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葬式にストリップを呼ぶのは親孝行!? 中国農村部の慣習に当局がメス

ニューズウィーク日本版 2018年2月21日 19時0分

<葬式ストリップを止めさせたい当局が農村に送った本は、ビジネス書にIT専門書...>

悲しみに暮れる遺族とすすり泣く参列者。在りし日の故人の姿に思いを馳せ偲ぶ――葬式といったら、こんな情景が浮かぶ人は多いだろう。しかし中国で問題になっているのは、一般的なイメージとはかけ離れた葬式だ。タブロイド紙「環球時報」の英語版によると、農村部の葬式で催されるストリップに対し、当局が廃止キャンペーンに乗り出した。

China launches fresh crackdown on bizarre phenomenon of funeral strippers https://t.co/0EkOjDgdiP— Mito Kyle (@MitoKyle) 2018年2月21日


Inside China's fad for funeral STRIPPERS the place grieving households employ the service of get in touch with girls believing larger attendances deliver ... https://t.co/NLRXV185LQ pic.twitter.com/CHldho560X— News-round.com (@newsroundcom) 2018年2月21日



春節を控えた今年1月、取り締まりの対象として具体的に名前が挙がったのは、河南省、安徽省、江蘇省、河北省。婚礼や葬儀、寺院でのストリップの密告ホットラインを開設し、リークした者に報酬を払うと発表した。

ストリップは親孝行と自己顕示の手段

中国の農村部では、葬式にストリッパーを呼ぶことで、亡くなった人に敬意を表する習わしがあるという。「親孝行」をアピールする手段として、多くの人が集まる葬式は格好の場と同紙は報じている。

また、葬式にストリッパーやコメディアンを呼ぶことで、自らの稼ぎを周りに誇示する傾向もあるという。

ここにビジネスチャンスを感じる輩もいて、2006年に実施された調査では、葬式で踊る若くてセクシーな女性を囲いこもうとする「賢い」ビジネスマンもいたそうだ。同年に放映された中央テレビ局CCTVのニュース番組で、江蘇省東海県に5つの葬式ストリップグループの存在が明らかになった。




Arix CR-YouTube

公衆のエロは違法だけど「みんなが幸せであればそれで良いよ!」

実はこの葬式ストリップ、過去にも問題視され当局は廃止に向け動いた。ただ、こういった取り締まりは当局の一時的なもので、実際に進められることはなかったようだ。その証拠に、2015年に中国文化省が「社会的雰囲気を崩壊させる」として、ストリップ撲滅計画を発表したものの、依然としてこの慣習は続いている。

China cracks down on funeral strippers hired to entertain mourners, attract larger crowds https://t.co/fYOhOSefW2 pic.twitter.com/1Sj599IFVy— Blablurn (@Blablurn) 2018年2月21日


当局は葬式でのストリップを「非文明的」と批判している。批評家は「SNSのせいで農村部は完全に腐敗した」など、きつい言葉を浴びせている。

しかし、当の農村部の住民は葬式ストリップについて罪悪感はない様子。ある村人は言う。「みんなが幸せであればそれで良いよ!」

農村住民にIT専門書を提供する当局...

農村部の葬式ストリップについて専門家は、一辺倒に批判せず文化的側面に注目する。メディアの専門家クァン・ハイヤン教授は「文化人類学の観点から言うと、葬式で賑やかに振る舞うのは伝統だ」と説明する。

都市部の生活は、生理的な欲求も精神的な欲求も満たす場があるが、一方で農村部には性的表現ができる環境は少ない。「当局が提供するエンターテインメント施設は、住民のニーズに合っていないから、ポルノやネットストリーミングに流れる」

同紙によると、当局は農村60万カ所に書店を整備するために200億元(約3400億円)を投入したというが、いまだに効果は現れていない。書店に置かれた本は、ビジネス哲学やIT専門書など村人の二ーズとかけ離れているそうだ。

葬式ストリップは専門家やメディアによって叩かれているが、一部の少数派は当局に対し、農村住民の精神的豊かさを充実させる取り組みを求めている。福建師範大学のフアン・ジャンシン教授は葬式ストリップを「悪習」とは見なしていない。「やみくもに批判するより、当局が農民により良い文化的製品を提供することが重要だ」と指摘する。

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ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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