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北朝鮮スケート選手の妨害に、日本人選手「故意ではない」

ニューズウィーク日本版 2018年2月22日 12時55分

<1度ならず2度までも、妨害と見える行為があったにもかかわらず、日本の渡邊がオトナの対応>

シーザー風に言えば、「来た、見た、転んだ」。しかも2回も。

2月20日に行われたピョンチャン(平昌)五輪の男子ショートトラック500mで、北朝鮮のチョン・グァンボム選手が見せたお粗末なパフォーマンスが忘れ難いのは転倒したからではない。ライバルの日本人選手のスケート靴のブレードをつかんで、転倒させようとしたからだ。

予選最終組の第7組に出場したのは、韓国、日本、アメリカ、北朝鮮の4選手。偶然にも朝鮮半島における現在の緊張に絡む因縁の4カ国の選手が顔を揃えたことになる。

4人のうちの最年少、16歳のチョン選手はスタート直後に転倒。氷上に倒れたまま、腕を伸ばして、日本の渡邊啓太選手のブレードをつかんだ。


再スタート後も渡邊に接触を繰り返すチョン。後ろはアメリカのホン選手 Bassam Khabieh-REUTERS

故意に転ばせようとしたのか、レースを止めようとしたのかは不明だ。

渡邊はチョンを擁護

渡邊選手はチョンの手を振り払って滑り続けたが、北朝鮮の応援団がカメラに気づいて一斉に旗を振り声援を送るなか、レースはやり直しとなった。再スタート後、チョンはまたもや渡邊に何度かぶつかった挙げ句に転倒。アメリカのトーマス・ホン選手も巻き込まれてバランスを崩した。

I'm no short track speed skating expert.....but, how was the skater from North Korea not disqualified when he reached out & tried to trip the other guy after he fell? The officials allowed the race to restart then he tried to take everyone out. #Olympics #USA pic.twitter.com/XBj4r7oLTn— Aaron Beal (@Coach_Beal) 2018年2月21日


チョンは失格となり、レースは続行されて、韓国の黄大憲選手が1位、渡邊選手が2位となり、準々決勝進出を決めた。

渡邊選手は、米ヤフー・スポーツとUSAトゥデーの取材に対し、故意の妨害ではないと疑惑を否定した。

「わざとではないと思う」と、渡邊はヤフーに語った。USAトゥデーには「転んだとき、たまたま僕のスケートに手が当たった」だけで「とっさのこと」だと思うと話している。

アメリカのホン選手もチョンの転倒について妨害説を否定。「接近し過ぎていたので影響を受けたが、ショートトラックには不測のアクシデントはつきものだ」とUSAトゥデーに語った。



スポーツマンらしいコメントや謝罪は

冬季五輪への北朝鮮選手団の参加では、今のところ大きな騒ぎは起きていない。一方で、騒がれるほどの成績を上げていないのも事実。アイスホッケー女子の南北合同チーム「コリア」は2得点、28失点の5戦全敗で、最下位に終わった。

それでも、韓国へ来てプレーしたこと自体が評価に値する、と称賛する声もある。アイスホッケー女子の南北合同チームをノーベル平和賞候補にすべきだ、と言うのは、元アイスホッケー選手でIOCアスリート委員会会長のアンジェラ・ルッジェーロ。「彼女たちの犠牲と適応は十分それに値する」

妨害疑惑のチョン選手本人からも一言スポーツマンらしいコメントや謝罪があればいいのだが、お国柄それは難しいのだろうか。


ソフィア・ロット・ペルシオ

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