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テキサス州予備選、民主党が好調な滑り出し──トランプへの反対票か

ニューズウィーク日本版 2018年3月8日 14時30分

<保守の牙城、テキサス州の予備選に女性と非白人が積極的に参加して民主党の投票数は過去最高に。対する共和党は熱気に欠ける>

今秋行われる米中間選挙に向け、テキサス州で3月6日、共和党・民主党両党の連邦上下院議員候補を選ぶ予備選挙が実施され、選挙戦の火蓋が切って落とされた。

今回のテキサス州予備選では、前回2014年の中間選挙の予備選と比べ、民主党支持者の投票者数が87%も増加。専門家によると、女性と非白人が積極的に選挙に参加したことが大きな要因だという。

民主党の上院議員候補にはベト・オルーク下院議員が選出され、共和党候補で現職のテッド・クルーズとの一騎打ちに臨むことになった。また民主党は92年以降初めて、連邦下院議員を選ぶ州内の36の選挙区すべてで候補者を擁立した。

「共和党はテキサスで起きた事態に危機感を抱くべきだ」と、2016年の大統領選で民主党全国委員会にデータを提供した調査会社ターゲットスマートのトム・ボニアーCEOは本誌に語った。

共和党予備選の投票者数も15%増えたが、民主党の87%増は、中間選挙の予備選では「まずあり得ない」数字だと、ボニアーは言う。

熱気に欠ける共和党

テキサス州は伝統的に共和党が強く、それを支えるのは主として白人男性だ。近年は中南米系とアフリカ系住民が増えているが、ボニアーによれば、この層はこれまで白人ほど選挙に熱心ではなかった。この層がどっと投票所に押し寄せれば、勢力図が大きく変わる可能性がある。

先週末の期日前投票を見て、ボニアーは女性、黒人、中南米系の参加が大幅に増える一方で、白人の参加が減ったことに気づいた。11月の本選でも、こうした現象が起きる可能性がある。

民主党の下院議員候補として、中南米系の女性2人、ベロニカ・エスコバルとシルビア・ガルシアがそれぞれの選挙区で選出され、どちらか、あるいは2人とも本選で勝てば、テキサス州選出では初の中南米系女性の下院議員となる。

ボニアーによれば、民主党の支持基盤は中間選挙に向けて活発に草の根運動を展開しているが、共和党陣営は民主党と比べても、また16年の大統領選と比べても、まったく熱気が感じられないという。



トランプの応援が裏目に

「われわれはすべての選挙区に候補者を立てている。つまり、これまで長年、民主党の主張を聞く機会がなかった有権者にも声が届くということだ」と、テキサス州民主党のジルベルト・イノホサ委員長はAP通信に語った。「11月の本選でその成果が出るだろう」

白人有権者のうち、教育レベルが高い層は民主党支持に回っていると、ボニアーは指摘する。こうした支持に支えられ、民主党は昨年、ジョージア州の下院補欠選で善戦し、バージニア州とニュージャージー州の知事選で勝利した。

テキサス州の民主党陣営を活気づけた「功労者」はドナルド・トランプ大統領だ。トランプは2月末、テキサス州予備選に向けクルーズら共和党候補を推す応援ツイートをしたが、これが裏目に出た格好だ。

3月7日に発表されたポリティコ/モーニング・コールの世論調査では、トランプの支持率は、20年の大統領に出馬する民主党候補(誰かは特定されていない)よりも8ポイント低かった。

多数党復帰の公算は

トランプの減税、歳出引き上げ、さらに提案されている福祉カットは、すべて有権者の選択に影響を与えると、ボニアーは言う。「有権者はいわばジョークの意味が分かり始めたのだ。トランプのツイートや記者会見での思いつき発言ではなく、彼が実際にやることを慎重に見きわめ始めている」

クルーズは銃規制反対派の票をつかもうと、6日夜のラジオ放送で、対立候補のオルークが2月にフロリダ州の高校で起きた銃乱射事件について、AR-15のような攻撃型武器の禁止を呼び掛けたことを取り上げ、彼は「われわれから銃を取り上げたがっている」と州民に警告した。

民主党の投票数が大幅に増えたといっても、テキサス州の共和党上院予備選に投票した人のほうが、民主党の予備選に投票した人よりまだ5万人余り多い。

民主党が下院で多数党に返り咲くには、中間選挙で24議席増やす必要があるが、テキサス州がこれに貢献するのは難しいとの見方もある。

伝統的に共和党が強いレッド・ステート(赤い州)であるテキサスで「民主党の投票者数の増加が共和党を上回っただけでも大変な事態で、共和党は焦っているはずだ」と、サザン・メソジスト大学の政治学者カル・ジルソンはFOXニュースに語った。

だが、テキサスが民主党の強いブルー・ステート(青い州)になるには、「この程度では足りない」。


グラハム・ランクツリー

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