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デンマーク「潜水艦美女バラバラ殺人事件」

ニューズウィーク日本版 2017年8月24日 18時40分

<北欧の海に浮かぶ手作りの潜水艦を取材で訪ねた女性ジャーナリストが、胴体だけになって浮かんでいるのを発見された。事件はまだ謎だらけだ>

スウェーデン人のフリージャーナリスト、キム・ウォール(30)は8月10日、デンマークの首都コペンハーゲンでデンマーク人の発明家ピーター・マッセン(46)が自分で作った潜水艦「UC3ノーチラス号」に乗り込んだ。取材のためだ。次にウォールが表れたとき、彼女は胴体だけになっていた。

ウォールの交際相手は、深夜になってもウォールが戻らないとして、翌11日の深夜2時半に行方不明の通報をした。コペンハーゲン警察は、失踪事件として捜査を開始した。

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8月21日、海に浮かぶ女性の胴体を、コペンハーゲンのアマー島でサイクリングをしていた人が発見した。DNA鑑定の結果、ウォールの胴体と確認された。警察によれば、両腕、両脚、頭部は「切断されていた」。

23日の警察の会見でわかったのは、マッセンの潜水艦で何かがあったことと、それが死因だったかもしれないことだ。潜水艦から、ウォールのDNAと一致する血痕が見つかったという。

警察は死因を明らかにしていないが、胴体に金属製の重しが付けられていたことから、故意に沈められた可能性があるとみている。今も残りの遺体を捜索中だ。

TEDトークにも出演

ウォールの死因には、多くの謎が残る。それらの謎に答えるのに最もふさわしい人物は、すでに警察の事情聴取を受け過失致死罪で起訴されたマッセンだ。


(マッセンが手作りした潜水艦「UC3ノーチラス号」Peter Thompson-REUTERS)

マッセンは、ウォールとともに一時行方不明となった潜水艦で保護されたが、潜水艦はそのまま沈没し、のちに警察が引き揚げた。故意に沈められたものと警察は結論付けている。

マッセンは当初、ウォールを陸に降ろしたと説明していた。だが胴体が発見される直前の21日になって供述を翻し、ウォールは艦内の事故で死亡し「遺体を海に遺棄した」と述べたという。

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英BBCニュースによれば、事件前にマッセンの姿が最後に目撃されたのは、8月10日の日没前の夜8時半。クルーズ船に乗っていた男性が、潜水艦の展望塔の前に並んだマッセンとウォールを撮影した写真が残っている。

マッセンはデンマークでは、ロケットや潜水艦を手作りする発明家として有名で、ここ数年はリトアニアやウクライナのTEDトークにも何度か出演した。「生涯の夢」を追うデンマーク人有志グループの先頭に立ち、クラウドファンディングで資金を調達し、2008年に手作りの潜水艦としては世界最大級の「UC3ノーチラス号」を完成させた。


(自作で最大級の潜水艦を作ってTEDトークにも出演していたマッセン)



マッセンは最初の供述で、ウォールからインタビューを受けた後、8月10日の夜10時半頃にコペンハーゲンの港にあるレストラン付近でウォールを降ろしたと主張していた。レストランは防犯カメラを警察に提出したが、警察は映像に何が映っていたのかを明らかにしていない。

マッセンの弁護士であるベチナ・ハルド・エンマークは、被告は無罪を訴えているという。さらにデンマークのタブロイド紙「BT」に対し、潜水艦で見つかった血痕がウォールのDNAと一致しても、「事故が起きたという被告の説明は変わらない」と語った。

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警察は市民に対し、事件の解決につながる情報提供を呼び掛けている。マッセンは以前も同じ潜水艦に知人を招待していたことから、警察は艦内ツアーの具体的な内容について、過去の参加者から事情を聴く予定。

ウォールは英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスと米コロンビア大学ジャーナリズム大学院を卒業し、世界中を飛び回りながら記事を書いていた。

ウォールの署名記事は出身国のスウェーデンだけでなく、米フォーリン・ポリシー、米ハーパーズ・マガジン、米ニューヨーク・タイムズ、英ガーディアンなど、国外の新聞や雑誌にも掲載された。

ウォールがどのメディアに向けてマッセンの潜水艦の特集記事を執筆する予定だったのかは不明のままだ。

(翻訳:河原里香)


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