<トランプの娘イバンカの夫は、大統領の上級顧問を務めるうえ、新設のアメリカン・イノベーション・オフィスの責任者も任されたやり手。一方、ロシア疑惑に関わってFBIに証言を求められるなど、究極のインサイダーならではのきな臭さもある>
ドナルド・トランプ大統領の上級顧問を務める娘婿のジャレッド・クシュナーが、上院情報委員会で証言することを承諾した。トランプが大統領選に勝利した後の昨年12月に、クシュナーがセルゲイ・キスリャク駐米ロシア大使との会談に参加した件についてだ。
【参考記事】トランプの娘婿クシュナーが大統領上級顧問になる悪夢
FBI(米連邦捜査局)によればクシュナーは、トランプ政権とロシアの関係をめぐって同局が行っている捜査の焦点ではないようだ。しかし、昨年12月にクシュナーが参加したキスリャクとの会談については疑問が残っている。この会談には、トランプ政権で国家安全保障担当補佐官に任命されたマイケル・フリンも出席していた。フリンは公職に就く前に行われたキスリャクとの電話で、対露追加制裁の可能性について話していたことが問題になり辞任した。CNNの報道によると、クシュナーは、自発的に証言を申し出たという。
なお、ジェフ・セッションズ司法長官は、現在行われている調査から身を引いている。選挙戦のさなかにキスリャクと接触していた、という事実が明るみに出たからだ。
ただしホワイトハウスは、クシュナーの地位に関してさほど心配してはいないようだ。トランプは3月27日、クシュナーに対して、新しく設立された「アメリカン・イノベーション局」の責任者、および官僚機構の再考・改革という任務を課した。クシュナーは、中東和平交渉に関するトランプ政権の取り組みも率いている。
知っておくべき5つの事実
トランプが絶大な信頼を寄せるこの大統領上級顧問について、上院情報委員会での証言が行われる前に知っておくべき5つの事実を以下にまとめておこう。
1. クシュナーの父はかつて、クシュナー・カンパニーズのCEOを務めていた。クシュナーの妻イバンカ・トランプと同じように、クシュナーも、不動産業界の大物を父に持って育ったのだ。クシュナーがニューヨーク大学のビジネス・スクール・ロー・スクールでMBA/法務博士号(J.D.)の勉強をしていたとき、父チャールズ・クシュナーは脱税などの容疑で逮捕され、有罪判決を受けた。
【参考記事】トランプを大統領にした男 イバンカの夫クシュナーの素顔
クシュナーは弁護士になるという夢を捨て、2008年に事業を引き継いだ。当時、連邦検事を務めていたクリス・クリスティは、チャールズ・クシュナーの起訴に重要な役割を果たした人物だ。のちにニュージャージー州知事となり、トランプを支持してきたクリスティーが、ホワイトハウスの要職に就いていないのには、こうした背景があるのかもしれない。
2. クシュナーは、トランプのソーシャルメディア戦略を取り仕切ってきた。トランプ陣営の選挙運動を支えてきた重要人物ともされている。トランプ陣営に加入するまで政界での経験はなかったものの、トランプの演説原稿の執筆や、政策チームの編成、選挙運動の資金繰り、トランプのスケジュール管理などに手腕を発揮した。また、トランプのソーシャルメディアのキュレーターを務めたのもクシュナーだった。フォーブス誌によるとトランプは、マクドナルドのフィレオフィッシュを食べながら、自身のフェイスブックページを引き継いでほしいとクシュナーに依頼したという。
妻と違いメディア嫌い
3. クシュナーは社交的とは言えない人物だ。妻と違い、報道機関と話すことを好まない。取材を受けることは滅多になく、ソーシャルメディアにおけるプレゼンスは皆無。クシュナーのツイッター・アカウントに投稿されたツイート数はゼロだ。クシュナーをソーシャルメディアで見かけることがあるとすれば、妻のイバンカが同氏の写真(大抵は子どもといっしょ)を投稿するときだけだ。先ごろニューヨーカー誌に紹介されたクシュナーの横顔によると、同氏はニューヨーク・オブザーバー紙(現「observer.com」)のオーナーでありながらも、「記者や報道機関を心底嫌っている」ようだ。
【参考記事】トランプファミリーの異常な「セレブ」生活
4. クシュナーはハーバード大学で学んだ。クシュナーの入学については、イバンカと結婚する前に調査の対象となっていた。ダニエル・ゴールデンは2006年の著書『The Price of Admission: How America's Ruling Class Buys Its Way into Elite Colleges―and Who Gets Left Outside the Gates(入学の対価:アメリカの支配階級がエリート大学に裏口入学する方法と、それによりはじき出される人々)』によると、クシュナーの父は1998年に250万ドルの寄付をハーバード大学に約束した。クシュナーが入学したのは翌年のことだった。なお、2017年2月には、何千人ものハーバード大学卒業生たちがクシュナーに宛てた公開書簡で、同大学の座右の銘である「ヴェリタス(ラテン語で「真理」の意)」を敬い、「トランプ政権およびトランプ本人に良い影響を及ぼす」よう呼びかけた。
5. クシュナーは正統派ユダヤ教徒だ。妻のイバンカも、結婚前にユダヤ教に改宗した。夫婦と子どもたちは安息日を守り、金曜日の日没から土曜日の日没には携帯電話の電源を切り、クルマにも乗らずに歩いて移動している。
