出されたアセスルファム・カリウムの値は、最高値を出したプールと比べると3倍も濃度が高かった。

五輪選手も認めるプールでのおしっこ

ブラックストック氏は、3週間の調査期間中にプールの利用者数を数えなかったことや、1回にされる尿の量が不明であるため、プールでの放尿が一体どの程度一般的なのかは不明だとしている。子供のころはさておき成人になってからはプールでおしっこをしたことを認める人はほとんどいない。しかしThe International Journal of Aquatic Research and Educationが2012年に行った無記名アンケートによると、成人の19%が、これまで少なくとも1度はプールの中でおしっこをした経験があると認めている。



また、米国の競泳五輪代表ライアン・ロクテ選手は2012年の五輪期間中ライアン・シークレスト氏のラジオ・インタビューに答えて、「なぜか塩素に入ると自動的にしちゃうんだよね」と、プール内で放尿した経験を暴露した。それを受けてマイケル・フェルプス選手もウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで「プールでのおしっこはみんなしていると思いますよ。塩素が殺菌するから大丈夫」と同意して話題になったことがあった。

尿からの副生成物で健康被害も

ブラックストック氏によると、尿はほぼ殺菌されるものの、尿素やアンモニアがプールの消毒剤に反応してトリクロラミンなどの副生成物を生成し、目や肺に炎症を起こす可能性がある。トリクロラミンは、プロの水泳選手やプールで働く人の職業性喘息との関係が指摘されているという。

ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)のウェブサイトによると、一度プールの水が尿に汚染されると、それを完全にきれいにするには水を全て取り替える以外に方法はない。しかしパデュー大学のブラッチリー教授はNPRに対し、プールの水は交換するより減った分を継ぎ足していく方が経済的であるため、何年も水が取り替えられないプールは珍しくないと指摘する。また同教授は、「プールでのおしっこは、受動喫煙のようなもの。失礼だし、危険をはらんでいる」と話している。

ブラックストック氏は、本研究がプールの利用を控えるよう訴えるものではないとし、水泳は優れた運動であり、水泳から得られる利点の方がプール中の尿による健康リスクよりはるかに勝ると指摘する。「プールでのおしっこは簡単に解決できます。しなければいい、それだけですから」と、利用者のマナー向上を訴えている。


松丸さとみ

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