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米国務省「金曜日の虐殺」、幹部が続々と退職 トランプへの不満か

ニューズウィーク日本版 2017年8月29日 16時30分

<ただでさえスタッフ不足のトランプ政権下で、キャリア外交官が続々と続々と退場。アメリカの外交はますます漂流する>

トランプ政権下で、経験豊富なキャリア外交官の退職が相次いでいる。ある米高官の情報によると、アメリカ国務省のベテラン外交官で、国連および各種国際機関でアメリカの政策を推進する部局を率いる人物が、8月25日に辞意を表明した。

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国際機関を担当する部局「Bureau for International Organization Affairs」の国務次官補代行トレイシー・アン・ジェイコブソン(52)は8月25日、職員に対して早期退職する意向を伝えた。3週間後にドナルド・トランプ大統領が世界の指導者を前にして国連総会で初の演説をするタイミングでの辞任意向表明となった。

ジェイコブソンはこれまで外交官として、大統領勲功賞をはじめ多くの賞を授与されており、今年10月初めの任期満了まで在任すると思われていた。

ジェイコブソンが辞意を表明した同日、麻薬密売取締担当の国務次官補ウィリアム・リビングトン・ブラウンフィールドも9月末に辞任する意志を明らかにした。同氏は2011年1月10日から同担当を務めていた。約4カ月前には、国務省のベテラン外交官である妻のクリスティー・ケニーも辞意を表明していた。

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核国大使を歴任したべテランが

ブラウンフィールドは、ジョージ・W・ブッシュ政権時にコロンビア、ベネズエラ、チリの米国大使を務めたキャリア外交官で、当時のベネズエラ大統領ウゴ・チャベスから国外追放すると繰り返し脅されていたこともある。

国務省幹部によれば、ブラウンフィールドが国務省内でほかの要職に就く可能性は低い。フォーリン・ポリシー誌は8月に入ってから、ティラーソン国務長官がブラウンフィールドを中南米特使に任命することを検討中だと報じた。大統領功労賞と殊勲賞の受賞経験を持つブラウンフィールドにコメントを求めたが、回答は得られていない。

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フォーリン・ポリシー誌では先ごろ、国務省ヨーロッパ・ユーラシア局の高官であるジョン・ヘファーンが辞任することになったと報じた。外交活動の重要性を軽んじられたことへの不満があるにせよ、外交政策の専門家たちの辞任が相次いでいることに懸念が増している。

現職ならびに元高官の話によれば、ジェイコブソンもブラウンフィールドも、自発的に職を退くという。ブラウンフィールドは定年の65歳に達しているが、辞任する必要はない。ある元職員は、とりわけジェイコブソンは、「状況が異なれば辞職はしなかっただろう」と述べた。

自主的に早期退職を選んだ、ある国務省関係者によると、早期退職が急増しているのは「不満が大きな要因だ」という。「自分にとってはそれがまさしく大きな理由だ」



ジェイコブソンは早期退職を希望していることを認めている。ジョージ・W・ブッシュ政権ならびにバラク・オバマ政権時代に、コソボ、タジキスタン、トルクメニスタンの大使を歴任した30年のキャリアに終止符を打つことになるが、早期退職を決めた理由に関してはコメントしなかった。

国務省報道官のヘザー・ナウアートは、フォーリン・ポリシー誌に宛てた8月27日付けのメールの中で、「ジェイコブソンは8月25日に、職員に対して退職する意向を発表した。30年にわたって外交官を務めたジェイコブソンに、心から感謝している」と述べている。

ジェイコブソンが、多面的な問題にあたる同局のトップに任命されたのは今年の1月20日だ。その日はトランプが「アメリカファースト」を掲げて大統領に就任した日。トランプはアメリカが、北大西洋条約機構(NATO)から国連に至る国際機関に深く関与することに異議を唱えている。ジェイコブソンの前任者は、オバマ政権が政治任用したバスシーバ・クロッカーだった。

トランプは9月19日に国連総会で初めて演説を行う予定となっている。また、国連訪問中には、国際機関の改革について話し合うサイドミーティングで議長を務める見込みだ。

予算削減の一点張り

だが、国連事務総長アントニオ・グテーレスが開催する飢饉をテーマにしたハイレベル会合に、トランプが出席する計画は見送られた。その代わりに、米国際開発庁の高官が出席する予定だ。

こうした動きによって、国連や活発な外交活動の価値を認めないトランプ政権の姿勢が、各国代表団に強く印象付けられると見られる。

ホワイトハウスは、国務省の予算を最大で37%削減するよう求めている。また、国連に対してはさらに大幅な削減要求を突きつけており、国連大使ニッキー・ヘイリーは、来年の国連による平和維持活動(PKO)予算が前年比で6億ドル以上削られることになったことを誇っている。

(翻訳:ガリレオ)

From Foreign Policy Magazine


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