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豆乳やヤギ乳は牛乳ほど背が伸びない?

ニューズウィーク日本版 2017年7月5日 10時10分

<大豆やナッツを原料とする代替ミルクがブームだが、子供の成長を考えると安易に飛び付くのは禁物だ>

スーパーマーケットの乳製品売り場をのぞくと、驚くほど多様な代替ミルクがお目見えしている。豆乳、アーモンドミルク、ライスミルク、ヘンプミルク、フラックスシードミルク、ヤギ乳、ココナツミルク......。

代替ミルク・ブームの背景には、乳牛に投与される成長ホルモンや抗生物質が人間の健康に及ぼす影響が懸念されること、牛乳アレルギーの子供が増えていることがある。

代替ミルクは牛乳よりヘルシー――そんな宣伝文句を信じてアレルギーのない子供にも代替ミルクを与える親が増えているが、気になるのは代替ミルクが子供の成長に与える影響だ。

そこでカナダ・トロントのセント・マイケルズ病院の小児科医チームは2~6歳児5034人を対象に調査を行い、代替ミルク(植物性ミルクやヤギ乳)の摂取量と身長の関係を分析。臨床栄養学ジャーナルに論文を発表した。

それによると、代替ミルクを飲む量が多い子供ほど平均より身長が低いことが分かったという。毎日牛乳1カップ(250ミリリットル)の代わりに同量の代替ミルクを飲む子供は、身長が平均より0.4センチ低い。毎日3カップの牛乳を飲む3歳児と同量の代替ミルクを飲む3歳児では、身長差は1.5センチになる。

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栄養価をチェックしよう

WHO(世界保健機関)の成長チャートで見ると、代替ミルクを毎日3カップ飲む3歳児の身長は15パーセンタイル(全体を100として、小さいほうから15番目)になると、論文の筆頭執筆者ジョナサン・マグワイアは説明する。

興味深いのは、代替ミルクと牛乳を併用している子供も平均より身長が低いこと。どうやら牛乳の摂取量と身長の伸びには直接的な関係がありそうだ。

「過去の研究はいずれも、牛乳を飲む習慣は長期的にみて身長の伸びと関係があると示唆している。今回の分析結果はそれを改めて裏付けた格好だ」と、バージニア大学病院の小児内分泌科医マーク・デブアは言う。



一方、人類学者のアンドレア・ワイリーは論文の問題点を指摘する。「北米では子供に牛乳を与える家庭が多いので、代替ミルクを飲んでいる子供は特殊な事情があると考えられるが、それが考慮されていない」

例えば牛乳アレルギーがある場合、治療のために服用しているステロイド剤が身長の伸びを抑えていることも考えられる。

代替ミルクを一括りに扱っている点も問題だと、ワイリーは言う。「豆乳などタンパク質が豊富で、カルシウムやビタミンを強化した代替ミルクもある」

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搾乳前に牛に与えられた成長ホルモンが子供の成長を促している可能性もある。成長ホルモンの影響を突き止めるには、成長ホルモンを投与した牛の乳と投与していない牛の乳を比べる大規模な「ランダム化比較試験」が必要だと、デブアは言う。

マグワイアによると、この研究は代替ミルクを飲むと身長が伸び悩むと断定しているわけではない。ただ、代替ミルクは牛乳ほど当局の規制が徹底していないので注意が必要だと、マグワイアは親に警告する。「子供の成長に必要なタンパク質、脂質、微量栄養素を含んでいるかしっかりチェックしてほしい」


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[2017.7. 4号掲載]
ジェシカ・ワプナー

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