<共和党クリスティー知事の任期満了が近づく中、元々銃規制が厳しいニュージャージー州で大規模な銃買い取りイベントが実施されることに>
オバマ政権時代には、銃による深刻な殺傷事件が頻発したことで、銃規制を主張する運動が盛り上がったのですが、当然ながらNRA(全米ライフル協会)の影響下にある共和党から強い反対に遭っていました。それでも、オバマ政権は精神病歴のある人物への銃の販売規制などを実施しました。
ところが今年トランプ政権が発足すると、共和党が多数を占める議会はこの「オバマの銃規制」を2月早々に葬り去るなど、現在のアメリカは「銃規制派」にとって「冬の時代」になっています。
6月14日にワシントンDC郊外で発生した共和党下院議員らへの銃撃事件の際には、同じように銃撃被害に遭った当時の民主党下院議員ガブリエル・ギフォーズ氏が「これは自分のケースと同じで、銃の問題である」として、事件を契機として銃規制運動を呼びかけましたがまったく話題にされませんでした。
またこの6月には、ここ数年大きな問題になっていた「警官による黒人への銃撃事件」に関して、全米3カ所で「警官の無罪」という評決が下されています。これも「トランプ政権下のアメリカ」を象徴する動きと言えます。
【参考記事】銃撃事件に遭った米共和党議員「銃のおかげで助かった」
そんな中、全米で最も厳しい銃規制を敷いているニュージャージー州で、7月下旬に大規模な「銃の買い取りイベント」が実施されることになりました。これは、警察と地方自治体が共同で行うもので「社会に出回る銃を減らす」ために行われます。
同様のイベントは、1970年代から90年代にはメリーランド州やワシントン州で実施されたことがあり、また2000年代に入って西海岸のカリフォルニア州、中部のミシガン州、東部のマサチューセッツ州などでも実施されたことがありますが、テスト的な実施がほとんどでした。
一方でニュージャージーの場合は、2012年に制度として「銃の買い取り」を法制化して以来、断続的に実施してきていて、これまでに約1万9000丁を回収した実績があります。現在は州法として「1年に9回、大規模な買い取りイベントを実施するよう義務付ける」案が審議中です。
イベントは、7月28日と29日の2日間、銃による事件の多い大都市カムデン、トレントン、ニューアークの3都市で同時に実施されます。一丁の銃に対して、買い取り金200ドルが支払われることとなっており、身分証明の提示は求められるものの、「持ち込んだ人間に一切質問はしない」ことになっており、スムーズな買い取りを目指しています。
では、どうしてニュージャージー州では「銃削減」の取り組みが可能になっているのかというと、そこには複雑な事情があります。一つは、いくら銃規制に関する世論の支持が強いとはいえ、共和党は銃規制には反対しています。特に、「買い取り」のために公費、つまり州民の税金をあてるようなことをすれば、強硬に反対するでしょう。
そこで、今回もそうですが、一連の「銃の買い取りイベント」ではイベントの実施や安全管理は州や地方自治体、警察が行うものの、「買い取り資金」はNGOが中心となり、個人や企業からの寄付を募って実施する枠組みを取っています。
【参考記事】共和党議員銃撃、「左派」支持者の凶行に衝撃
ニュージャージー州が銃規制に関する取り組みを行ううえで、州政を共和党のクリス・クリスティー知事が担っていることが障害になっていました。クリスティー知事は、2016年の大統領戦で共和党の候補になることを狙って予備選レースに出ていました。
予備選における同知事ですが、党内では「銃規制をやっている州の知事だから真正保守ではない」などという批判を受けていたのです。ですから、その批判を払拭するために必死になって銃規制の州法に「拒否権発動」をしたり、反対に議会はその「拒否権に対する再可決」を狙ったりと激しい駆け引きがありました。
ですが最近は、クリスティー知事の影響力は低下しています。大統領選予備選では早い時期に「トランプ支持」に回り、一時は司法長官を目指すなどという話もあったのですが、大統領の娘婿であるジャレット・クシュナーとの確執もあって要職には就けませんでした。州知事の方も2期8年の任期が終わり(再選出馬の権利なし)に近づいていわゆる「レームダック状態」になっており、今はトランプ政権の薬物濫用撲滅キャンペーン担当をしています。
このような経緯で「うるさい知事」がおとなしくなったということも、今回の「銃削減イベント」を進めることができた要因だとも言えるでしょう。ちなみに、ニュージャージーでは、クリスティー知事の後任を決める選挙が11月に予定されており、これは2018年の中間選挙の前哨戦として大きな意味を持つことになりそうです。
