<トランプが過激な中東政策を改めるきっかけになるのではないかと期待されていたヨルダン国王との会談後、トランプは殊勝な言葉を口にした>
ドナルド・トランプ米大統領は5日、ホワイトハウスでヨルダンのアブドラ国王と会談した。
この会談には大きな期待が掛かっていた。イスラム教徒の入国禁止を叫び、在イスラエル米大使館のエルサレム移転を公約に掲げるなど、選挙戦中からことさらアラブ諸国に敵対してきたトランプが、アラブ穏健派のリーダーとされるアブドラ国王と会うからだ。これをきっかけに、トランプのアラブに対する強硬姿勢も変わるのではないか、という期待だ。
イスラエル、イラク、シリアの間に打ち込まれた楔のような位置にあるヨルダンは、米政府とアラブ諸国を取り持つ同盟国として、欧米で広く認知され、紛争に揺れる中東で大国並みの政治的役割を果たしてきた。
「ヨルダンは中東で唯一安定した国で、唯一信頼できる国だ」と、独立系シンクタンク・新米国安全保障センター(ワシントン)の中東専門家イラン・ゴールデンバーグは言う。
【参考記事】ロイヤル・ヨルダン航空、米の電子機器禁止に神対応
トランプ政権下で中東情勢が悪化するという懸念は今も消えていない。トランプがムスリム差別発言を繰り返し、イスラエル寄りの政策をちらつかせ、イスラム教徒が多数を占める国からの入国禁止をごり押しするからだ。
【参考記事】トランプの「大使館移転」が新たな中東危機を呼ぶ?【展望・後編】
トランプの対外援助削減を警戒
こうした危うい中東政策を穏当な路線に導ける人物がいるとすれば、それはアブドラ以外にいない。「ヨルダン政府は穏健な政策を堅持すると共に、臆面もなく親米の姿勢をアピールすることで、米政界では非常に希有な地位を獲得してきた。民主・共和両党に支持されるという地位だ」と、元米国防総省高官で、現在はイスラエル寄りのシンクタンク・ワシントン中近東政策研究所に所属するデービッド・シェンカーは言う。
会談では多くの問題が話し合われた。シリアとイラクにおけるテロ組織ISIS(自称イスラム国)掃討作戦については、今後もあらゆる場で協議が重ねられるだろう。ISIS掃討もトランプの公約だ。
【参考記事】パイロットも殺害していた「イスラム国」の非道
会談後に行われた共同記者会見では、前日にシリア北西部で起きた化学兵器を使ったとみられる空爆に言及した。トランプはシリアのアサド政権が化学兵器を使用したと断じ、「(越えてはならない)一線を越えた。いくつも越えた」と非難した。オバマ政権の無策が惨事を招いたと言いつつも、今は自分が責任を負う立場だとも認めた。
【参考記事】シリアの子供たちは、何度化学兵器で殺されるのか
「昨日起きたことは私には容認できない」トランプはこう語ったが、アサド政権の後ろ盾であるロシアを非難することは避けた。一方アブドラはトランプがヨルダンの新たな難民受け入れに対して、財政的な援助を約束してくれたことに感謝し、今回の惨事で国際社会はシリア問題の解決が急務であることを改めて痛感したはずだと述べた。
【参考記事】知っておくべき難民の現実
アブドラは今回の訪米でトランプにパレスチナ問題に関するアラブ諸国の合意を伝え、和平交渉の再開に向けて米政府からイスラエルとの仲介の約束を取り付ける意向だったとみられる。トランプが駐イスラエル大使に任命したデービッド・フリードマンは親イスラエルで鳴らし、トランプと共にアメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移転する計画を掲げていたが、今のところ実施は見送っている。エルサレムはパレスチナ人の「首都」でもあり、移転すれば、くすぶっている中東の火種が一気に燃え上がると、専門家は警告している。
ヨルダン政府は以前からパレスチナ紛争が中東の政治的な混乱の元凶だと主張してきた。アブドラは今年1月末に訪米した際、マイク・ペンス副大統領、それにトランプの娘婿でホワイトハウスの上級顧問であるジャレッド・クシュナーと会談。トランプが大使館移転を先送りしたのは、アブドラの働きかけによるとみられる。トランプも今回の会談で「この問題のニュアンスと困難さを理解した」と言った。
トランプ政権が先月半ばに発表した18会計年度の予算案には対外援助の大幅削減が盛り込まれており、アブドラの今回の訪米には援助の減額を阻止する狙いもあったとみられる。米議会調査局によると、2016会計年度の米政府の対ヨルダン援助は推定14億ドルに上った。ヨルダンの安定を支えるには経済援助が不可欠だ。
