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中国人民解放軍は「平和ボケ」だ

ニューズウィーク日本版 2018年7月4日 17時0分

<長く戦争をしていない中国の人民解放軍は、規模は大きいが「戦争を知らない」軍隊。即戦力としての訓練が急務、と軍機関紙が警告>

中国の人民解放軍は、ここ数十年戦争がなかったせいで「平和ボケ」にかかっていると、軍の機関紙が批判した。

この「平和ボケ」を撲滅すべく、人民解放軍は、即戦力としての訓練を強化している。習近平国家主席も自国の軍に対し、実戦に必要な技能を兵士に身につけさせるよう命じたと、香港英字紙サウスチャイナ・モーニングポストが報じた。習は、数に頼る代わりに部隊の訓練に重きを置く改革をした。

サウスチャイナ・モーニングポストの記事によると、人民解放軍の機関紙、解放軍報は社説で、「わが軍では数十年にわたって平和ボケがはびこってきた」と指摘。「このような悪しき病を退治すべく固い決意で臨まなければ、実際に戦争が起きた際に必ずや高い代償を払わされるだろう」と、危機感をあらわにしているという。

人民解放軍は、現在軍役に就いている兵士だけでも210万人を数え、人数では世界最大規模を誇る。だが1970年代のベトナム戦争を最後に、実戦を経験していない。その結果、軍が慢心し能力が落ちているのではないかと、軍幹部や習近平は危惧している。そこで習は、今後30年以内に自国の軍を世界クラスの戦闘部隊へと変貌させるという目標を掲げた。

「戦争を止められるのは、我々に戦闘能力があってこそだ」と、解放軍報は論じている。「軍は今こそ正しい道に戻り、戦闘訓練に集中しなくてはならない」

前例のない危機

サウスチャイナ・モーニングポストによると、人民解放軍の元将校、ユエ・ガンは、中国軍にはびこる大きな問題として、責任逃れと汚職を指摘する。「『平和ボケ』の主症状は、汚職と職務怠慢だ」

解放軍報はまた、中国が直面する安全保障上の脅威は増しており、世界的な懸念材料も前例がないほどだと指摘。中国は現在、領有権を争う南シナ海で示威行為を繰り返しており、アジアの近隣諸国との間で緊張が高まっている。またアフリカのジブチに海外初の軍事基地を設けるなど、海外進出も積極化させている。

貿易摩擦でアメリカとも緊張が増す中、中国はロシアとの関係改善にも熱心だ。7月3日(現地時間)には、国務委員で国防部部長を務める魏鳳和が、中国を訪れていたロシア地上軍総司令官、オレグ・サリュコフと北京で会談した。魏はサリュコフに対し、両国が「脅威や課題に共同で取り組んでいく」意向を伝えた。



6月には、習がロシアのウラジーミル・プーチン大統領に友誼勲章を授与し、同大統領を「最良で最も親密な友人」と称えた。

世界最強のアメリカ軍は現在、現役の兵士が130万人強、年間予算6100億ドルと、中国軍の2160億ドルを大幅に上回る。「平和ボケ」の心配はない。近年だけでも、イラク、アフガニスタン、パキスタン、リビア、シリア、イエメン、ソマリアで紛争に関わっているのだから。

(翻訳:ガリレオ)


ジェイソン・レモン

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