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就任5カ月、トランプは馬鹿過ぎて大統領は無理

ニューズウィーク日本版 2017年6月19日 20時45分

<トランプには大統領にふさわしい知的能力が欠けていて、アメリカを危険にさらしている>

ドナルド・トランプ米大統領はかつて、「私は賢い人間だからね」と言ったことがあるが、何かの間違いではないかと思う。彼は賢くないし、大統領の職務をこなすだけの知力など到底ない。証拠はどんどん積み上がっている。

トランプは英エコノミスト誌の編集者たちに「(財政投融資の)呼び水効果」という言葉を聞いたことがあるか、と聞いた。経済の専門家である彼らはもちろん、と答えた。トランプは臆さず続けた。「つい2日前に思いついたんだ、うまい言い回しだと思ってね」──その言い回しは、大恐慌後の1930年代から広く使われてきた専門用語だ。

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外遊先のサウジアラビアから次の訪問国イスラエルに到着したときは、迎えに出たイスラエル首脳らに「今、中東に行ってきたところだ」と言った。

これは馬鹿ではなく無知ではないか、と反論されるかもしれない。トランプ支持者はよくそれを言い訳にする。ポール・ライアン下院議長は、トランプがFBI(米連邦捜査局)のジェームズ・コミー長官に圧力をかけて、ロシア疑惑で辞めたマイケル・フリン前大統領補佐官の捜査をやめさせようとしたことについて、「トランプ大統領はまだよくわかっていないから」と擁護した。だがトランプは大統領に就任してもう5カ月近い。それなのに、大統領職がどんなものか一向に学ぶ様子がない。

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ニュアンスは理解できないので省く

トランプは71年生きてきて、アメリカ最高の教育も受けている(トランプが常々自慢しているとおり、彼はペンシルバニア大学経営大学院を卒業している)。それでも、高校生レベルの基本的な知識さえ持ち合わせていないようなのだ。

なぜあんなにモノを知らないのか。トランプは本や長い記事を読まないせいもある。「読んだことがないんだ」と、トランプは自慢気に記者に語った。「いつも忙しくてね」

大統領に対して行われる安全保障情報に関するブリーフィングも、トランプの場合は易しく書き直され、微妙なニュアンスは省いて単純化され、地図やイラストを多用する。トランプがたくさんの文字は読みたがらないからだ。

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トランプ自身が、知識を得る能力や興味がないことを問題と思っていないのも、彼が馬鹿な証拠だと言える。昨年トランプは、「新しく学ばなくても、既に持っている知識と『常識』だけで」正しい決断ができる、と言った。「私には常識とビジネス能力が豊富だからだ」

世論調査で、トランプは大統領に留まるよりも弾劾がふさわしいという意見が多いのも無理はない。破滅的に愚かな入国禁止令から破滅的に愚かなコミーFBI長官解任まで、トランプ政権は人災に次ぐ人災だ。そしてこうした失態の直接的な原因は、大統領の知的パワー不足に他ならない。

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そもそもなぜコミーを解任できたのだろう。コミーを解任すれば、トランプが元側近のフリンをやめさせようと圧力をかけたことを証言しかねないことは普通わかるはずだ。それも、解任の理由としてコミーがロシア疑惑の捜査をしていたことが頭にあったと、自分からテレビで喋ってしまった。司法妨害を自白したのと同じだ。賢い人間のすることじゃない。トランプは次は、ロシア疑惑の捜査を指揮するために任命されたロバート・ムラー特別検察官を解任するつもりだ、という噂もある。もし本当に解任すれば、恥の上塗りというものだろう。

トランプが洞察力に欠けるのはむしろ神の御加護だ、という意見もある。もしトランプが過激な上に賢かったら、もっとずっと危険な存在だったに違いない、というのだ。だが、その考えなしの言動がアメリカの安全保障を危険にさらしているとも言える。

トランプはアメリカの大統領だから知りえた機密情報をロシアのラブロフ外相にひけらかした。自分が何をしているかわからなかったのだろう。それによってトランプは、ISIS(自称イスラム国)のテロ情報に最も通じた情報源の正体を敵に知らせてしまったかもしれない。

サウジアラビアなど湾岸諸国がカタールと断交したとき、トランプはツイートでカタールに喧嘩を売った。「これで世界が平和になる」と書いたのだ。天然ガスが豊富なこのリッチな小国に、ISISを空爆する上で死活的に重要なアメリカの空軍基地があるなどとは夢にも思わなかったのだろう。

誰の言うことも聞かない

ブリュッセルのNATO本部を訪ねたときは、加盟国への攻撃は全加盟国への攻撃と見なすというNATO条約第5条(集団防衛条項)を、従前のとおりアメリカが尊重すると確約する代わりに、ヨーロッパの同盟諸国に防衛負担の金を返せ、と言った。トランプは帰国後、第5条を支持すると言ったが、アメリカの信用は既に大きく傷ついた後だった。

トランプ支持者たちはよく、賢い人間が助言をすればトランプの足りない部分を補えると言ってきた。だがトランプはあまりに強情で常軌を逸していて、誰の言うことも聞かないことが次第に明らかになってきた。ニューヨーク・タイムズ紙はこう書いた。「トランプは指図されるのが嫌いだ。大統領選の間には、助言されたことと正反対のことをやってみせることも多かった」

合衆国憲法修正25条は、副大統領と閣僚の過半数が大統領が職務上の権限と義務を遂行できないと判断した場合には、上下両院の3分の2の同意で大統領を更迭できる、と定めている。実現はしそうもない。トランプに立ち向かうには与党・共和党が臆病過ぎるからだ。だが本来は更迭されるべきだろう。就任後5カ月近く経っても、大統領にふさわしい知的能力の片鱗も見せていないのだから。

From Foreign Policy Magazine


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マックス・ブート (外交問題評議会シニアフェロー、国家安全保障が専門)

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