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やり過ぎコスチュームに、門限・罰金まで...... カナダのハロウィーン事情

ニューズウィーク日本版 2017年10月26日 18時0分

<ハロウィーンの季節。セクハラ疑惑のハリウッドの大物プロデューサーや『アンネの日記』のアンネ・フランクのコスチュームまで、やり過ぎコスチュームが問題になったり、16歳以上のトリック・オア・トリートは罰金...など、カナダのハロウィーン事情>

日本でも定着してきた感のあるハロウィーン。だが本場のアメリカやカナダでは、ハロウィーンは10月31日の「トリック・オア・トリート」(仮装した子供たちが近隣の家をまわってお菓子を集めること)だけに限ったことではない。

10月に入った途端、飾り付けを始める家は少なくない。気合の入った家の集まるエリアでは各家庭が競い合い、通り全体が屋外お化け屋敷のようになる。学校はもちろん、所属するクラブや個人的な集まりなどで31日以前にも何度もハロウィーンパーティーが行われるから、子供を持つ親はとくに大変だ。

しかしカナダの一部では、今年のハロウィーンはちょっと様子がちがっているようだ。

16歳以上のトリック・オア・トリートは罰金?

ニューブランズウィック州バザーストではこのほど、16歳以上のトリック・オア・トリートを禁止し、また子供たちの門限を夜8時と設定する条例を可決した。違反した場合、200ドルの罰金が科される可能性が出てくる(CTV)。

また、ハロウィーン当日は学校にも仮装して行く。ところが、ウィニペグのある新設校は、教師たちの前任校での経験をふまえ、今年のハロウィーンにコスチュームで登校することを禁止した。かわりにこれを「ネクタイとスカーフの日」としたのだが、「子供たちの大きな楽しみを奪った」として、一部の保護者たちの怒りをかっている(グローブ・アンド・メール)。

カナダのいわゆる「小学校」は幼稚園を併設し、8年生までというところがふつうだが、高学年の13, 14歳のティーンの仮装を幼稚園児が恐れたり、また一部の生徒がガイドラインを無視して刀などの小道具を持ち込んだりするからだという。筆者の子供たちが通っていた学校にも、顔を覆うマスクの類や小道具は禁止されていたが、あまり徹底して守られてはいなかった。また、多民族国家であるカナダの性質上、本来は宗教的な行事であるハロウィーンに子供を登校させない親もいるという。



アンネ・フランクのコスチュームまで登場

しかし、トロント・スターは、ハロウィーンは「校長や大学の学長を恐怖で縮み上がらせる唯一の祝日だ」と断言する。お化けの衣装が怖いのではない。学校に不適切な格好で登校する生徒たちの心配をしなければならないからだ。

ティーンや大人は、時事問題を反映した仮装や、ウケ狙いのコスチュームを好みがちなのも事実だ。トロント・スターの記者は、立派なスーツ姿でシャツの下に枕を忍ばせ、セクハラ疑惑真只中のハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴィー・ワインスタインを装った人々をグーグルで見つけ、幻滅したようだ。

「文化的に不適切」なコスチュームもある。芸者やアメリカ先住民、アラブ人などが「文化の盗用」と非難されることも少なくない。また、女性用のコスチュームに、カウガールや露出の多い小悪魔など、やたらとセクシーで性差別的なものが多いことを問題視する親も多い。

そして、ハロウィーン商戦真只中の今月半ばに大きく物議を醸したのが、ホロコーストの犠牲となった、あの『アンネの日記』の作者、アンネ・フランクのコスチュームだ。

アメリカのミネソタ州に本拠を置く玩具会社Fun.comのハロウィーンコスチューム専門サイトに登場した、ベレー帽に肩掛けバッグに大きな名札、というアンネの姿は、その衣装よりも、ポーズをとって微笑む少女モデルの画像が人々の逆鱗にふれたようだ。問題の衣装はすでにサイトから削除されているが、それでも悪趣味なコスチュームは他にいくらでもあり、教師たちを悩ませているという。

健康志向の「トリート」も

ハロウィーンの日に配る「トリート」にも変化が見られる。最近では健康志向の高まりで、よりヘルシーなハロウィーンの楽しみ方をする家庭が増えているようだ。子供たちが大量の砂糖菓子を得ることを良しとせず、みかんやリンゴ、あるいは鉛筆などのグッズを配る親たちも最近ではめずらしくない。

また、グローブ・アンド・メールによると、カナダ全国で数年前から「トリック・オア・トリート」に代わる「スケート・オア・スウィム」という、スケートリンクや屋内プールのハロウィーン限定割引パスが人気だ。たくさんのお菓子を与えることがためらわれる乳幼児に配るのに最適ということで、毎年売り上げをあげているようだ。家族で楽しめるし、冬が長いカナダにぴったりの「トリート」かもしれない。

さらに、北米ではナッツ類をはじめとした食物アレルギーに苦しむ人々がたくさんいるため、配布用のお菓子はピーナッツを赤線で消した「ナッツ・フリー」のアイコン入りのものが一般的だが、果物やグッズの「トリート」ならそんな心配からも解放される。

アメリカに比べると、カナダはまだまだ子供たちが安心してトリック・オア・トリートを楽しめる印象だ。ハロウィーンの仮装は楽しいが、大人も子供も一緒に楽しむ行事だからこそ、節度と自覚を持って、ヘルシーなトリートとともに楽しみたいものだ。



モーゲンスタン陽子

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