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ラクダの美容整形禁止! サウジの「ミスコン」でボトックス注射が問題に

ニューズウィーク日本版 2018年1月24日 18時10分

<美しいラクダは超高額で取引されるため、唇に「痩せ薬」を注射する飼い主が出現>

子供やペットがコンテストに出場するとき、常識外れにお金をかけてしまう人はサウジアラビアにもいた。ヒトコブラクダ(以下、ラクダ)が身近な存在である同国では、所有するラクダの美しさを競うミスコンテストが行われており、飼い主たちは優勝を目指し手と金を尽くす。

そんな中、美しさを極めようとする飼い主がラクダに美容整形術の一種であるボトックス注射を打つことが問題視され、ついに運営サイドから禁止のお達しが出た。NYのタブロイド紙「ニューヨーク・ポスト」が伝えたところによると、毎年行われている「ラクダフェスティバル」の期間中の品評会に出場した12頭のラクダが、ボトックス注射を打ったために失格となった。評価のポイントは唇、頬、頭や膝のサイズで、見た目が良く高い評価を受けたラクダは莫大な金額で取引される。

昨年のミスコンでは、薬などを使ってラクダの見た目を良くする参加者が報告されていた(ニュースハブ)。そのため、今年の参加者には新しいガイドブックを配布し、「唇に薬品が含まれていたり、身体のパーツが削られたり、本来の姿から不自然に変化したラクダは許可しない」と明記されていたという。

A dozen camels have been disqualified from a Saudi "camel beauty contest" over use of Botox https://t.co/tdm5bmoZOB pic.twitter.com/ii5jMcp3RI— Andrew Stroehlein (@astroehlein) 2018年1月24日

(ボトックス注射が発覚して失格になったラクダのニュースを伝える投稿)


英デイリーメールによると、期間中、ラクダの取引総額は5700万ドル(63億円)にのぼるという。金に目がくらんだ悪質な参加者の取り締まりは一層厳しくなりそうだ。

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改革進めるサウジアラビアの戦略の一種?

コンテストの審査委員長フォーザン・マディは「ラクダはサウジアラビアのシンボル。私たちは当然のごとく伝統としてラクダを守ってきたが、今は娯楽になった」と指摘している。

今、サウジアラビアでは多くの変化が起こっている。2017年12月には長く禁止されていた映画館の運営が解禁すると発表され、2018年3月に35年ぶりの開業が実現する見通しだ。世界で唯一、女性が禁止されていた自動車の運転も認められた。これらの変化は、サウジアラビア経済の生命線であった石油への依存を軽減させ、収益源を多様化させたいと願う政府の取り組みの一環だ。

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大胆な改革の一方、政府は保守派の感情を逆なでしないよう、サウジアラビアの伝統的側面を強調することで平穏に改革を進めようとしている。そういう観点で言うと、アラビアの遊牧民にとってラクダは、何世紀にもわたって食糧、移動手段、時には戦いの武器として慣れ親しんだ、かけがえのない存在だ。

そこで政府は2017年、都市部から離れた砂漠で毎年1カ月間開催していた「ラクダフェスティバル」の開催地を首都リヤド郊外に移転。国のシンボルとしてラクダをアピールする姿勢を見せた。

「ラクダフェスティバル」では、ラクダレース、調教コンテスト、写真コンテストそしてラクダのヘアアートを競う催しもある。さらにラクダのミルクを味わうこともできる。ラクダも身を削るサウジアラビアの改革の行方が気になるところだ。

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ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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