<今年2月に保守系ジャーナリストが自費出版した、米民主党の政策ガイドがアメリカでベストセラーになっている。トランプ大統領も絶賛するその驚きの内容とは>
今アメリカでベストセラーになっている話題の本がある。
2017年2月に出版されたこの本は、すぐに8万5000部を超えるヒット作となり、アマゾンのベストセラーランキングでも1位に輝いた。とにかくアメリカで注目されている一冊だ。しかも著者が自費出版で売り出したこの本は、英語を読めない日本人でも楽しめる。
本の内容を見る前に、どれほどこの本が評判になっているのかを紹介したい。
アマゾンの説明欄には、アメリカの著名作家によるコメントが並ぶ。例えば、「ページをめくる手が止まらない」「2度、読んだ」「見事な議論である」「深い洞察にもかかわらず、非常に読みやすい」「絶対に読むべき一冊」といった文言が続く。
アマゾンのレビューからもその評価の高さがうかがえる。2200人を超える人々がレビューを書いているが、そのうちの89%が最高点の5つ星を付けている。いくつかの読者のレビューコメントを読むと、その魅力が伝わってくる。
「明瞭なメッセージだ」
「手に取ったら一気に読んでしまう。見事だ!」
「オーディオブックが出るのを待ちきれない」
そしてその評判は、ホワイトハウスにも届き、4月17日には、ドナルド・トランプ大統領が自身のツイッターでこう書いた。「読書の楽しみを得られる素晴らしい一冊だ」
そんな気になるこの本のタイトルは、『Reasons To Vote For Democrats: A Comprehensive Guide(民主党に投票をする理由:完全ガイド)』。9ドル99セントで売られている政治関連の同書は、全部で266ページ。著者はジャーナリストで編集者のマイケル・J・ノウルズだ。
ノウルズはイエール大学を卒業後、政治やアメリカ文化、アメリカの政党の歴史を専門に研究を続けている。保守系ウェブサイト「デイリー・ワイアー」で特派員も務めている。
この本の最大の売りは、266ページ中260ページが「白紙」であること。そう、何も書かれていない白紙の本なのだ。
アマゾンの説明文には、「現時点で、民主党の敗北について最も徹底して研究され、明瞭に議論をされた本」だと解説されている。要するに、2016年の大統領選の敗北を経て、「民主党に投票をする理由」は「白紙」、つまり何もないということだ。しかもすべて白紙なのだから、英語を読めない外国人でも楽しめるという訳だ。
ただこの本にはちゃんと目次がある。第1章の「経済」に始まり、「外交」「公民権」「教育」「国土安全保障」「エネルギー」「雇用」「犯罪」「移民」「価値観と信条」と第10章まで続く。しかし、どこにも何も書かれていない。
ノウルズはCNNの取材に、「この本のためのリサーチにはかなりの時間を要した」と語り、「民主党に投票するための理由と民主党の実績を観察してみると、それが経済だろうが外交、国土安全保障、公民権だろうが、おそらくすべてのページを真っ白にしておくのが一番だと気がついた」と主張している。
アマゾンのレビューでは、保守とリベラルの中傷合戦が繰り広げられ、それを読むだけでも楽しめる。民主党の重鎮であるナンシー・ペロシ下院議員やチャック・シューマー上院議員に触れたこんなコメントもあった。「ペロシやシューマーが何を考えているのか分からなくなったら、この本を読むべきだ」。
また共和党員に関して「ほとんどの共和党員は文字が読めないから、ちょうどいいのだろう」というレビューもあるし、反対にリベラル派に対して「どんなバカなリベラルでも読めるくらいシンプルに書かれている」というものもある。
アメリカらしい風刺に富んだ、かなり辛辣で"ブラック"な一冊だが、つい先日、米大手出版社サイモン&シュスターが、同著の第2版を出版する契約を結んだばかりで、すでに同社から販売が始まっている。
それにしても、トランプの大統領就任以降、民主党はすっかり存在感をなくしている。政策が「白紙」ということはないだろうが、ぜひとも言いたい放題のトランプ政権に対抗してもらいたものだ。
