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ロヒンギャ排斥の僧侶に説法禁止令、過激派抑止に本腰か

ニューズウィーク日本版 2017年3月21日 18時14分

<「ミャンマーのウサマ・ビンラディン」と呼ばれる過激派僧侶の説法が禁止されたことで、民族浄化に歯止めはかかるのか>

ミャンマーの仏教僧侶管理組織「マハナ」が、ロヒンギャ排斥を叫ぶ僧侶、アシン・ウィラトゥ師の説法を禁止した。亡命ミャンマー人向け情報誌イラワジ電子版が伝えたところによると、1年間の期間限定だが、これまで反ロヒンギャ運動を看過してきた政府が、過激派と言えども国教の指導的立場である僧侶に処分を下したことは驚きと共に受け止められている。宗教・文化省は、ウィラトゥ師の説法について「宗教的、人種的、政治的な紛争を扇動していることが判明した」とコメントしている。

ウィラトゥ師は2013年にタイムズ誌の表紙を飾った人物。強硬派仏教徒組織「マバタ」を率いて、他宗教を攻撃する姿勢から「ミャンマーのウサマ・ビンラディン」として知られ、西部ラカイン州に住むイスラム教徒少数民族ロヒンギャの排斥を主張してきた。

【参考記事】ミャンマー政府の主導で進むロヒンギャ絶滅作戦

国民民主連盟(NLD)政権は、イスラム教徒に対する人権状況に対する国際的な評価を回復する上でも、マバタへの対応を迫られていたが、これまでは黙認していた。地元メディアによれば、過去に反ロヒンギャの活動を咎められ、マバタの僧侶が警察に尋問されたり捕らえられたことはなかったという。

事実上政権を率いる、アウン・サン・スーチー国家顧問兼外相は人権派というイメージだが、テイン・セイン前政権が進めたロヒンギャへの圧政を容認しているという批判もある。

【参考記事】ロヒンギャ問題でスー・チー苦境 ASEAN内部からも強まる圧力

ただ、昨年12月から激化したロヒンギャの弾圧に、他のイスラム国家をはじめとする国際社会からの非難が強まり、政府はさすがにこの状況を無視できなくなったようだ。

過激派へ解散圧力

マバタは昨年7月に、ヤンゴン管区政府から解散を促されていた。地元紙ミャンマー・タイムズによれば、ウィラトゥ師は、「承認された合法組織」だと主張し、徹底抗戦の意思を示したが、これに対しマハナは、「一度たりとも合法組織と認めたことはない」という声明を発表。マハナのメンバーにマバタの活動に参加することを禁じる通知を出すとしていた。

【参考記事】タイを侵食する仏教過激派の思想

マバタの活動は目立たなくなっていたが、今年1月、イスラム教徒の式典を妨害し、メンバー12人が逮捕されている。



人口にカウントされない

イスラム教を信仰するロヒンギャは戸籍も特殊。前政権時代に発行された暫定身分証(ホワイトカード)は、2015年5月に無効とされ、代わりに身分証明書(NVC)の発行が定められた。だが2016年1月時点で、返還された暫定身分証39万7497枚に対し、発行されたNVCは6202枚にとどまるという。NVCを発行すれば自ら「外国人」として認めることになるからだ。

【参考記事】存在さえ否定されたロヒンギャの迫害をスー・チーはなぜ黙って見ているのか

2014年、ミャンマーで31年ぶりに実施された国勢調査は、ロヒンギャをカウントできず、推定値を算出した。このとき、多くのイスラム教徒がロヒンギャと自称していたが、ミャンマー政府が独自に決めた「ベンガル人」という呼称を使わないロヒンギャは、人口のカウント対象にされなかった。

アナン元国連事務総長を委員長とする政府の諮問委員会は16日、ロヒンギャ問題に関する中間報告書を提出。キャンプで生活する避難民およそ12万人を元の村へ帰すか安全な場所に移転させる戦略が必要だと報告した。委員会のメンバー、ガッサン・サラメによれば、ラカイン州のロヒンギャのうち市民権を持つのはわずか2000人。いまだ100万人のロヒンギャが戸籍や人権を認められていない。

ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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