流通王者が打ち出した新機軸は消費者に受け入れられるか――。
セブン&アイ・ホールディングスは3月9日、野菜や精肉、鮮魚など生鮮3品を主軸とする新PB(プライベートブランド、自社企画商品のこと)「セブンプレミアム フレッシュ」を展開すると発表した。バナナや豚肉、サーモンといった新商品を3月から順次発売する。
セブン&アイの井阪隆一社長は「従来PBは(低価格の)価格訴求型というイメージがあったが、われわれは品質重視、価値重視で商品開発を進めてきた」と強調する。こうした考えを今回の生鮮PBに反映させたという。
コンビニではなく、スーパーの店頭を中心に展開
たとえば、今回投入するバナナの商品名は「濃厚旨みバナナ」。バナナは高地で栽培するほど糖度が増すといわれる。そこでセブンプレミアムでは標高1000メートル以上の農園で栽培されるものに限定。価格は一房321円(税込、以下同)と決して安くはないが、「味と価格のバランスがとれていれば(消費者に)受け入れられる」とセブン-イレブン・ジャパンの石橋誠一郎・商品本部長は自信を示す。
それ以外にも「カナダポーク」という豚ロースは、小麦を多めに配合した独自の飼料を使うことで肉質が締まり、品質が向上している。価格は100グラムで159円。この肉で作られたトンカツは、冷めても柔らかさを保っているのが印象的だった。
こだわりの豚ロース「カナダポーク」もお披露目された(撮影:梅谷秀司)
実は、今回投入する生鮮PBはコンビニをメインとしていない。イトーヨーカドーやヨークマート、ヨークベニマルといったセブン&アイ傘下の総合スーパーや食品スーパーを中心に展開する。
セブンプレミアムはコンビニや総合スーパー、百貨店などグループを横断する商品として開発されてきた。ただ、実態としてはコンビニでの販売構成比が圧倒的に高く、売上高の約75%をコンビニが占める。
そのため「スーパーなどに足を運ばれる、年齢の高いお客様へのブランドの認知ができていなかった。そうしたターゲットに向け、生鮮のPBに挑戦した」(石橋商品本部長)。
さらに、苦戦するイトーヨーカ堂のテコ入れも狙っている。同社は2016年度の営業損益が2期連続の赤字となる見通し。堅調だった食品もここにきて伸び悩んでいる。一般的にPBはNB(ナショナルブランド。一般メーカーの商品)に比べて採算がよい。取り扱い品目を増やすことで、ヨーカ堂の収益回復につなげる構えだ。
一流メーカーもセブンプレミアムに続々参画
セブンプレミアムの販売が開始されたのは2007年5月のこと。当初は食品49品目でスタートした。初年度の売り上げは800億円。それが10年経った2016年度には3650品目となり、売上高は1兆1500億円にまで膨らんだ。
コンビニの店舗数拡大の効果も大きいが、メーカーとの強固な関係もセブンプレミアムの躍進に寄与している。10年前は中堅メーカーが製造を請け負う場合が多かったが、近年は日本ハムやサントリー、日清食品グループといった大手メーカーも開発に加わっている。
たとえば、日本ハムが製造する「金のハンバーグ」は2010年9月に発売してからヒットが続く。2016年度は930万食、金額にして30億円相当を売り上げた。4月中旬には7度目のリニューアル商品が発売される。
金色のパッケージが目立つ「セブンプレミアム ゴールド」。こちらの商品も刷新していく(撮影:梅谷秀司)
日本ハムは今回の刷新に合わせて製造設備の入れ替えに踏み切った。これまでは130℃で焼き上げていたが、200℃の高温鉄板焼機に変えたことで、うまみを逃がさない製法を実現したという。こうした改善の繰り返しが、セブンプレミアムの原動力となっているわけだ。
2019年度、売上高1兆5000億円が目標
メーカーの中にはこうしたPBの受託拡大を躊躇する企業もある。商品によっては採算が低下するうえ、自社商品と競合する可能性があるからだ。だが、コンビニの場合、1カテゴリーで1商品しか陳列されないケースもある。PBを供給できないと、成長市場において販路を失うことにもなりかねない。そうした事情もあり、セブンと組みたがるメーカーは後を絶たない。
今後、セブンプレミアムが狙うのは海外市場だ。2016年7月にはシンガポール(約360店)に、2017年2月には中国・北京(290店)で菓子類20品目のテスト販売を実施した。日本から商品を輸出したことで、売値は日本の倍になったが、日本以上の売れ行きだったという。2017年度中には中国(北京以外)にも拡大し、2000店での展開を目指す。
グループ全体では2019年度にセブンプレミアムの売上高を1兆5000億円、4200品目という目標を掲げる。井阪社長は「単に品目数を増やすだけではなく、何度も購入していただける商品作りを目指す」と述べる。メーカーとのさらなる連携強化や、生鮮品といった新カテゴリーの成否が目標達成のカギになるだろう。
セブンプレミアムはグループを横断する看板商品。井阪社長(写真中央)は会見後、笑顔で記者の質問に答えていた(撮影:梅谷秀司)
※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
又吉龍吾(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載
