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米軍がキス訓練に予算7600万円 入隊して恋愛の達人に!?

ニューズウィーク日本版 2018年5月8日 18時15分

<講義よりもコミュニケーション型の訓練が大切? 米軍がキスのハウツーを訓練に盛り込んだワケとは...>

米国防総省が斬新なトレーニングの計画を明らかにした。その名も「キス・トレーニング」。兵士がパートナーと良いキスを交わすためのハウツーを教授するというのだ。70万ドル(約7600万円)の予算をかけてキスの達人を養成する。FOXニュースなど複数メディアが報じた。

先週、バージニア州にあるラングリー・ユースティス統合基地で「Can I Kiss You?(キスしてもいい?)」と題したワークショップが開かれた。目的は兵士に「パートナーとの効果的なコミュニケーションの取り方、そしてリスペクトのある関係を構築するスキル」を教えること。

ニュースサイトの「ワシントン・ フリー・ビーコン」によると、ワークショップを担当したケネタ・サミュエル軍曹は「兵士たちは(このワークショップを通し)パートナーとの関係性や親密さを考えるきっかけを得る」という。今回のワークショップについて「講義形式なんかより、対話型のワークショップのほうが受け入れられると思う」と語った。

ラングリー・ユースティス統合基地でのワークショップで兵士たちに強く伝えられたのは「デートの終わりにキスをするなら、必ず女性の意志を尋ねよ」――なるほど。かなり実用的なアドバイスだ。

妹のレイプ事件をきっかけに動いた兄

国防総省のリリースによると、このワークショップを手掛けたマイク・ドミツは、パートナーとの意志疎通をはっきりとすることを目指して活動する「デート・セーフ・プロジェクト」の創設者。「Can I Kiss You?(キスしてもいい?)」は、同団体が展開するセミナーのひとつで、ドミツは同じタイトルの書籍も出している。

ドミツがこのような活動を始めた背景には、1989年に起こった悲しい事件がある。妹がレイプ被害に遭ったのだ。そして翌年から、パートナーとの「同意」を得ることの重要性を周りの人に広める努力を始めた。

ドミツの活動は徐々に認められ、デート・セーフ・プロジェクトは国防総省と契約を交わすまでになった。2016年には飲酒行動をテーマにした10万ドル(約1100万円)のプロジェクトを獲得するなど、複数の取り組みに関わっている。



慣例を捨てた新しいトレーニングが必要

米軍内での性的暴行や嫌がらせに関する報道は後を絶たない。4月30日に国防総省が発表した資料によると、2016年末~2017年末に米軍内で報告された性的暴行の件数は前年比10%増の6769件にのぼった。同省は、被害者が報告しやすい環境づくりが進んでいることが要因とみているが、氷山の一角の可能性もある。

今回のワークショップは、4月の「性行為啓発月間」にあわせたトレーニングの一環で、性的暴行や嫌がらせの防止を呼び掛けた。

国防総省は、あくまでもこのワークショップはスライドを用いた講義形式だとしている。しかし、サミュエル軍曹の考えは違う。これからのトレーニングは兵士との双方向型のコミュニケーションを大切にしたいと考えている。「慣例を打ち破りたい」と熱い思いが込められた「キス・トレーニング」で、果たしてどんな効果がみられるのか。来年の国防総省の発表に要注目だ。

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ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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