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仕事も投資も「アセットアロケーション」でほとんど決まる!

ニューズウィーク日本版 2017年9月27日 19時32分

<ファイナンスを習得し、より質の高い意思決定をする。そのために覚えておきたいのが、アセットアロケーション(資産配分)だ。どのような運用手法なのか、そしてどう仕事に役立つのか>

「意思決定を伴わないファイナンスに価値はない。ファイナンスを伴わない意思決定も同じである」を持論とする正田圭氏は、15歳で起業し、現在はM&Aの最前線で活躍する若き実務家。このたび上梓した『ファイナンスこそが最強の意思決定術である』(CCCメディアハウス)では、あらゆるビジネスパーソンに向けて、ファイナンスを習得し質の高い意思決定を行うための術を伝授している。

その1つが、投資の世界で使われる「アセットアロケーション」という考え方だ。一般に資産配分などと訳されるが、一体どのような手法のことで、またこれがなぜ仕事上の意思決定にも役立つのか。

投資の成否はアセットアロケーションで「8割以上決まってしまう」と、正田氏は言う。本書から一部を抜粋し、3回に分けて掲載するシリーズ。第2回は「1章 ビジネスキャリアを加速させる秘訣はファイナンスにあり」より。

※第1回:AI時代に「超高収入」ファイナンスの専門職は生き残れるか

◇ ◇ ◇

「アセットアロケーション」から学ぶ

 投資の世界には、「アセットアロケーション」という言葉が存在します。

「アセットアロケーション」とは、簡単に言えば資産を分散させる運用手法のことですが、投資をやっている人たちの間でも意外と認識されていないキーワードです。

 簡単に説明しておきましょう。例えば、皆さんが1億円の貯金を持っていると仮定します。なかには1億円すべてを使っていきなり不動産を購入したり、株を購入したりする人もいるかもしれませんし、いくらかは現金で残した上で株にも社債にも不動産にも投資する、という人もいるでしょう。バランスの組み方は十人十色だと思います。

 つまり「アセットアロケーション」とは、このように異なるリスクやリターンの特性をもつ「資産クラス」に分類した投資先への分配比率を決定することを言うのです。

 具体的には、「日本株」「外国株」「日本債券」「外国債券」「不動産」といったものが資産クラスとして分類され、「日本株30%・外国株10%・不動産55%・金5%」とか、「日本株50%・先進国株式40%・新興国株式10%」などのように投資比率を決めることになります。

『ファイナンスこそが最強の意思決定術である』より

 実は、この「アセットアロケーション」は、投資の世界ではものすごく重要なのです。なぜなら、投資の成否は、この「アセットアロケーション」で8割以上決まってしまうからです。

 もう少しかみ砕いて言うと、投資の世界で最も重要なのは、銘柄選びや売買のタイミングではなく、「どの資産にどんな割合で投資するか」なのです。

 証券会社やマネー雑誌が言い立てる「次の高騰銘柄はズバリこれだ!」とか「伝説のアナリストが選ぶ、投資推奨ランキングベスト10!」といったものは、極端な話、意味がありません。そんなものを読む以前に、どの資産クラスにどう資金投下するかで、すでに勝負は決まってしまっているのです。



 私は、ビジネスパーソンの時間の振り分け方も、この「アセットアロケーション」と同じだと考えています。

 ビジネスパーソンでいうと、与えられた仕事をどうこなそうかとか、どうやって時間を捻出しようかと考えるのではなくて、どの業界で仕事をするかとか、どの会社に就職するか、もしくはどのプロジェクトに力を注ぐかを考えることが大事だということです。

 戦う場所や勝負すべきポイントがズレていれば、課題解決をどれだけ頑張っても何も好転しないからです。的外れなことにこだわっていても、努力は報われません。

『ファイナンスこそが最強の意思決定術である』より

 ビジネスパーソンが人並み外れた成果を出そうとするとき、手を動かし始めるよりもまず最初にするべきは、「どう戦うか」以前に「どこで戦うか」をきちんと見極めることです。

 そして、自分がこれだと思った方向に周りをしっかりと引っ張っていくことが重要です。

 時間や労力といったリソースは、無限にあるものではなく、限られたものです。だからこそ、最小限のリソースを使って最大限の成果をあげるような仕事の仕方が求められているのです。まさにファイナンスにおける投資の原理のように、限られた時間と労力をどこにつぎ込めばいいのか、判断する力が必要になっているわけです。

 ビジネスの極意は、「労働時間」でも「作業スピード」でもありません。

 限られたリソースをどこに投資するかです。

 つまり、ビジネスは「投資活動」なのです。そして、その投資効果を最大にするためのファイナンスなのです。

 最初のうちは霧がかかったかのように、見えないものがたくさんあるでしょう。しかし、実戦経験を積み重ねていくと、自分が向き合っているビジネスの仕組みが見えてきて、どこに集中するべきなのか、どこがポイントなのかがだんだんと見えてくるようになってきます。

 そして、そんな状況の中でビジネスを劇的に好転させるための本質的な核を突き止めること、それがファイナンスを学ぶことで身につく能力なのです。

※第3回:スティーブ・ジョブズがいつも黒のタートルネックだった理由


『ファイナンスこそが最強の意思決定術である』
 正田 圭 著
 CCCメディアハウス



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ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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