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屋外排泄ゼロを目指すインドに登場した、トイレ建設の助っ人3Dプリンター!

ニューズウィーク日本版 2018年1月25日 17時55分

<ついにロボットを駆り出したインドのトイレプロジェクトの行方は...>

シンガポールに本社を置く産業機械メーカー、ハミルトン社が生みだした製品がインドを救うかもしれない。同社が先ごろ発表したのはトイレを製造する3Dプリンター「HamilBot Mark 1」。これまでよりも低コストかつ短い時間で製造が可能になる。さらに稼動する人件費のカットも大きな魅力だ。ロボットなら24時間、365日働くことができる。

トイレ建設ラッシュのインドに強力な助っ人

同社はもとより3Dプリンターの領域で存在感を示していたが、今回注目すべきは、この技術をインドで活用するというプロジェクト。ユニセフ(国連児童基金)のデータによると、インドの人口の約半数にあたる5億2400万人が屋外で排泄する。2011年のインド国勢調査で、一般家庭で専用のトイレを設置しているのはわずか53%という結果も出た。劣悪な衛生状況が原因で死に至るケースさえあるという。

2014年に就任したナレンドラ・モディ首相は、2019年までに屋外排泄ゼロを目指す、一般家庭のトイレ設置計画「スワッチ・バーラト(クリーン・インディア)」プロジェクトを進めている。1億ドル(約109億円)以上を投入し急ピッチでトイレを建設。最新の情報では、6000万基に到達している。それでも、目前に迫った2019年までに目標を達成するには何らかの支援があるのが望ましい。

ここで登場したのが、ハミルトン社だ。シンガポール国立大学の付加製造センターと協力し、インド東部ビハール州マドゥバニで3Dプリンターでのトイレ作りを2018年1月末に始める。建材は、フライアッシュ(石炭灰)をリサイクルして使用したセメント。マドゥバニに「HamilBot Mark 1」が生みだしたトイレが続々と現れる日も近い。



3Dプリンター「HamilBot Mark 1」 Willy Ng-YouTube



トイレが出来ても社会規範が追い付かない...?

トイレ数は着々と目標に近付いているが、「スワッチ・バーラト」は人々がこれまで慣れ親しんだ習慣を変えることを意味する。そのため政府は、心理的にプレッシャーをかける少々強引な方法で屋外排泄を取り締まったりもしている。屋外排泄を取り締まるパトロール隊に見つかれば、羞恥心だけでなく厳しい罰則が科されることもあるという。

【参考記事】トイレ普及急ぐインド 「辱め」を受ける外で排泄する人たち

一方で、ソフトに社会規範を後押しする取り組みもある。インド西部グジャラート州の主要都市アフマダーバードで営業する、トイレカフェ「The Toilet Garden」だ。トイレをテーマにした店内は、椅子代りに便器が置かれている。利用者は2ルピー(約3円)支払う。



WildFilmsIndia-YouTube

「スワッチ・バーラト」の達成期限2019年は、国父マハトマ・ガンディーの生誕150周年。生前にガンディーは衛生状態の改善を国民に呼びかけていたことでも知られる。情報サイト「YOURSTORY」によると、このトイレカフェも同じ思いで作られている。強引なやり方に悲鳴を上げる市民もいるが、きれいなトイレが当たり前になる日に向けて各方面からの取り組みはさらに加速するだろう。

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ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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