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トランプ不人気でも、共和党に勝てない民主党

ニューズウィーク日本版 2017年6月22日 17時20分

<トランプ大統領の「信任投票」の位置づけで過去最高の資金を投じた選挙だったが、共和党の優位は崩せなかった>

ドナルド・トランプ米大統領の「信任投票」として注目を集めたジョージア州6区の連邦下院議員補欠選挙は20日に決選投票が行われ、共和党のカレン・ハンデルの当選が確定した。共和党が民主党を退け、トランプ大統領が信任された格好だ。

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この選挙は、アメリカ政治史上最もカネがかかった下院選でもあった。ハンデルと対抗馬の民主党候補ジョン・オーソフの選挙対策本部、そしてそれぞれの支援団体が費やした資金は少なくとも5700万ドル(NPO「民意を反映する政治センター」調べ)。

過去の最高記録は12年のフロリダ州の選挙だが、その2倍近いカネが乱れ飛んだことになる。 4月の第1回投票で決着がつかず、ハンデルとオーソフの一騎打ちになって以降、わずか2カ月足らずにこれだけカネが費やされたことになる。

なぜこれほど巨額のカネが使われたのか。背後には誰がいるのか。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、選対本部が集めた資金はオーソフのほうが圧倒的に多く、2360万ドルだった。その大半はニューヨーク州やカリフォルニア州など民主党が強い主要州からの献金だ。全米のリベラル派団体の協力を得て、オーソフは20万人近い少額献金者から寄付を集めた。

対照的にハンデル選対が集めたのは450万ドルにすぎないが、大半がジョージア州内からの献金だ。

保守強硬派の議席

また全米各地の共和党の委員会と特別政治活動委員会(スーパーPAC)がハンデル応援に1800万ドルを注ぎ込み、テレビなどを通じて盛んにネガティブキャンペーンを展開した。

【参考記事】トランプもうひとつの危機「憲法違反訴訟」が3件も係争中

民主党が連邦下院で過半数に届くにはあと24議席必要で、1議席増えたところで大した影響はない。それでも州外のリベラル派がせっせとオーソフに献金したのは、トランプに大打撃を与えるためだ。

ジョージア州6区は70年代から一貫して共和党の下院議員を選出してきた。民主党にとって、今回の補欠選はそんな強固な地盤を切り崩すチャンスだった。前任の(トム・)プライス(共和党、現厚生長官)はオバマケアに強硬に反対し、トランプのオバマケア改廃案の立案にも参画した人物だ。そのプライスが占めていた議席を奪えば、民主党にとってはとりわけ象徴的な勝利になる。



トランプは目下、逆風にさらされている。ロシア疑惑の捜査が進む一方で、オバマケアに代わる医療保険制度の導入と税制改革という公約二本柱については議会の審議が難航。CBSの最新の世論調査では、トランプの支持率は36%まで落ち込んでいる。

補欠選では地元の問題が争点になったが、終盤ではトランプ自身がツイッターで参戦、ハンデル応援・オーソフこき下ろしのツイートをした。ハンデル当確を受けて、即座にお祝いのツイートをしたのは言うまでもない。

【参考記事】トランプ支持率の下げ止まりは民主党の敵失なのか

民主党はこれで3つの補欠選挙に連敗したことになる。トランプに対する不満の高まりをどう票につなげるか、党幹部は戦略の立て直しを迫られている。指導者不在の状況で、党内ではバーニー・サンダース上院議員のような経済左派とオーソフのような中道派の亀裂が深まっており、このままでは18年の中間選挙での巻き返しは望めない。


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トム・ポーター

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