セブン&アイ・ホールディングスは3月9日、野菜や精肉、鮮魚など生鮮3品を主軸とする新PB(プライベートブランド、自社企画商品のこと)「セブンプレミアム フレッシュ」を展開すると発表した。バナナや豚肉、サーモンといった新商品を3月から順次発売する。
セブン&アイの井阪隆一社長は「従来PBは(低価格の)価格訴求型というイメージがあったが、われわれは品質重視、価値重視で商品開発を進めてきた」と強調する。こうした考えを今回の生鮮PBに反映させたという。
コンビニではなく、スーパーの店頭を中心に展開
たとえば、今回投入するバナナの商品名は「濃厚旨みバナナ」。バナナは高地で栽培するほど糖度が増すといわれる。そこでセブンプレミアムでは標高1000メートル以上の農園で栽培されるものに限定。価格は一房321円(税込、以下同)と決して安くはないが、「味と価格のバランスがとれていれば(消費者に)受け入れられる」とセブン-イレブン・ジャパンの石橋誠一郎・商品本部長は自信を示す。
それ以外にも「カナダポーク」という豚ロースは、小麦を多めに配合した独自の飼料を使うことで肉質が締まり、品質が向上している。価格は100グラムで159円。この肉で作られたトンカツは、冷めても柔らかさを保っているのが印象的だった。
こだわりの豚ロース「カナダポーク」もお披露目された(撮影:梅谷秀司)
実は、今回投入する生鮮PBはコンビニをメインとしていない。イトーヨーカドーやヨークマート、ヨークベニマルといったセブン&アイ傘下の総合スーパーや食品スーパーを中心に展開する。
セブンプレミアムはコンビニや総合スーパー、百貨店などグループを横断する商品として開発されてきた。ただ、実態としてはコンビニでの販売構成比が圧倒的に高く、売上高の約75%をコンビニが占める。
そのため「スーパーなどに足を運ばれる、年齢の高いお客様へのブランドの認知ができていなかった。そうしたターゲットに向け、生鮮のPBに挑戦した」(石橋商品本部長)。
さらに、苦戦するイトーヨーカ堂のテコ入れも狙っている。同社は2016年度の営業損益が2期連続の赤字となる見通し。堅調だった食品もここにきて伸び悩んでいる。一般的にPBはNB(ナショナルブランド。一般メーカーの商品)に比べて採算がよい。取り扱い品目を増やすことで、ヨーカ堂の収益回復につなげる構えだ。
一流メーカーもセブンプレミアムに続々参画
セブンプレミアムの販売が開始されたのは2007年5月のこと。当初は食品49品目でスタートした。初年度の売り上げは800億円。それが10年経った2016年度には3650品目となり、売上高は1兆1500億円にまで膨らんだ。
コンビニの店舗数拡大の効果も大きいが、メーカーとの強固な関係もセブンプレミアムの躍進に寄与している。10年前は中堅メーカーが製造を請け負う場合が多かったが、近年は日本ハムやサントリー、日清食品グループといった大手メーカーも開発に加わっている。
たとえば、日本ハムが製造する「金のハンバーグ」は2010年9月に発売してからヒットが続く。2016年度は930万食、金額にして30億円相当を売り上げた。4月中旬には7度目のリニューアル商品が発売される。
金色のパッケージが目立つ「セブンプレミアム ゴールド」。こちらの商品も刷新していく(撮影:梅谷秀司)
日本ハムは今回の刷新に合わせて製造設備の入れ替えに踏み切った。これまでは130℃で焼き上げていたが、200℃の高温鉄板焼機に変えたことで、うまみを逃がさない製法を実現したという。こうした改善の繰り返しが、セブンプレミアムの原動力となっているわけだ。
2019年度、売上高1兆5000億円が目標
メーカーの中にはこうしたPBの受託拡大を躊躇する企業もある。商品によっては採算が低下するうえ、自社商品と競合する可能性があるからだ。だが、コンビニの場合、1カテゴリーで1商品しか陳列されないケースもある。PBを供給できないと、成長市場において販路を失うことにもなりかねない。そうした事情もあり、セブンと組みたがるメーカーは後を絶たない。
今後、セブンプレミアムが狙うのは海外市場だ。2016年7月にはシンガポール(約360店)に、2017年2月には中国・北京(290店)で菓子類20品目のテスト販売を実施した。日本から商品を輸出したことで、売値は日本の倍になったが、日本以上の売れ行きだったという。2017年度中には中国(北京以外)にも拡大し、2000店での展開を目指す。
グループ全体では2019年度にセブンプレミアムの売上高を1兆5000億円、4200品目という目標を掲げる。井阪社長は「単に品目数を増やすだけではなく、何度も購入していただける商品作りを目指す」と述べる。メーカーとのさらなる連携強化や、生鮮品といった新カテゴリーの成否が目標達成のカギになるだろう。
セブンプレミアムはグループを横断する看板商品。井阪社長(写真中央)は会見後、笑顔で記者の質問に答えていた(撮影:梅谷秀司)
※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
又吉龍吾(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載