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【平昌五輪】開幕前日の軍事パレードは数カ月前から計画していた

ニューズウィーク日本版 2018年2月7日 16時45分

<五輪開幕前日に北朝鮮が行う大規模な軍事パレードは、数カ月前から計画されていた。核実験施設も準備万端だ>

北朝鮮が韓国で開かれる平昌(ピョンチャン)冬季オリンピック開会式の前日2月8日に行う軍事パレードの計画を、数カ月前から進めていたことが、韓国の情報機関・国家情報院の報告で明らかになった。

韓国の聯合ニュースによれば、国家情報院は2月5日に韓国の国会で非公開の報告を行った際、出席した議員に対し、北朝鮮が昨年12月初めから少なくとも兵士1万2000人を動員し、軍事パレードの予行演習を繰り返していると明らかにした。さらに北朝鮮北東部・豊渓里の核実験場にある地下トンネルは、実験実施に向けて「準備万端」だと警告。北朝鮮のハッカーが昨年韓国の仮想通貨取引所にサイバー攻撃を仕掛け、数百億ウォン(数十億円)相当の仮想通貨を盗んだことも報告した。

今回の軍事パレードは、朝鮮人民軍創建70周年を祝う記念行事だ。北朝鮮は当初2月8日を軍創建日として祝っていたが、1978年以降は、故金日成主席が朝鮮人民革命軍として知られた「抗日パルチザン」を結成した1932年4月25日を記念日として祝うようになった。

五輪が台無しになる

北朝鮮はかつて両方の日を記念日としていたが、1978年を最後に2月8日は重要な祝日とは見なさなくなっていた。金正恩朝鮮労働党委員長は2015年にそれを2月8日に戻したと、米国務省で北朝鮮分析を担当したロバート・カーリンは言う。新たな軍創建日に若き金正恩が軍事パレードを指揮するのは初めてだが、もともと金政権は重要な記念日に大規模な祝賀行事を行う傾向があるため、今回の開催自体に意外性はない。

北朝鮮が軍事パレードの準備をしている、という第一報が流れたのは1月中旬。平昌オリンピック開催前に韓国と対話を再開する用意がある、と金正恩が発言した直後のことだった。

韓国政府は、平昌オリンピックが「朝鮮半島、北東アジア、世界の平和実現への足掛かりになる」として南北和解への期待を前面に出し、「平和のオリンピック」になるはずだと言った。

だが南北の選手が朝鮮半島を描いた「統一旗」を掲げて合同行進する開幕式の前日に、核・ミサイル開発の成果を誇示し、1950~1953年の朝鮮戦争で韓国に侵攻した朝鮮人民軍を称える軍事パレードを決行しようとする北朝鮮の動きは、朝鮮半島の有意義な和平実現に向けた課題を浮き彫りにする。1953年7月の休戦後、朝鮮半島ではいまだに平和条約が締結されていない。

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、オリンピック開幕直前というタイミングと無関係に軍事パレードを行う権利が北朝鮮にはある、と主張した。一方の韓国は、例年2月末から3月初めに開始する米韓合同軍事演習について、オリンピックを台無しにしないために延期を決めた。



「どの国家も、自国の軍隊の創建日を盛大に祝うのは慣例であり、極めて初歩的な常識だ」とする労働新聞の2月3日の論説を、AFP通信は伝えた。北朝鮮はそれより前の1月29日、韓国メディアが軍事パレードの開催を批判したことに反発し、金剛山地区で予定していた韓国との合同文化行事の中止を一方的に通知した。

それでも国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は、オリンピックを契機に南北協力が進んだことに満足感を表した。

「不信感と敵意であまりに長い間分断されていた両国を、オリンピック精神が一つにした。その精神は朝鮮半島の全員に、明るい未来への真の希望をもたらした」と、バッハは2月5日に平昌の東に位置する江陵で開かれた第132回IOC総会の開会式で述べた。江陵ではスケートやアイスホッケーなどの氷上競技が実施される。大会期間は2月9日から25日までの17日間だ。

バッハは同じ日、選手村に設置された「平昌五輪停戦の壁」の除幕・署名式にも参加した。オリンピック精神を象徴するモニュメントは、社会は「壁ではなく橋」を作るべきだとしたローマ法王フランシスコの言葉に感銘を受けた韓国人芸術家イ・ジェソクがデザインしたものだと、聯合ニュースは伝えた。

(翻訳:河原里香)


ソフィア・ロット・ペルシオ

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