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トランプの「反・温暖化対策」に反対する意外な面々

ニューズウィーク日本版 2017年3月30日 19時20分

<28日、オバマ前政権の環境政策を全面的に見直すよう命じる大統領令に署名したトランプ。しかし「環境より経済」を掲げるトランプに対し、米経済界から反発の声が上がっている>

ドナルド・トランプ米大統領が3月28日、アメリカの地球温暖化対策にとって大きな転換点となる大統領令に署名した。バラク・オバマ前大統領が2015年に策定した「クリーン・パワー・プラン」などの環境政策を全面的に見直すという命令だ。

世界2位の温室効果ガス排出国であるアメリカが、いよいよ本腰を上げ、火力発電所からの二酸化炭素排出を規制すると打ち出したのが同プラン。アメリカは温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」に参加しており、2025年までに2005年比で26~28%の排出量を削減することになっていた。今回の大統領令により達成の見込みはほぼなくなるとみられている。

温暖化はでっち上げとも言っていたトランプは「環境より経済」を掲げ、選挙戦ではパリ協定からの脱退も示唆していた。1月下旬にも、カナダからアメリカに原油を輸送するダコタ・アクセス・パイプラインの建設計画を推進する大統領令に署名している。環境保護の観点からオバマ政権がストップをかけていた計画だ。

【参考記事】トランプ、想像を絶する環境敵視政策が始まった──排ガス規制の米EPAに予算削減要求とかん口令

しかし今回、意外なところから反発の声が上がっている。米経済界だ。

「温暖化はパリ協定のような多国間合意により世界規模で取り組むべき問題だと考えている」と、米経済界を代表する1人であるGEのジェフリー・イメルトCEOは29日、社内向けのブログに書いた(ブログ投稿を入手したポリティコが報じた)。「アメリカがこれからも建設的な役割を果たすことを願っており、GEはテクノロジーと行動を通じてこの取り組みをリードしていく」

イメルトによれば、地球温暖化は「広く認められた」科学であり、この問題に対処する環境技術は、環境保護だけでなく企業利益の点からも理にかなっている。

GEだけではない。米大手食品会社のマース、オフィス用品の全米チェーンであるステープルズ、衣料品の世界大手GAPなどが、英ガーディアンの取材に大統領令への反対を表明している。「トランプ政権がクリーン・パワー・プランのような規制を後退させる決断をしたことに失望している」と、マースの広報幹部エドワード・フーバーは言う。



ティラーソン国務長官の古巣エクソンモービルも

極めつけは、エクソンモービルだろう。テキサス州に本拠を置くアメリカ最大のエネルギー企業である同社も、反対意見を表明しているのだ。

トランプ政権からパリ協定に対する見解を求められたエクソンモービルは、3月22日、ホワイトハウスに書簡を送り、パリ協定は「気候変動のリスクに対処する効果的な枠組み」であり、アメリカは脱退すべきでないと伝えていた。かつて石油メジャーと呼ばれ、温暖化についても世論誘導などで批判を受けたこともある同社が、である。

ただし、CNNによれば、同社は2007年に温暖化リスクについて公に認め、二酸化炭素の排出削減に取り組むと約束している。パリ協定への支持も表明してきた。

レックス・ティラーソン現国務長官は就任前までエクソンモービルのCEOを務めていたが、ティラーソン自身も、1月の承認公聴会では「気候変動のリスクは存在する。深刻な事態にならないよう行動しなければならない」と発言している(残念ながら、ティラーソンにトランプを止める力はないようだ)。

【参考記事】来日したティラーソン米国務長官、同行記者1人、影響力なし

確かに、アメリカでは今も地球温暖化に懐疑的な意見が根強いが、「環境より経済」を掲げる大統領の「反・地球温暖化対策」に対して、経済界から批判が相次いでいるのは皮肉という他ない。


ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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