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セクハラ・スキャンダルの大本命はトランプ

ニューズウィーク日本版 2017年11月24日 15時50分

<性的暴行や暴行未遂の「被告」になっても、フェイクと一蹴するふてぶてしさ>

米アラバマ州の12月の上院補欠選挙は、前同州最高裁長官であるロイ・ムーア(共和党)の勝利が確実とみられていた。しかし5人の女性が実名で、数十年前の10代の頃に「不適切な行為」をされたと告発。最年少では当時14歳だった女性が名乗り出てムーアは苦境に陥っている。

アメリカでは今、ハリウッドを中心に、著名人から性的嫌がらせ(セクシャルハラスメント)を受けたという告白が相次いでいる。そしてその余波で、同じような疑惑をするりと逃れた人物に再び注目が集まっている。レイプまたはレイプ未遂で3回訴えられたことがあるトランプ米大統領だ。

94年に当時13歳の少女が、大富豪ジェフリー・エプスタインの自宅で行われたパーティーでトランプに会った。エプスタインは小児性愛者として悪名高く、少女に売春をさせたなどの罪で08年に有罪判決を受けている。

この少女は16年6月に、パーティーでトランプから「激しい性的暴行」を受けたと匿名で告訴。トランプとエプスタインが、彼女は未成年だと周囲に警告された後も、さまざまな性的行為をさせたという目撃証言も書面で提出された。

訴状によると、「レイプの直後にトランプ被告は、このことを誰かに話したら、私と私の家族が肉体的な危険にさらされて、もしかすると殺されるかもしれないと脅した」。

16年11月、大統領選の4日前に告訴は取り下げられた。女性の代理人によると、彼女は「数多くの脅迫」を受けていた。

政治的なでっち上げ?

トランプの最初の妻イバナは離婚手続きの際に、89年に夫からレイプされたと訴えている。トランプの伝記によると、頭皮の手術後の痛みに苦しんでいたトランプは、イバナの髪をむしり取って強引に性行為をした。

ただしトランプ側の要望で、「『レイプ』という言葉は使ったが文字どおりに、あるいは犯罪的な意味で解釈してほしくない」とイバナが書いた文書が伝記の冒頭に掲載された。



97年にはトランプの仕事関係者の交際相手だったジル・ハースが、トランプにレイプされそうになり、何度も同意なしに体を触られたりしたと告訴した。トランプは自分の子供の寝室で彼女を壁に押さえ付け、ドレスをたくし上げたという。

「私がジョージ(交際相手)と一緒に来ていることも、隣の部屋に人がいることも知っていて」あのような行為に及んだと、ハースは16年10月に英ガーディアン紙に語った。「仕事で来ている私にどうしてこんなことができるのかとショックだった」

ハースは、交際相手がビジネスをめぐってトランプを訴えた訴訟が和解した後、自分の告訴を取り下げている。

これら3件を、トランプは全て否認している。未成年へのレイプ疑惑は「全面的に虚偽」で、「政治的な動機」による訴えだと非難。ハースの主張は「論評に値しない」と一蹴した。

トランプの顧問弁護士のマイケル・コーエンはイバナの件について15年に、「(法律的に)配偶者をレイプすることはできない」と発言。性的暴力を軽んじていると批判され、謝罪した。

この3人を含めて少なくとも16人の女性が、トランプにセクハラや性的暴行を受けたと主張。当のトランプは10月の記者会見で、かつてテレビ番組で共演した女性からの告発について聞かれ、強い口調で否定した。

「完全なフェイクだ。でっち上げだ。卑劣だが、政治の世界ではこういうことが起きる」

<本誌2017年11月21日発売最新号掲載>


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クリス・リオッタ

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