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フェイスブックがロシア関与の米世論分断広告を議会に提出

ニューズウィーク日本版 2017年9月22日 14時57分

<大統領選への介入を狙ったロシアの政治広告は、銃や移民などアメリカ社会の政治的分断を煽る内容だった>

フェイスブックのマーク・ザッカ―バーグCEOは9月21日、昨年の米大統領選にロシアが介入した疑惑について調査中の議会に対し、ロシアが関与したと見られる約3000の政治広告に関する情報を提供すると発表した。

これまでにフェイスブックは、2015年6月から2017年5月までの2年間に前述の約3000件の政治広告に関して10万ドルの広告料が支払われていたことを議会に報告していた。これらのプロパガンダは、約500の虚偽アカウントやサイトから投稿されていた。

フェイスブックはこれまで議会への情報提供には応じていなかったが、先週ロシア疑惑を捜査中のロバート・モラー特別検察官からの捜索令状を受けて、関連情報を提供したことが報じられたため、議会への情報提供にも応じた形だ。

「広範囲に法的、政治的な検討を行った結果、フェイスブックは議会の調査にも広告情報を提供することを決定した」と、フェイスブック理事会のコリン・ストレッチは21日の投稿で述べた。「フェイスブックは、2016年の米大統領選で何があったかを完全に調査するために、政府当局が今回の情報を得ることが極めて重要だと考えた」

候補者には直接言及せず

ロシアの選挙関与疑惑に関する捜査が進むにつれて、フェイスブックなどのソーシャルメディアに配信される広告による世論操作の巧妙さと深刻さが明らかになってきた。過去のフェイスブックの説明によると、ロシアが関与したと見られる政治広告は、大統領選を争っていた2人の候補、ドナルド・トランプとヒラリー・クリントンには直接言及していない。LGBT(性的マイノリティー)や人種、移民、銃所持など世論を二分する政治問題で極端な立場を取り、政治的・社会的な分断を煽る内容だった。ほとんどは大統領選が実施された2016年ではなく2015年のうちに配信され、そのうちおよそ4分の1は配信先が特定の地域に限定されていた。

「広告やその他のメッセージを使って特定のユーザーに政治的影響を及ぼそうとする行為は、高度な技術を持つ組織にとって当たり前のサイバー攻撃手法になりつつある」と、フェイスブックは別の幹部の投稿で説明している。「すべてのネット媒体は、今後この問題に対処しなければならなくなる」

かねて議会から、真摯に対応していないという批判を受けていたザッカ―バーグは、今回の決定をライブ動画で発表した。

「アメリカの民主主義を傷つける手段として使われたくない」と語り、すべての介入を停止することはできないが、選挙への介入を減らす努力はできる、と語った。



さらに、今後もロシアの選挙介入にフェイスブックが使われたかどうか、調査を続ける方針だ。

「今後も政府への協力は続ける」とザッカ―バーグは語った。「ロシアや旧ソ連諸国のキャンペーン団体など、外国勢力の調査を継続し、どのようにフェイスブックを利用しているか解明する。時間がかかる作業だが、徹底した調査を行う」

またザッカ―バーグは、選挙介入に対する新たな防止策の構想も示した。広告料を誰が支払ったか等の情報を明らかにすることで、「政治広告のより高い透明性を確保する」ほか、来年には選挙介入に対応するチームの人員を倍増させる。

ドイツの総選挙を9月24日に控え、フェイスブックは各国の選挙管理委員会との協力関係を強化し、選挙中のネット活動の危険性について緊密に連絡を取り合う方針を示していた。また政治的な嫌がらせなどに対応するため、「ユーザーを保護するサービスをさらに追加する」という。

(International Business Times)


デニッセ・モレノ

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