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仮想通貨クライシス、それでも成長は止まらない

ニューズウィーク日本版 2018年2月23日 16時50分

<ブロックチェーンによる金融業界の創造的破壊は始まったばかりだ>

世界はこの数年で劇的な進化を遂げてきた。だが、私たちがそれをじっくり振り返ってみることは滅多にない。総体的に見ると、テクノロジーはビジネスと生活のほぼあらゆる側面を一変させてきた。例外は金融業界だ。だがここでも、テクノロジーによる創造的破壊の機は熟しつつある。

このデジタル時代に、買い物をするときポケットに手を突っ込んで小銭をごそごそ探すなんて、原始的にさえ感じられる。私たちは今、地理的な制約を超えて世界のコミュニティーとビジネスをするようになった。それなのになぜ、国際的な決済には相変わらず多くの時間とコストがかかり、厄介な手続きが必要なのか。

現在のシステムには、いくつもの不都合な真実が存在する。例えば、今も世界には伝統的な銀行を利用できない人が50億人もいる。逆の見方をすれば、世界中の人がデジタル通貨で遠隔決済、通貨為替、送金できるようにするビジネスには、巨大な潜在性がある。

重要なのは、手数料が下がり、取引がスピーディーになり、国際決済がいつでもできるようになることだけではない。世界中の市民が金融サービスを利用できるようになれば、前代未聞の変化が起きるに違いない。ただしここでいう金融サービスとは、伝統的な銀行業のことではない。デジタル通貨の基礎となる分散型ネットワークは、従来のプロセスから摩擦を取り除き、既存の主流派から多くのパワーを奪う。

だから大手メディア(既存の主流派の1つだ)は、ビットコインの価格がこの1年で1000%上昇したことよりも、1週間で約20%下がったことを報じたがる。だが、もはや従来のルールは通用しなくなり、昔ながらのやり方は役に立たなくなりつつある。専門家なんて存在しない。そのことが一部の人々を著しく不安にしている。

消費者のニーズが牽引役に

だが太古の昔から、変化は人間の生活において普遍的なものだ。だから私たちは、新しいデジタル通貨に対してもっとオープンになるべきだ。スムーズな取引を妨げる摩擦が存在する領域は、必ず破壊される。究極的には、この技術革新を牽引しているのは消費者のニーズ(と現在の金融システムに対する不信感)なのだ。その点、ブロックチェーンは既存の決済プロセスから非効率を取り除くと同時に、透明性と説明責任をもたらす。

あらゆる分野でデスクトップコンピューターよりもモバイル端末向けのシステム設計が優先される今、現在の金融システムが破綻しており、十分な役割を果たさなくなっているのは明白だ。今や世界の誰とでもスマートフォンで会話ができ、シェークスピアの全作品を数分で送信することもできるのに、現金5000ドルを海外送金するには、多くのコストと時間がかかる。



歴史を振り返れば、金や銀に代わって紙幣が使われるようになったときに人々が懐疑的な思いを抱いたのは、そんなに昔のことではない。デジタル通貨は、社会の進歩における新しいステップにすぎない。だから私たちは、仮想通貨の可能性について、もっとオープンかつ広い視野で考えるべきだ。

仮想通貨はビットコインだけにとどまるものではない。市場はまだよちよち歩きの段階であり、もっと広く採用されるようになったとき、ブロックチェーンとその基本技術、そして仮想通貨の組み合わせがどんな変化をもたらすかは、まだ理解され始めたばかりだ。

それは今後も広がる一方だろう。テクノロジーそのものは難解に見えても、時間の節約、コスト削減、リスク低下を理解できない経営者はいないのだ。

経営者が市場のトレンドやテクノロジーの可能性から目を背けて閉鎖的な態度を取り続ける企業は、あっという間に時代に取り残されてしまうことを、歴史は容赦なく示してきた。また、永久に安泰のブランドなど存在しないことを、私たちは知っている。

少し立ち止まって、貨幣と自分の関係がどれだけ変わったか、そしてそれが今後どれだけ変化するか考えてみてほしい。そうすればデジタル通貨の未来について、私たちが心を開くべき理由が分かるはずだ。

<本誌2018年2月13日号「特集:仮想通貨の闇」から転載>

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タリク・アルワヘディ(実業家、クリプトビーアンドビーCEO)

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