<世界各国の喫煙率、飲酒率を比較すると、喫煙率では東欧が、飲酒率では北欧が高い。台湾を筆頭にアジア各国では健康志向が高まっている>
日本でも煙草と酒を嗜む人は多いが、喫煙・飲酒率は年々減少する傾向にある。厚生労働省の『国民健康・栄養調査』によると、成人男性のうち習慣的に喫煙している人の割合は、2003年では46.8%だったが2015年には30.1%に減少した。習慣的に飲酒する人の割合も、37.4%から33.8%に減少。20代に限って見ると半減している(20.2%→9.4%)。
これは日本でも健康志向が高まっているためだろう。とくに喫煙に対する風当たりは強い。2002年制定の健康増進法では、多数の人が出入りする施設では、受動喫煙の防止措置を取ることが定められた。これは分煙の規定だが、最近はさらに飲食店を全面禁煙にしようという動きもある。喫煙率が減っているのも自然な流れだ。
日本はこのような現状だが、世界各国はどうだろうか。成人の喫煙・飲酒率の国際統計を比較してみた。ISSP(国際的な社会調査プログラム)が2011年に実施した『健康と健康管理に関する意識調査』では、喫煙と飲酒の頻度を尋ねている。頻度は問わず喫煙(飲酒)すると答えた人の割合を、喫煙(飲酒)率としている。
【参考記事】コーヒー、アルコール、喫煙、肥満......脳によくないのはどれ?
日本の調査対象者(18歳以上)のうち、両方の設問に有効回答を寄せたのは1287人。このうち喫煙者は22.0%、飲酒者は39.6%、両方に該当する人は13.2%となっている。煙草は約5人に1人、酒は約5人に2人が摂取していることになる。
このデータを正方形の面積図<図1>で視覚化してみる。左は日本で、右は北欧のスウェーデンのグラフだ。
青色は喫煙率、赤色は飲酒率の割合で、重なった部分は両方の該当する人の割合。スウェーデンでは喫煙率は13.0%と少ないが、気候が寒いためか酒を飲む人は6割と多くなっている。しかし両方に該当する人は日本の方が多い。
他の対象国についても、同じやり方で3つの指標を計算してみた。<表1>は、32カ国の一覧表だ。最高値には黄色、最低値には青色のマークをして、上位3位の数値は赤字にした。なおドイツは、調査対象が旧東西地域に分かれている。
日本の3つの値は、32カ国の平均値よりも少し低いくらい。喫煙率のトップはハンガリーの38.6%、飲酒率ではフィンランドの68.0%となっている。スウェーデンと同じく、寒い国では酒が手放せないのだろうか。両方に該当する人の割合はチェコが最も高く、リトアニアやロシアといった旧共産圏の国々も比較的高い。
【参考記事】ブレグジットの影で進んでいた「孤独」の健康被害。英国で委員会発足
その対極にあるのがアジアの台湾で、喫煙や飲酒をする人がほとんどいない。公共施設や交通機関の中は全面禁煙で、日本より先行している。また食事に酒が供されることは少なく、茶が好まれる土地柄でもある。
今後、日本でも喫煙や飲酒はさらに減っていくだろう。闇雲な規制は個人の嗜好の侵害につながるが、煙を吸わされることによる健康被害(受動喫煙)には気を配らないといけない。飲酒にしても、泥酔して他人に迷惑をかける行為などもってのほかだ。喫煙にも飲酒にも、周囲への配慮が求められる時代になっている。
<資料:Health and Health Care - ISSP 2011>
舞田敏彦(教育社会学者)
日本でも煙草と酒を嗜む人は多いが、喫煙・飲酒率は年々減少する傾向にある。厚生労働省の『国民健康・栄養調査』によると、成人男性のうち習慣的に喫煙している人の割合は、2003年では46.8%だったが2015年には30.1%に減少した。習慣的に飲酒する人の割合も、37.4%から33.8%に減少。20代に限って見ると半減している(20.2%→9.4%)。
これは日本でも健康志向が高まっているためだろう。とくに喫煙に対する風当たりは強い。2002年制定の健康増進法では、多数の人が出入りする施設では、受動喫煙の防止措置を取ることが定められた。これは分煙の規定だが、最近はさらに飲食店を全面禁煙にしようという動きもある。喫煙率が減っているのも自然な流れだ。
日本はこのような現状だが、世界各国はどうだろうか。成人の喫煙・飲酒率の国際統計を比較してみた。ISSP(国際的な社会調査プログラム)が2011年に実施した『健康と健康管理に関する意識調査』では、喫煙と飲酒の頻度を尋ねている。頻度は問わず喫煙(飲酒)すると答えた人の割合を、喫煙(飲酒)率としている。
【参考記事】コーヒー、アルコール、喫煙、肥満......脳によくないのはどれ?
日本の調査対象者(18歳以上)のうち、両方の設問に有効回答を寄せたのは1287人。このうち喫煙者は22.0%、飲酒者は39.6%、両方に該当する人は13.2%となっている。煙草は約5人に1人、酒は約5人に2人が摂取していることになる。
このデータを正方形の面積図<図1>で視覚化してみる。左は日本で、右は北欧のスウェーデンのグラフだ。
青色は喫煙率、赤色は飲酒率の割合で、重なった部分は両方の該当する人の割合。スウェーデンでは喫煙率は13.0%と少ないが、気候が寒いためか酒を飲む人は6割と多くなっている。しかし両方に該当する人は日本の方が多い。
他の対象国についても、同じやり方で3つの指標を計算してみた。<表1>は、32カ国の一覧表だ。最高値には黄色、最低値には青色のマークをして、上位3位の数値は赤字にした。なおドイツは、調査対象が旧東西地域に分かれている。
日本の3つの値は、32カ国の平均値よりも少し低いくらい。喫煙率のトップはハンガリーの38.6%、飲酒率ではフィンランドの68.0%となっている。スウェーデンと同じく、寒い国では酒が手放せないのだろうか。両方に該当する人の割合はチェコが最も高く、リトアニアやロシアといった旧共産圏の国々も比較的高い。
【参考記事】ブレグジットの影で進んでいた「孤独」の健康被害。英国で委員会発足
その対極にあるのがアジアの台湾で、喫煙や飲酒をする人がほとんどいない。公共施設や交通機関の中は全面禁煙で、日本より先行している。また食事に酒が供されることは少なく、茶が好まれる土地柄でもある。
今後、日本でも喫煙や飲酒はさらに減っていくだろう。闇雲な規制は個人の嗜好の侵害につながるが、煙を吸わされることによる健康被害(受動喫煙)には気を配らないといけない。飲酒にしても、泥酔して他人に迷惑をかける行為などもってのほかだ。喫煙にも飲酒にも、周囲への配慮が求められる時代になっている。
<資料:Health and Health Care - ISSP 2011>
舞田敏彦(教育社会学者)