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W杯で世界を驚かせた日本の「もう一つの勝利」

ニューズウィーク日本版 2018年6月21日 15時0分

<2戦目で対戦するセネガルも負けてはいない>

サッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会。日本代表は6月19日に開催された一次リーグ初戦で、大方の予想を裏切って2−1で強豪コロンビアに勝利した。日本にとってW杯での勝利は2010年の南アフリカ大会以来の快挙だ。

その直後、スタンドの日本人サポーターが世界中のハートをつかむ「もう一つの勝利」を挙げた。祝勝騒ぎをお預けにして、黙々とスタンドのゴミを拾い始めたのだ。

4万人もの観衆が興奮にはじけるゲームでは、試合終了後のスタジアムがゴミ捨て場のようになってもやむを得ない。ハンバーガーやポテトチップスの包装紙、紙コップ、ペットボトル、その他のゴミが辺りに舞い散り、清掃スタッフは毎回大変だ。だが、日本チームの試合後には、スタッフの作業はとてもラクになる。

This is my favourite moment of the World Cup so far; Japan fans picking up litter after their victory vs Columbia. The lessons in life we can take from the game. Why I support Japan #class#respect#WorldCup pic.twitter.com/FyYLhAGDbi— Christopher McKaig (@Coachmckaig) 2018年6月19日

カナダ人コーチのツイート「今回のW杯でいちばん気に入った瞬間の一つ」


アジア勢がW杯で初めて南米勢から勝利をもぎとった点でも、コロンビアに対する勝利は歴史的な日本の金星だ。それでもサムライブルーに身を包んだサポーターたちは、興奮に我を忘れることなく、持参した大きなゴミ袋を広げてスタンドの清掃にとりかかった──英BBCは、感嘆混じりにこう伝えた。


サランスクのモルドヴィア・アリーナに駆け付けた日本人サポーター Jason Cairnduff-REUTERS


「日本では常識」

日本に拠点を置くサッカー記者のスコット・マッキンタイヤは初戦の会場となったロシア西部のサランスクを皮切りに、日本代表に随行する。そのマッキンタイヤに言わせれば、世界が驚く日本人サポーターの「善行」は日本ではごく当たり前の行為だ。

「サッカーはその国の文化を映す鏡だとよく言われる」と、マッキンタイヤはBBCに語った。「『立つ鳥跡を濁さず』が日本社会の常識だ。あらゆるスポーツイベントで、日本人はゴミを持ち帰る」

W杯では、試合運びや勝敗に対する反応に各国のお国柄がはっきり現れる。日本では、自分たちが出したゴミは、自分たちが持ち帰るのが常識だ。日本の学校では教室や廊下の掃除を生徒にさせていて、日本人は子供の頃から片付けや清掃の習慣が身についている。

2014年のブラジル大会では、日本代表は1勝も挙げられず、グループリーグ敗退を喫したが、このときもサポーターのゴミ拾いが世界の注目を浴びた。



白星発進に日本中が沸いた今回のW杯。これまで日本代表は最高でもベスト16止まりだったが、今やそれを上回る成績も期待されている。

面白いことに、日本が2戦目で対戦するセネガル代表のサポーターもゴミ拾いで注目を集めたばかり。セネガル代表は、「テランガのライオン(おもてなしのライオン)」という愛称を持つ。サポーターもその名に恥じず、自国代表がグループH初戦でポーランドを2-1で降した後、スタンドの清掃を行った。その様子を撮影した動画がインターネット上で公開されて評判を呼び、アルゼンチンのスポーツ専門テレビ局TyCスポーツが公開した動画は再生数800万回を超えたほどだ。

#TyCSportsMundial Senegal consiguió un triunfo histórico. Pero sus hinchas en lugar de festejar a minutos de terminado el partido, se encargan de limpiar su sector antes de retirarse. #RESPECT. pic.twitter.com/RiKovpfmoT— TyC Sports (@TyCSports) 2018年6月19日

セネガルのサポーター。動画の再生回数は800万回を超えた


6月24日にエカテリンブルクで行われる日本対セネガル戦では、世界で最もマナーの優れたサポーターが同士がスタンドを埋め尽ることになる。試合の勝敗を予測するのは難しいが、だがこれだけは言える。サムライとライオンのいずれが勝つにせよ、試合終了後のスタンドではゴミ拾い対決が見られるだろう。


デービッド・ブレナン

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