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イバンカ政権入りでホワイトハウスがトランプ家に乗っ取られる

ニューズウィーク日本版 2017年3月31日 20時10分

<政権入りはしないと言ってきたトランプの長女が、パワフルな大統領補佐官として夫と共に政策に関与することになった>

ドナルド・トランプ米大統領の長女イバンカ・トランプが、正規職員としてホワイトハウス入りする。肩書きは、政権で最も影響力がある大統領補佐官(国家安全保障担当)と上級顧問の2大ポストに匹敵する「大統領補佐官」になる見通しだ。

イバンカをめぐっては先週、ホワイトハウスに執務室を構えるが正式な役職には就かないと発表されたばかりだが、今後は連邦職員の立場で、上級顧問として無報酬で政権入りした夫のジャレッド・クシュナーが率いるチームに加わる。

【参考記事】トランプの娘婿でイバンカの夫、クシュナーの素性

これは政権入りの可能性を否定してきたイバンカ自身の発言や、トランプの子供たちは政治に関与しないとした当時の政権移行チームの説明に逆行する動きだ。

【参考記事】ファーストレディーは才女イヴァンカ?

イバンカは水曜に声明を発表し、「個人的な立場で大統領に助言をすることには懸念の声があった」と説明した。「今後は無報酬でホワイトハウスの職員となり、他の正規職員と同じ規定に従う」

イバンカは米政府倫理局に対して、利益相反を避けるため、自分の名前を冠したファッションブランドからどのように距離を置くかを文書で説明しなければならない。本人いわく、すでに日常業務からは離れているが、ブランドは今も所有したままだ。

【参考記事】親馬鹿トランプ、イバンカをかばい「利益相反」体質さらす

隠然とされるよりはいい?

大統領の家族が政権入りすることには批判的な意見がある一方、現状では最善の策とみる専門家もいる。

「トランプ政権発足後、非公式な助言ルートが定着してしまった」と、英キングス・カレッジ・ロンドンの研究員としてトランプの政権移行チームを分析したジョー・デバニーは言う。「もし今後の政権運営でどうしても親族からの助言が欠かせないのなら、正式なルートで伝えて書面にも残すなど、可能な限り正式に扱ったほうがましだ」

イバンカが連邦職員になるメリットとして、トランプとの関係が外部から見えやすくなり、助言の内容もわかるとデバニーは言う。だが逆に、政府の役割分担を複雑にするデメリットもある。もしイバンカが外国政府からの窓口になれば、国務省はどの国の政府とどういうやり取りが行われたのかがわからなくなる。

国家安全保障担当のH.R.マクマスター大統領補佐官も重要な仕事がしにくくなる。国務長官と国防長官から情報を吸い上げるのが任務だからだ。

反対意見もある。どうしてイバンカが大統領補佐官にふさわしいのか、とツイッターで質問を受けたマイケル・マクフォール元駐ロシア米大使(米スタンフォード大学教授、政治学)は、こう回答した。「うーん、分からない」



トランプ寄りの人物ですら、子供たちの関与には当初から異議を唱えていた。昨年の大統領選でトランプが勝利した数日後、政権移行チームの責任者だったルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長は米CNNに出演し、トランプの子供たちが政治に口出しできないよう障壁を作らねばならないと言った。

イバンカはそれと同じ日に米CBSニュースに出演し、ホワイトハウスで働く計画はなく、むしろ「娘としての役割」に尽くすと語っていた。

ケネディ以来の反縁故者法に反する

ロバート・ライシュ元米労働長官は先週、イバンカの政権入りをこう切り捨てた。「まるでクーデターだ。国家略奪を企む独裁者の家族がホワイトハウスという宮殿に移り住んでいる」

アメリカでは1960年にジョン・F・ケネディ元大統領が弟のロバートを司法長官に就任させたのがきっかけで、1967年に「反縁故者法」が制定された。大統領が親類を政府機関で雇用することを禁じる法律だが、無報酬の閣外ポストに就くクシュナーとイバンカには適用されない見込みだ。

イバンカは以前AP通信の取材で、もし父親が大統領になっていなければ、首都ワシントンに移り住むことはなかったと認めていた。実際、トランプ政権発足後、彼女が明らかに影響力を発揮したのは職場での女性の地位に関する政策ぐらい。

イスラム圏の国民の入国を禁止する大統領令や、メキシコとの国境の壁建設、公共サービスの削減や地球温暖化対策の規制撤廃といった問題政策に反対した形跡もない。

「前向きで意義のある価値を付け加えたい。時間が経てば、私がその目標に到達したかどうかを人々は判断できるはずだ」

イバンカはそう言っていたのだが。


グラハム・ランクツリー

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