山田敏弘(ジャーナリスト)
今アメリカでベストセラーになっている話題の本がある。
2017年2月に出版されたこの本は、すぐに8万5000部を超えるヒット作となり、アマゾンのベストセラーランキングでも1位に輝いた。とにかくアメリカで注目されている一冊だ。しかも著者が自費出版で売り出したこの本は、英語を読めない日本人でも楽しめる。
本の内容を見る前に、どれほどこの本が評判になっているのかを紹介したい。
アマゾンの説明欄には、アメリカの著名作家によるコメントが並ぶ。例えば、「ページをめくる手が止まらない」「2度、読んだ」「見事な議論である」「深い洞察にもかかわらず、非常に読みやすい」「絶対に読むべき一冊」といった文言が続く。
アマゾンのレビューからもその評価の高さがうかがえる。2200人を超える人々がレビューを書いているが、そのうちの89%が最高点の5つ星を付けている。いくつかの読者のレビューコメントを読むと、その魅力が伝わってくる。
「明瞭なメッセージだ」
「手に取ったら一気に読んでしまう。見事だ!」
「オーディオブックが出るのを待ちきれない」
そしてその評判は、ホワイトハウスにも届き、4月17日には、ドナルド・トランプ大統領が自身のツイッターでこう書いた。「読書の楽しみを得られる素晴らしい一冊だ」
そんな気になるこの本のタイトルは、『Reasons To Vote For Democrats: A Comprehensive Guide(民主党に投票をする理由:完全ガイド)』。9ドル99セントで売られている政治関連の同書は、全部で266ページ。著者はジャーナリストで編集者のマイケル・J・ノウルズだ。
ノウルズはイエール大学を卒業後、政治やアメリカ文化、アメリカの政党の歴史を専門に研究を続けている。保守系ウェブサイト「デイリー・ワイアー」で特派員も務めている。
この本の最大の売りは、266ページ中260ページが「白紙」であること。そう、何も書かれていない白紙の本なのだ。
アマゾンの説明文には、「現時点で、民主党の敗北について最も徹底して研究され、明瞭に議論をされた本」だと解説されている。要するに、2016年の大統領選の敗北を経て、「民主党に投票をする理由」は「白紙」、つまり何もないということだ。しかもすべて白紙なのだから、英語を読めない外国人でも楽しめるという訳だ。
ただこの本にはちゃんと目次がある。第1章の「経済」に始まり、「外交」「公民権」「教育」「国土安全保障」「エネルギー」「雇用」「犯罪」「移民」「価値観と信条」と第10章まで続く。しかし、どこにも何も書かれていない。
ノウルズはCNNの取材に、「この本のためのリサーチにはかなりの時間を要した」と語り、「民主党に投票するための理由と民主党の実績を観察してみると、それが経済だろうが外交、国土安全保障、公民権だろうが、おそらくすべてのページを真っ白にしておくのが一番だと気がついた」と主張している。
アマゾンのレビューでは、保守とリベラルの中傷合戦が繰り広げられ、それを読むだけでも楽しめる。民主党の重鎮であるナンシー・ペロシ下院議員やチャック・シューマー上院議員に触れたこんなコメントもあった。「ペロシやシューマーが何を考えているのか分からなくなったら、この本を読むべきだ」。
また共和党員に関して「ほとんどの共和党員は文字が読めないから、ちょうどいいのだろう」というレビューもあるし、反対にリベラル派に対して「どんなバカなリベラルでも読めるくらいシンプルに書かれている」というものもある。
アメリカらしい風刺に富んだ、かなり辛辣で"ブラック"な一冊だが、つい先日、米大手出版社サイモン&シュスターが、同著の第2版を出版する契約を結んだばかりで、すでに同社から販売が始まっている。
それにしても、トランプの大統領就任以降、民主党はすっかり存在感をなくしている。政策が「白紙」ということはないだろうが、ぜひとも言いたい放題のトランプ政権に対抗してもらいたものだ。
山田敏弘(ジャーナリスト)