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テキサス銃乱射事件に便乗する「陰謀論」 右派はトーク画面偽造

ニューズウィーク日本版 2017年11月6日 19時35分

<10月のラスベガスに引き続き、今回の銃撃事件の裏で繰り広げられる「陰謀論」で情報は大混乱>

11月5日午前11時半(現地時間)頃、米テキサス州サザーランドスプリングスのキリスト教バプテスト派教会で銃乱射事件が発生した。少なくとも27人が死亡し、多数の負傷者が出ている。犯人の男は事件後に逃走する最中で死亡(警察による銃殺か自殺かは不明)し、事件の全容は未だに明らかになっていない。

単独犯とみられる犯人はデービッド・パトリック・ケリー容疑者(26)。AP通信によると、ケリーは同州の主要都市サンアントニオ近郊に住んでおり、空軍勤務の経歴を持つ。日曜礼拝に集った住民に向け無差別に発砲し、5歳の男の子や14歳の牧師の娘らの命を奪った。

The Sutherland Springs mass shooter, Devin Patrick Kelley, was just a white man!Thank God it wasn't terrorism! Nothing to see here, folks!You can all go back to being scared of Muslims! pic.twitter.com/I5QqyID0IS— Edan Clay (@EdanClay) 2017年11月5日


(デービッド・パトリック・ケリー容疑者)


CNNによれば、アメリカ各地で発生した銃乱射事件のうち5本の指に入る規模の死者を出した2件が、ここ35日間で起こった。

米史上最悪の犠牲者を出した銃乱射事件は、10月1日にネバダ州ラスベガスのカントリーミュージックフェスティバル会場を狙ったもの。実行犯とされるスティーブン・パドック容疑者の発砲で59人が死亡した。

そして今回のサザーランドスプリングスでの事件。どちらも犯人は死亡しておりその口から直接、犯行に至った動機が語られることはない。

死人に口なしを好機と捉えたのか、両事件の裏ではさまざまな陰謀論が繰り広げられている。



極右ライターは偽造のトーク画面をツイート

9.11同時多発攻撃は内部関係者の犯行と主張するなど、これまでもアメリカ政府の陰謀説を説いてきた右派のアレックス・ジョーンズは、運営するウェブサイト「インフォウォーズ」で、ラスベガスの事件はトランプ支持層とされる白人を狙った「アンチファ(極左勢力、反ファシズムを意味する)による陰謀」と主張していた。

サザーランドスプリングスの事件発生後も同じようなことが起きた。本誌のマイケル・エディソン・ヘイデンは、これこそが白人ナショナリズムの右翼運動「オルト・ライト(オルタナ右翼)」の陰謀だと指摘している。

サザーランドスプリングスの教会で銃撃が起こったとき、警察はケリーの犯行動機を直ちに発表しなかった。しかし、保守系評論家(自称アメリカの民族主義者)のマイク・セルノビッチは、事件の報道直後に犯人の動機について言及していた。「銃乱射事件のあったサザーランドスプリングスの住民の多くが白人だ。アンチファによるテロ攻撃か?」

セルノビッチはこれに拍車をかける。犯人のケリーやアンチファのシンボルマーク、銃の写真だけを引用して「テキサス乱射事件の犯人のプロフィールと一致している」「これはますますアンチファのテロ攻撃だと思わせられる」と投稿した。

他の右派たちも動いた。右派ライターのジャック・ポソビエクは、ニュースサイト「It's Going Down(IGDニュース)」がサザーランドスプリングスの銃乱射事件を扇動するメッセージを発信したように見えるトーク画面のスクリーンショットを投稿した。「アンチファがサザーランドスプリングスの襲撃を企てている」というメッセージまでご丁寧に添えられた。

Antifa discuss attacking churches pic.twitter.com/qeFFCjgEwo— Jack Posobiec(@JackPosobiec) 2017年11月3日


本誌米国版はIGDニュースの広報に事実確認を行った。すると、ポソビエクのツイートに添付されたトーク画面は全くの偽物で、何者かによって作られたものだった。

同広報は、「ポソビエクは、社会を攻撃して理想の政治体制を推し進めようとする一方で、自身の名声をとどろかせるのが目的」と指摘。人々がこういった欺瞞に満ちた発言の意図が何たるかを認識し、それをしっかりと否定することが不可欠だと語った。


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ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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