アブドラの訪米に同行したヨルダンのラニア王妃は教育や福祉などの活動に熱心なことで知られ、ファーストレディーのメラニア夫人と昼食を共にし、小学校を視察した。
Betsy Kleinさん(@betsyklein)がシェアした投稿 - 2017 4月 5 12:00午後 PDT
From Foreign Policy Magazine
ロビー・グレイマー、エミリー・タムキン
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イスラエル、イラク、シリアの間に打ち込まれた楔のような位置にあるヨルダンは、米政府とアラブ諸国を取り持つ同盟国として、欧米で広く認知され、紛争に揺れる中東で大国並みの政治的役割を果たしてきた。
「ヨルダンは中東で唯一安定した国で、唯一信頼できる国だ」と、独立系シンクタンク・新米国安全保障センター(ワシントン)の中東専門家イラン・ゴールデンバーグは言う。
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トランプ政権下で中東情勢が悪化するという懸念は今も消えていない。トランプがムスリム差別発言を繰り返し、イスラエル寄りの政策をちらつかせ、イスラム教徒が多数を占める国からの入国禁止をごり押しするからだ。
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トランプの対外援助削減を警戒
こうした危うい中東政策を穏当な路線に導ける人物がいるとすれば、それはアブドラ以外にいない。「ヨルダン政府は穏健な政策を堅持すると共に、臆面もなく親米の姿勢をアピールすることで、米政界では非常に希有な地位を獲得してきた。民主・共和両党に支持されるという地位だ」と、元米国防総省高官で、現在はイスラエル寄りのシンクタンク・ワシントン中近東政策研究所に所属するデービッド・シェンカーは言う。
会談では多くの問題が話し合われた。シリアとイラクにおけるテロ組織ISIS(自称イスラム国)掃討作戦については、今後もあらゆる場で協議が重ねられるだろう。ISIS掃討もトランプの公約だ。
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会談後に行われた共同記者会見では、前日にシリア北西部で起きた化学兵器を使ったとみられる空爆に言及した。トランプはシリアのアサド政権が化学兵器を使用したと断じ、「(越えてはならない)一線を越えた。いくつも越えた」と非難した。オバマ政権の無策が惨事を招いたと言いつつも、今は自分が責任を負う立場だとも認めた。
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アブドラは今回の訪米でトランプにパレスチナ問題に関するアラブ諸国の合意を伝え、和平交渉の再開に向けて米政府からイスラエルとの仲介の約束を取り付ける意向だったとみられる。トランプが駐イスラエル大使に任命したデービッド・フリードマンは親イスラエルで鳴らし、トランプと共にアメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移転する計画を掲げていたが、今のところ実施は見送っている。エルサレムはパレスチナ人の「首都」でもあり、移転すれば、くすぶっている中東の火種が一気に燃え上がると、専門家は警告している。
ヨルダン政府は以前からパレスチナ紛争が中東の政治的な混乱の元凶だと主張してきた。アブドラは今年1月末に訪米した際、マイク・ペンス副大統領、それにトランプの娘婿でホワイトハウスの上級顧問であるジャレッド・クシュナーと会談。トランプが大使館移転を先送りしたのは、アブドラの働きかけによるとみられる。トランプも今回の会談で「この問題のニュアンスと困難さを理解した」と言った。
トランプ政権が先月半ばに発表した18会計年度の予算案には対外援助の大幅削減が盛り込まれており、アブドラの今回の訪米には援助の減額を阻止する狙いもあったとみられる。米議会調査局によると、2016会計年度の米政府の対ヨルダン援助は推定14億ドルに上った。ヨルダンの安定を支えるには経済援助が不可欠だ。
アブドラの訪米に同行したヨルダンのラニア王妃は教育や福祉などの活動に熱心なことで知られ、ファーストレディーのメラニア夫人と昼食を共にし、小学校を視察した。
Betsy Kleinさん(@betsyklein)がシェアした投稿 - 2017 4月 5 12:00午後 PDT
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