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2020年の未来予測は本当に実現可能?

ニューズウィーク日本版 2018年2月21日 16時0分

<乱立する未来予想図が全て実現すれば、わずか2年後に世界が激変して人類は新しい時代に突入する(かも)>

今からわずか2年後の2020年、人類の新しい時代が幕を開ける......かもしれない。その頃、あなたは配車サービスのウーバーで「空飛ぶタクシー」を呼んでホテルに向かい、ロボットのベルボーイのおもてなしを受けるだろう。

ただし、あなたはおそらく失業中で、憂さ晴らしに一杯やろうにも、新発売の薬のせいでアルコールがただの水のように感じられるだろうが......。

「2020年までに××が実現する」――そんな予測が近頃やたら目につく。キリのいい数字が並ぶ年でもあるし、未来といってもそう遠くない未来だから、予測が信憑性を帯びるせいだろうか。企業や業界団体、政府機関から訳知り顔のアナリストまで、誰もが2年後に世界が一変するかのようなご託宣を垂れている。

特に目につくのは交通システムに関する予測だ。交通技術は今、飛行機の発明以来の大転換を遂げようとしている。

自動運転車関連の技術は2020年をめどに、どっと実用化されそうだ。ホンダは20年には高速道路での自動運転走行を実現すると発表。ルノー日産も、20年までに10車種以上の自動運転車を発売する計画だ。

冷蔵庫が家庭教師に?

ゼネラル・モーターズや現代自動車をはじめ、ほぼ全ての自動車メーカーが20年までに何らかのレベルの自動運転車を実用化する方針を打ち出している。ニューヨーク州当局は自動運転車の普及を見据えて、有料道路の料金所を廃止し、別の課金方法を検討するという。

SFのような話も真顔で語られている。ウーバーはヘリコプター製造大手ベル・ヘリコプターと提携し、ダラス、ロサンゼルス、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで20年までに空飛ぶタクシーの試験飛行を行う予定だ。

トヨタは今年1月、オフィスや店舗になる自動運転車を発表。20年までに実証実験を始めるという。例えば靴店が自宅まで来てくれたら、何足でも試し履きできて返品の手間も要らない。

バカンスも様変わりし、2年後にはロボットのおもてなしを受けることになりそうだ。ホテルコンサルタントのディーン・ミネットによると、優良ホテルは軒並みロボットのベルボーイを導入するという。チップなしで済む点は旅行者にも喜ばれるだろう。既にヨーテル・ニューヨークのように、ロボットが客の荷物を預かるホテルもある。



Donald Lain Smith-Blend Images/GETTY IMAGES

ある調査によると、旅行者の3分の2はロボットのおもてなしに抵抗がないという。ドイツ人とフランス人はロボット接客を嫌がる傾向があり、中国人は92%が「大いに結構」と答えた。未来のロボット経済を制するのは誰か、これで想像がつく。

サムスンは20年までに、スマートフォンから家電製品まで自社が販売する全てのデバイスに人工知能(AI)を組み込む方針だ。

シスコシステムズによると、20年には1000ドルのチップが人間の脳の演算能力を持つようになるらしい。自宅の冷蔵庫があなたの手に負えない数学の問題をあなたの子供に教えるようになったら、親の威厳はどうなるのやら......。

バーチャル・リアリティー(VR=仮想現実)の市場規模予測はアナリストによって差があり、20年には380億ドルか1200億ドル、はたまた1500億ドルになると言われている。

幸福とは言えない未来

一方、消費者向けテクノロジーは引き続き爆発的な進化を遂げるだろう。予測によれば、電話には自動翻訳機能が付き、インターネットに接続されたデバイスの普及台数は世界の人口の4倍に達するという。

消費者向けテクノロジー部門の成長でアップル、アマゾン、グーグル、フェイスブックはさらに巨大なテック帝国に成長するだろう。アマゾンの株式時価総額は20年までに倍増するとの予測もある。今でもジェフ・ベゾスCEOは世界一の富豪で、個人資産は1050億ドル。予測が当たれば、ベゾスの資産も倍増し、なんとポルトガルのGDPに匹敵する額になる。

仮想通貨を購入した人に朗報なのは、20年に仮想通貨全体の時価総額が4兆ドルに達するという予測だ。問題はどの仮想通貨が勝ち残り、どれが泡と消えるか読めないことだが。

このほかにも「20年までに予測」はめじろ押しだ。人工肉がスーパーで売られるようになる、日本がロボットを使って月面に探査基地を建設する、ドバイが行政手続きにブロックチェーン技術を活用するなどだ。

こうした進歩は私たちを幸福にするだろうか。残念ながら、イエスとは言い切れない。

大方の予測では20年には経済成長が鈍化する。AIの導入で失われる雇用よりも新たに生まれる雇用のほうが多いとはいえ、新たな職種には新たなスキルが必要なため、AIに仕事を奪われる人たちは救われそうにないからだ。

そんな人たちをさらに悲しくさせる予測もある。アルコール摂取による多幸感をなくすことで断酒を促す薬が20年までに市販されるというものだ。

これらの予測が全て当たるとすれば、もう1つの予測も説得力を持つ。合法大麻専門の調査会社アークビュー・マーケット・リサーチによると、アメリカの合法大麻産業の市場規模は20年には今の3倍近い80億ドルに達するという。

自分たちが生み出す未来に適応するため、私たちにはちょっとした助けが必要らしい。

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[2018.2.20号掲載]
ケビン・メイニー(本誌テクノロジーコラム二スト)

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