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グレートバリアリーフのサンゴの30%が死滅 犯人は地球温暖化

ニューズウィーク日本版 2018年4月20日 18時30分

<世界最大のサンゴ礁で大量死。2016年の熱波だけでサンゴの30%が死んだことが明らかに>

オーストラリアにある世界最大のサンゴ礁グレートバリアリーフのサンゴの約3割が死滅したことが明らかになった。

オーストラリア北東部の海岸から全長2300キロ以上にわたって広がり、総面積35万平方キロのグレートバリアリーフでは、約3900のサンゴ群集が連なり、独自の生態系を構成している。魚やカメ、鳥類、ワニにいたるまで多様な生物の棲みかとなっており、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産にも登録されている。

その貴重なサンゴ礁が、地球温暖化による海水温上昇の影響で大量死している。英科学誌ネイチャーに4月19日に掲載された論文によれば、2016年の記録的な熱波の影響で、グレートバリアリーフのサンゴの約3割が死滅した。

海水温が上昇すると、サンゴと共生し光合成をする植物プランクトン「褐虫藻」が離れてしまい、サンゴは白くなって(白化)死んでしまう。サンゴ礁の土台を作る小さくて軟らかいサンゴの本体「ポリプ」が死滅する恐れもある。

一時的な現象ではない

「白化したサンゴは、海水温が下がれば徐々に色を取り戻して生き残ることもあるが、そのまま死んでしまうこともある」と、論文の筆頭著者である豪ジェームズ・クック大学ARCサンゴ礁研究センターのテリー・ヒューズ所長は声明で述べた。グレートバリアリーフでは2016年3~11月の9カ月間で30%のサンゴが死滅した」

ヒューズの研究チームは2016年に海水温が極端に上昇した後、人工衛星を使って2300キロにわたるグレートバリアリーフの被害状況を観測した。その結果、サンゴ礁全体の29%が3分の2以上のサンゴを失ったと判明。海水温が特に高かった北部の3分の1が、最も深刻な被害を受けていた。熱波で白化現象が進んだことが、壊滅的な大量死につながった、と研究チームは分析している。

2016年の熱波は決して例外的な現象ではない。論文を共同執筆した米海洋大気局(NOAA)のマーク・イーキンは、これは「2014~2017年に全世界的に発生した熱波と白化現象の一部」だと言う。熱波は2017年にもグレートバリアリーフを直撃し、中心部のサンゴ礁が熱ストレスや白化に見舞われた。

気候変動の影響で、多様性に富んだサンゴ礁の構成が劇的に変化してしまったと、ARCサンゴ礁研究センターのアンドリュー・ベアードは言う。「多様性に富み成熟したサンゴ礁が、海水温の上昇に耐えられる数種類のサンゴしかいない多様性に乏しいサンゴ礁になってしまった」



被害は壊滅的だが、人々が行動すればまだ生きている無数のサンゴを保護できる、とヒューズは言う。生き残ったサンゴは死滅した種類と比べて「タフ」だ。「残る半数のサンゴの保護を急ぎ、回復を助けなければ」

サンゴは単に美しいだけではなく、動物と人間両方の生命を支えている。サンゴ礁が死滅すれば、海洋生物や魚を食べる人々の生活に重大な影響を及ぶ。サンゴ礁の恩恵を受けている人は数億人に上り、その大半は貧しく、発展の遅れた地域の住民だ。

サンゴ礁を守るには、地球の平均気温の上昇を産業革命前と比べて2度以内に抑えることが不可欠だ、と研究者らは指摘する。

ヒューズは言う。「グレートバリアリーフは間違いなく気候変動の脅威にさらされている。だが温室効果ガスの削減に今すぐ取り組めば、まだ取り返しがつく」

(翻訳:河原里香)



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キャサリン・ヒグネット(サイエンス担当)

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