オバマ政権時代には、銃による深刻な殺傷事件が頻発したことで、銃規制を主張する運動が盛り上がったのですが、当然ながらNRA(全米ライフル協会)の影響下にある共和党から強い反対に遭っていました。それでも、オバマ政権は精神病歴のある人物への銃の販売規制などを実施しました。
ところが今年トランプ政権が発足すると、共和党が多数を占める議会はこの「オバマの銃規制」を2月早々に葬り去るなど、現在のアメリカは「銃規制派」にとって「冬の時代」になっています。
6月14日にワシントンDC郊外で発生した共和党下院議員らへの銃撃事件の際には、同じように銃撃被害に遭った当時の民主党下院議員ガブリエル・ギフォーズ氏が「これは自分のケースと同じで、銃の問題である」として、事件を契機として銃規制運動を呼びかけましたがまったく話題にされませんでした。
またこの6月には、ここ数年大きな問題になっていた「警官による黒人への銃撃事件」に関して、全米3カ所で「警官の無罪」という評決が下されています。これも「トランプ政権下のアメリカ」を象徴する動きと言えます。
【参考記事】銃撃事件に遭った米共和党議員「銃のおかげで助かった」
そんな中、全米で最も厳しい銃規制を敷いているニュージャージー州で、7月下旬に大規模な「銃の買い取りイベント」が実施されることになりました。これは、警察と地方自治体が共同で行うもので「社会に出回る銃を減らす」ために行われます。
同様のイベントは、1970年代から90年代にはメリーランド州やワシントン州で実施されたことがあり、また2000年代に入って西海岸のカリフォルニア州、中部のミシガン州、東部のマサチューセッツ州などでも実施されたことがありますが、テスト的な実施がほとんどでした。
一方でニュージャージーの場合は、2012年に制度として「銃の買い取り」を法制化して以来、断続的に実施してきていて、これまでに約1万9000丁を回収した実績があります。現在は州法として「1年に9回、大規模な買い取りイベントを実施するよう義務付ける」案が審議中です。
イベントは、7月28日と29日の2日間、銃による事件の多い大都市カムデン、トレントン、ニューアークの3都市で同時に実施されます。一丁の銃に対して、買い取り金200ドルが支払われることとなっており、身分証明の提示は求められるものの、「持ち込んだ人間に一切質問はしない」ことになっており、スムーズな買い取りを目指しています。
では、どうしてニュージャージー州では「銃削減」の取り組みが可能になっているのかというと、そこには複雑な事情があります。一つは、いくら銃規制に関する世論の支持が強いとはいえ、共和党は銃規制には反対しています。特に、「買い取り」のために公費、つまり州民の税金をあてるようなことをすれば、強硬に反対するでしょう。
そこで、今回もそうですが、一連の「銃の買い取りイベント」ではイベントの実施や安全管理は州や地方自治体、警察が行うものの、「買い取り資金」はNGOが中心となり、個人や企業からの寄付を募って実施する枠組みを取っています。
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ニュージャージー州が銃規制に関する取り組みを行ううえで、州政を共和党のクリス・クリスティー知事が担っていることが障害になっていました。クリスティー知事は、2016年の大統領戦で共和党の候補になることを狙って予備選レースに出ていました。
予備選における同知事ですが、党内では「銃規制をやっている州の知事だから真正保守ではない」などという批判を受けていたのです。ですから、その批判を払拭するために必死になって銃規制の州法に「拒否権発動」をしたり、反対に議会はその「拒否権に対する再可決」を狙ったりと激しい駆け引きがありました。
ですが最近は、クリスティー知事の影響力は低下しています。大統領選予備選では早い時期に「トランプ支持」に回り、一時は司法長官を目指すなどという話もあったのですが、大統領の娘婿であるジャレット・クシュナーとの確執もあって要職には就けませんでした。州知事の方も2期8年の任期が終わり(再選出馬の権利なし)に近づいていわゆる「レームダック状態」になっており、今はトランプ政権の薬物濫用撲滅キャンペーン担当をしています。
このような経緯で「うるさい知事」がおとなしくなったということも、今回の「銃削減イベント」を進めることができた要因だとも言えるでしょう。ちなみに、ニュージャージーでは、クリスティー知事の後任を決める選挙が11月に予定されており、これは2018年の中間選挙の前哨戦として大きな意味を持つことになりそうです。