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経済危機のベネズエラで国民がやせ細っていく

ニューズウィーク日本版 2018年3月3日 16時40分

<石油依存経済が破綻して物質不足が深刻化。飢えに苦しむ国民の体重が11キロも減少している>

経済破綻と食料不足にあえぐベネズエラで深刻な数字が明らかになった。17年の1年間で国民の体重が平均11キロ減少し、貧困率は90%にも上るというのだ。

国内の3大学が毎年行っている調査によると、体重は16年が平均8キロ減だった。貧困率は14年が48%、16年が82%で、事態は明らかに悪化している。

17年の調査は、20~65歳の6168人を対象に実施された。そのうち60%の人が、過去3カ月の間に空腹で目が覚めたことがあると答えている。ベネズエラの人口3100万人のうち、約4人に1人が1日2食以下で過ごしている。

その食事も、調査の報告書によると、ビタミンとタンパク質が不足している。食生活の偏りの一因は超ハイパーインフレだ。ブルームバーグの調べでは、1月中旬までの12週間で年率換算約45万%と、驚異的な水準に達している。

複雑な通貨制度と外貨不足のために輸入代金の支払いがままならず、ベネズエラ国内では食料品と日用品を中心に物資不足が続いている。小麦粉など基本的な食料品を求めて、店に長蛇の列ができるほどだ。

「収入はないも同然だ」と、調査チームに参加したアンドレス・ベーリョ・カトリック大学のマリア・ポンセは言う。「物価上昇と人々の給料との差は社会全体に広がっている。貧困ではないベネズエラ人は事実上、1人もいない」

今回の調査は、ベネズエラの福祉について最も包括的に分析したものの1つと言える。政府が貧困に関するデータを発表したのは15年上半期が最後で、その際の貧困率は33%だった。

数十万人が国外に流出

つらい空腹は、国民の生産性を大きく損なう。石油生産など主要な経済部門でも、食べ物を買う余裕のない従業員は体力が落ちて力仕事をこなせない。

ベネズエラ国営石油公社の労働組合の幹部によると、17年11月と12月に北西部スリア州の掘削基地で栄養不良の従業員12人が倒れ、病院で治療を受けた。別の組合には、北東部の都市プエルト・ラ・クルスで仕事中に空腹のあまり意識を失った複数の従業員が窮状を訴え出た。

99年にチャベス政権が発足して以来、ベネズエラは社会福祉の財源を石油産業に頼ってきた。しかし、国の石油政策は失敗し、原油価格が世界的に急落したため、ベネズエラは国民の命さえ脅かされる人道的危機の瀬戸際に立たされている。



13年にマドゥロ大統領が就任した後、ベネズエラは深刻な不況に陥っている。14年後半から食料は配給制になり、割り当てを管理するための指紋認証システムがスーパーに導入された。マドゥロは15年に、このシステムを全国2万店舗に拡大すると発表した。

マドゥロは5年前にトイレットペーパー不足が問題になった際に、「食べ過ぎ」のせいだと言ったこともある。当時の調査によると、ベネズエラの国民の9割以上が1日3、4食を取っていた。

多くのベネズエラ人が、食べ物と仕事を求めて祖国を後にしている。17年以降、50万人が国境を越えてコロンビアに入った。ガイアナやブラジルなど、近隣諸国に移り住む人も増え続けている。

ドイツに入国したシリア難民は60万人。ミャンマーでの激しい暴力行為を逃れて、バングラデシュに避難したイスラム系少数民族ロヒンギャは100万人。それに匹敵する危機が起きようとしているのかもしれない。

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[2018.3. 6号掲載]
ロバート・バレンシア

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