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ISISのロンドン襲撃テロは時間の問題だった

ニューズウィーク日本版 2017年3月23日 13時5分

<まだ犯行声明は出ていないが、車を凶器にする手口はISISそのもの。シリアやイラクに渡って戦闘員になったイギリス人の数もフランス人に次いで多い>

22日午後、ロンドン中心部の国会議事堂付近で起きたテロ。犯行声明はまだ出ていないが、実行犯を含め4人の死者を出した事件について、インターネット上で早くもテロ組織ISIS(自称イスラム国)の支持者たちが歓喜の声を上げている。

実行犯は「ヒュンダイi40」を運転し、ウェストミンスター橋の歩道に乗り上げて次々と歩行者をはねた後、国会議事堂として使用されているウェストミンスター宮殿の柵に激突。車を乗り捨てて敷地内に入り、警官1人を刺し殺して、議事堂に向かおうとしていたところを駆け付けた警官に射殺された。

【参考記事】ロンドン襲撃テロ事件、死者4人に 犯人は射殺

「周知のとおりロンドン警視庁はこれをテロ事件と宣言し、テロ対策指令部が総力を挙げて捜査を行っている」とロンドン警視庁のマーク・ローリー副総監は22日夜語った。

「車はまずウェストミンスター橋の歩道に乗り上げ、一般の歩行者数人と警察官3人をはねた。その後、議事堂近くで衝突事故を起こし、少なくとも男1人がナイフで武装して、人に切りつけながら議事堂内に侵入しようとした」

イギリス時間の22日夜の段階では、襲撃犯の身元は確認されていない。

快哉を叫ぶISIS支持者

だが情報の不足は、ISIS支持者がネット上ではしゃぐ妨げにはならなかった。ISIS関連のソーシャルメディア・チャンネルは襲撃の模様を追ったライブ映像を公開。ISISの動向に詳しいニューヨーク・タイムズの記者によると、15年11月のパリ同時多発テロ、昨年6月のフロリダ州オーランドでの銃乱射事件、昨年7月にニースで起きたテロでも、ネット上で同様の映像が公開された。この3つの事件ではいずれもその後にISISが犯行声明を出している。

【参考記事】英議事堂テロ、メイ首相が不屈の精神を訴え<声明全文>

テロ監視機関SITEインテリジェンス・グループのリタ・カッツによると、ISIS支持者はこのテロをイギリスがイラクのモスルにあるISIS施設を空爆したことに対する報復だと主張しているという。

カッツによれば、ISISは今のところこの襲撃に関し、ネット上でのキャンペーンをいっさい行っていないが、今回の事件は、これまでにヨーロッパで起き、ISISが犯行声明を出した事件と多くの共通点がある。

群衆に車で突っ込む手口はこれまでも何回か使われており、その背景にはISISの存在がある。ニースでのテロ事件では、7月14日の革命記念日に花火見物をしていた群衆に大型トラックが突っ込み、86人の死者が出た。昨年12月にベルリンで起きた事件でも、クリスマスマーケットに集まった買い物客にトラックが突っ込み、12人が死亡した。

【参考記事】【ニーステロ】車が大量殺戮の凶器になるなら、人混みはどこも危ない



同様の事件はアメリカでも起きている。昨年11月にオハイオ州立大学で起きた事件では、男が車で学生たちを次々にはねた後、車から下りて周囲の人たちを刃物で切りつけた。事件後、ISISはこの男を自分たちの「兵士」として称えた。

ISISは車によるテロを奨励。14年にはシリアとイラクでの戦いに参加できないなら、欧米で車を使って民間人を襲えと支持者に呼び掛けていた。

イギリスではISIS関連のテロはこれまで起きていなかったが、シリアとイラクに渡りISISの戦闘員になった男女の数はヨーロッパではフランスに次いで多い。人質の取引や処刑に関わる一連の映像に登場し、15年11月にドローン攻撃で殺された「ジハーディ・ジョン」ことモハメド・エムワジもその1人だ。

ジェーソン・ルミエール

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