Infoseek 楽天

米入管で不法入国者を待つ「冷凍庫」並みの監房

ニューズウィーク日本版 2018年3月1日 15時30分

<人権擁護団体の調査で明らかになった、米入国管理当局の女性と子供に対する虐待的な扱い>

アメリカの入国管理当局が幼い子供もいる家族連れを「凍えるほど寒い監房」に収容していると、国際人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が告発した。

事実であれば、この処遇は国際法にもアメリカの連邦法と政策にも反している。

HRWが発表した44ページの報告書のタイトルは、『冷凍庫に入れられて:アメリカの入管当局の収容施設における女性と子供の虐待的な扱い』。

子供も含めた数十人の体験が詳述されており、彼らは凍えるような施設に、時には何日間も閉じ込められたと証言している。

米税関・国境取締局(CBP)の指針では、不法入国者の収容は72時間以内とされているが、HRWの聞き取り調査では、女性と子供が3日以上、底冷えのする監房に収容されたケースが100件余りあったという。

成人と10代の男性は日常的に妻、母親、子供から引き離されていると、報告書は指摘している。

服も脱がされ


寒く不衛生な施設に何日間も収容されたとの訴えが相次ぐ。写真はアリゾナ州ダグラスの収容施設 Human Rights Watch

寒さ対策には防災用のアルミシートのブランケットが与えられるだけ。監房には簡易ベッドやマットレスもなく、寝具は一切ない。

「とにかく寒い。死ぬほど寒い......マットもなく、床の上で寝た」と、カロリーナ・Rと名乗るグアテマラ人女性はHRWに語った。

服を重ねて着込んでいると、1枚だけ残してすべて脱げと、係官に指示される。

「ブラウスとセーターのどちらか1枚にしろと言われて、ブラウスを脱いだ」と、アデーラ・Rと名乗る女性は話した。彼女は赤ん坊と一緒にアリゾナ州ノガレスの収容所で3晩過ごしたという。

「収容施設では根強い慣行として、被収容者の尊厳を傷つける、懲罰的な処遇がまかり通っている」と、HRWの子供の権利に関する上級顧問マイケル・ガルシア・ボチャネクは指摘する。「家族を引き離すべきではないし、子供にとっては1晩でも監房で寝るのは酷だ」



精神的外傷を残す

HRWが調査した女性と子供の大半は、祖国で暴力など迫害を受けて逃れてきたと語った。

「収容施設の状況は不必要に過酷なばかりか、とりわけ祖国で迫害されてきた人たちにとっては、明らかに有害だ」と、ボチャネクは言う。「アメリカは子供たちや彼らの家族にトラウマを与えるような慣行を今すぐやめるべきだ」

HRWは被収容者を「虐待的な条件下」に置くことが精神の健康に与える影響についても警告している。

災害援助と人権擁護のNPOユニテリアン・ユニバーサル奉仕委員会の15年の報告書によると、アメリカの入管当局に逮捕された人々にとって、「最も耐え難く、精神的外傷を与える」期間は、収容施設で過ごす期間だという。

HRWによれば、収容施設は不衛生でもあり、被収容者にはハンドソープも与えられない。トイレや食事、乳幼児への授乳やおむつ替えの前後にも手を洗えないということだ。

法令違反はないとCBP

ある女性は5歳の息子とリオグランデ川の浅瀬を歩いて渡り、ずぶ濡れになって入国した後、寒い監房に入れられて、「がたがた震えながら、コンクリートの床に座っていた」と、HRWに話した。

「せめて息子は床の上で眠らずに済むよう、膝の上に抱えて、私は座ったまま寝た」

CBPの職員は本誌の取材に対し、「HRWの報告書のことは知っている。報告書で指摘された問題についてはHRWと話し合った」と述べた。

CBPは「短期収容施設」を運営し、不法入国者の収容を「連邦法の貿易円滑化・貿易履行強制法に基づき、通常は72時間以内」にとどめているという。

CBPはまた「すべての被収容者の尊厳を尊重しており、すべての短期収容施設が関連法規に定められた基準に適うよう管理を徹底している」と強調。内部の運営査察部門が施設の状況を定期的にチェックするなど、複数の「法令遵守メカニズム」が機能しており、違反は一切ないという。



むご過ぎる処遇

収容された人たちの多くが、何より寒さがこたえたとHRWに訴えたにもかかわらず、CBPは「そんなことはない」の一点張りだ。

16〜17年に約150人の女性に聞き取り調査を行ったNPO女性難民委員会も17年10月の報告書で、調査対象者のほぼすべてが「凍えるように寒い」CBPの施設に何日間も閉じ込められたと訴えた、と述べている。


シャンタル・ダシルバ

この記事の関連ニュース