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揺れる欧州夏の音楽祭──スウェーデンで性暴力多発、ドイツでテロと間違い全員避難

ニューズウィーク日本版 2017年7月10日 18時0分

ヨーロッパの夏は野外音楽祭が盛んだ。毎年各国で大小さまざまなジャンルのコンサートやフェスティバルが催されるが、昨今ではテロや性暴力の深刻化により、そのヨーロッパの夏の楽しみのあり方が揺れている。

スウェーデン最大のフェスティバルは来年中止に

スウェーデンではここ数年、各種音楽祭での性暴力が頻発し、なかなか改善されない状況に国民が不満をつのらせている。 ガーディアンによると、2014年と15年にはストックホルムの音楽祭で発生した移民の若者たちによる性犯罪についての情報をすべて公開しなかったことで警察が糾弾された。

毎年何千人もの参加者が訪れるスウェーデン最大の音楽祭であるブラヴァラ音楽祭では昨年、4日間の開催中に5人の女性がレイプの犠牲になったにもかかわらず、6月28日から7月1日に開催された今年の音楽祭でまたもやレイプ4件、性的暴行23件の被害が報告され、ついに2018年の開催中止が主催者により発表された。

スウェーデンのステファン・ロベーン首相は、今後このようなイベントでの監視体制を強化することを政府と警察とで協議していると述べた。

ドイツではスペルミスが一大事に

昨年7月14 日にフランスのニースでトラックテロ事件が起こったあと、ドイツでは18日にバイエルン州北部のローカル線の電車内で移民の少年が斧で乗客を切りつけ、その直後の22日にはミュンヘンのオリンピアショッピングセンターで銃乱射事件が起こったことから、バイエルン州での各種イベントの中止が相次いだ。

バイエルン州第二の都市ニュルンベルクでは、同月24日に開催予定だった毎年恒例のオープンエア・クラシックコンサートが中止になったが、近郊の同州アンスバッハ市の音楽祭はそのまま開催され、結果、自爆テロが起き12人が負傷する惨事となった。

今年は今のところ大きなコンサートの中止はきこえてこないが、先月初めには毎年数万人を動員するニュルブルクリンクの大ロックイベント「ロック・アム・リング」にて、スタッフのスペルミスが元でテロ騒動になるという珍事が発生した。

ドイチェ・ウェレによると、6月2日のイベント初日、開催にスタッフとして従事していたシリア難民2名が、おそらくスタッフリストに自分の名前のスペルを間違えて記載したために、入退場許可用に身につけていたブレスレットの名前と一致せず、テロリスト侵入の可能性があるとして 8万7千人の来場者が避難する事態となった。



5月22日のマンチェスターのアリアナ・グランデのコンサートでの爆弾テロから約2週間しかたっておらず、先述のとおり昨年はアンスバッハの音楽祭で自爆事件が起こったため、警察はわずかな可能性も排除するわけにはいかず、避難を決定したという。結局は何事もなく、イベントは翌日から通常どおり開催されたが、今後は身分証明書の早い段階での確認や、IDに顔写真をつけるなどの対策が取られるという。

男性は出入り禁止? の代案も

ロック・アム・リングやブラヴァラ音楽祭についてはニューズウィーク米国版も報道している。スェーデンではブラヴァラ音楽祭中止の報道を受けて、若手コメディエンヌのエマ・クニッケアが、「すべての男性が行儀よく振る舞えるようになるまで」女性オンリーの音楽祭を開催すべきだと提案し、続いて自身のインスタグラムアカウントにて、「スウェーデン初の男性なしのロックフェスティバルは来年の夏実現します」と、2018年の実現にむけて十分なサポートを得られたと報告している。

モーゲンスタン陽子

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