ジャニス・ウィリアムズ
ドナルド・トランプ大統領の上級顧問を務める娘婿のジャレッド・クシュナーが、上院情報委員会で証言することを承諾した。トランプが大統領選に勝利した後の昨年12月に、クシュナーがセルゲイ・キスリャク駐米ロシア大使との会談に参加した件についてだ。
【参考記事】トランプの娘婿クシュナーが大統領上級顧問になる悪夢
FBI(米連邦捜査局)によればクシュナーは、トランプ政権とロシアの関係をめぐって同局が行っている捜査の焦点ではないようだ。しかし、昨年12月にクシュナーが参加したキスリャクとの会談については疑問が残っている。この会談には、トランプ政権で国家安全保障担当補佐官に任命されたマイケル・フリンも出席していた。フリンは公職に就く前に行われたキスリャクとの電話で、対露追加制裁の可能性について話していたことが問題になり辞任した。CNNの報道によると、クシュナーは、自発的に証言を申し出たという。
なお、ジェフ・セッションズ司法長官は、現在行われている調査から身を引いている。選挙戦のさなかにキスリャクと接触していた、という事実が明るみに出たからだ。
ただしホワイトハウスは、クシュナーの地位に関してさほど心配してはいないようだ。トランプは3月27日、クシュナーに対して、新しく設立された「アメリカン・イノベーション局」の責任者、および官僚機構の再考・改革という任務を課した。クシュナーは、中東和平交渉に関するトランプ政権の取り組みも率いている。
知っておくべき5つの事実
トランプが絶大な信頼を寄せるこの大統領上級顧問について、上院情報委員会での証言が行われる前に知っておくべき5つの事実を以下にまとめておこう。
1. クシュナーの父はかつて、クシュナー・カンパニーズのCEOを務めていた。クシュナーの妻イバンカ・トランプと同じように、クシュナーも、不動産業界の大物を父に持って育ったのだ。クシュナーがニューヨーク大学のビジネス・スクール・ロー・スクールでMBA/法務博士号(J.D.)の勉強をしていたとき、父チャールズ・クシュナーは脱税などの容疑で逮捕され、有罪判決を受けた。
【参考記事】トランプを大統領にした男 イバンカの夫クシュナーの素顔
クシュナーは弁護士になるという夢を捨て、2008年に事業を引き継いだ。当時、連邦検事を務めていたクリス・クリスティは、チャールズ・クシュナーの起訴に重要な役割を果たした人物だ。のちにニュージャージー州知事となり、トランプを支持してきたクリスティーが、ホワイトハウスの要職に就いていないのには、こうした背景があるのかもしれない。
2. クシュナーは、トランプのソーシャルメディア戦略を取り仕切ってきた。トランプ陣営の選挙運動を支えてきた重要人物ともされている。トランプ陣営に加入するまで政界での経験はなかったものの、トランプの演説原稿の執筆や、政策チームの編成、選挙運動の資金繰り、トランプのスケジュール管理などに手腕を発揮した。また、トランプのソーシャルメディアのキュレーターを務めたのもクシュナーだった。フォーブス誌によるとトランプは、マクドナルドのフィレオフィッシュを食べながら、自身のフェイスブックページを引き継いでほしいとクシュナーに依頼したという。
妻と違いメディア嫌い
3. クシュナーは社交的とは言えない人物だ。妻と違い、報道機関と話すことを好まない。取材を受けることは滅多になく、ソーシャルメディアにおけるプレゼンスは皆無。クシュナーのツイッター・アカウントに投稿されたツイート数はゼロだ。クシュナーをソーシャルメディアで見かけることがあるとすれば、妻のイバンカが同氏の写真(大抵は子どもといっしょ)を投稿するときだけだ。先ごろニューヨーカー誌に紹介されたクシュナーの横顔によると、同氏はニューヨーク・オブザーバー紙(現「observer.com」)のオーナーでありながらも、「記者や報道機関を心底嫌っている」ようだ。
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4. クシュナーはハーバード大学で学んだ。クシュナーの入学については、イバンカと結婚する前に調査の対象となっていた。ダニエル・ゴールデンは2006年の著書『The Price of Admission: How America's Ruling Class Buys Its Way into Elite Colleges―and Who Gets Left Outside the Gates(入学の対価:アメリカの支配階級がエリート大学に裏口入学する方法と、それによりはじき出される人々)』によると、クシュナーの父は1998年に250万ドルの寄付をハーバード大学に約束した。クシュナーが入学したのは翌年のことだった。なお、2017年2月には、何千人ものハーバード大学卒業生たちがクシュナーに宛てた公開書簡で、同大学の座右の銘である「ヴェリタス(ラテン語で「真理」の意)」を敬い、「トランプ政権およびトランプ本人に良い影響を及ぼす」よう呼びかけた。
5. クシュナーは正統派ユダヤ教徒だ。妻のイバンカも、結婚前にユダヤ教に改宗した。夫婦と子どもたちは安息日を守り、金曜日の日没から土曜日の日没には携帯電話の電源を切り、クルマにも乗らずに歩いて移動している。
ジャニス・ウィリアムズ