Infoseek 楽天

ニュージーランド首相の衝撃的ピザが国を二分

ニューズウィーク日本版 2017年4月11日 6時30分

ニュージーランドの首相がFacebookにドヤ顔で投稿したピザの写真が、賛否両論の議論を巻き起こした。

ドヤ顔でお手製ピザ自慢をするNZ首相

ニュージーランドのビル・イングリッシュ首相が4月4日にFacebookに投稿した写真が、SNSユーザーをざわつかせた。

「昨晩、家族にディナーを作りました。ピザの上に缶入りスパゲティを乗せるのが『アリ』だと思う人はいいねを!」とのコメントと共に、同首相はお手製のピザの写真とドヤ顔の自撮り写真を投稿したのだ。



缶入りスパゲティとは、トマト・ソースに浸された太くて短いスパゲティが入った缶詰だ。ソースを吸っているためか、パスタはぶよぶよで歯ごたえはない。国によって金額は異なるだろうがかなり安価で、例えば英国のオンライン・スーパーでは400グラムが約70円程度から売られている。

国が真っ二つに

イングリッシュ首相のピザの投稿には4月10日時点で、1万件の「いいね」と2000件以上のコメントがつき、600回以上シェアされた他、ツイッターでも話題になった。

Facebookでは、「こんなの投稿するなんて信じられない。ピザ通を気取るわけじゃないけど、人生で一度くらい本物のピザを食べてみたことあるんだよね?」という反対意見や、「あなたの政策は支持しないけど、ピザにスパゲティなら支持できる」などの賛成意見が次々と書き込まれ、意見は真っ二つに分かれた。中には、「ビル、申し訳ないけど、ピザにスパゲティを乗せるような人は、我が国を治めるに適さない。選挙の時は私の票をあてにしないで」や、「次回の選挙では(最大野党の)労働党に投票しようかな」など、家族のために作ったピザが、今年9月に予定されている総選挙にまで影響しそうな勢いだ。

さらに、「あなたの政策は全て支持するし、缶入りスパゲティをピザに乗せるのも賛成だけど、ピザにパイナップルっていう政策は支持できない」と、パイナップルに反応する声もあった。

ピザの具としてパイナップルが「アリ」か「ナシ」かは、今年2月にアイスランドのヨハンネソン大統領が「ピザの具としてパイナップルの使用を禁じたい」と発言して、論争を引き起こしたばかりだ。



一定の世代以上には懐かしい食べ物

Facebookのコメントには、「ピザに缶入りスパゲティ、やっと国民を理解してくれる首相が(現れた)」といったものもあった。というのもどうやら、このピザは同首相が思いつきで手当たり次第に具を乗せたものではなく、ニュージーランドのある世代以上の人には懐かしい食べ物のようなのだ。

「70年代に子どもだったけど、このスパゲティ・ピザを見るとたくさんのいい記憶が蘇るよ」や、「こんなにおいしいピザに文句を言っている人は、(a)自分の子ども時代や、身を起こしたばかりの貧しかったころを忘れている、もしくは(b)愛すべきスパゲティ、ハム、パイナップルのピザを思い出せないくらいの若い世代だ」というコメントも見られた。

英国のガーディアンは、このレシピを「80年代ニュージーランドの田舎における定番食」と表現している。

英紙が試食、お味は...?

この論争に終止符を打つべく立ち上がったのは、前述のガーディアンだ。実際に、イングリッシュ首相のレシピを使ってピザを作り、味見したのだ。「首相スペシャル・ピザ」に乗せる具は、缶入りスパゲティ、パイナップル、チーズ、ベーコンの4種類。トマト・ソースを塗って具を乗せるのに1分、焼きあがるのに8分だ。

ガーディアンには動画も公開されているが、それを見るとピザのピースを持ち上げる際にスパゲティがビロッと垂れ下がり、あまりおいしそうにも食べやすそうにも見えない。記者も動画の中で「スプーンが必要かも」と言っている。

実際に食べた感想として記者は、「グズグズで歯ごたえもあまりなく、持ち上げると手の中で崩れてしまった」と書いているが、肝心の味については「おいしかった。本当においしかった」、「気取らない、率直な風味がすぐに伝わってきて、驚くほどの『おいしい』要素があった」と絶賛した。

この缶入りスパゲティ、ニュージーランドやオーストラリア、英国などでは一般的にトーストに乗せて食べるのが人気のようなので、そうしたものに慣れ親しんできたであろう英語圏出身の記者がおいしいと感じるのも不思議はない。

しかし考えてみれば、日本にも「ナポリタンドッグ」が存在する。この缶入りスパゲティが日本人の口に合うかどうかは定かではないが、単に「ピザの具にスパゲティ」ということなら、日本の食卓にも「アリ」なのかもしれない。勇気のある人はぜひお試しを。


松丸さとみ

この記事の関連ニュース