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カリフォルニアに降った「熱い雨」、世界最高記録を更新

ニューズウィーク日本版 2018年8月6日 20時15分

<カリフォルニア州南部のインペリアル郡で、普通雨など降らない48度の気温のなかで降雨を記録。これはいったい何を意味するのか>

カリフォルニア州のインペリアル郡で7月24日、世界の観測史上最も「熱い雨」が観測された。

この時の気温は48.3度。気象の専門家ジェフ・マスターズによると、これは降雨時としては観測史上最高気温、つまり「hottest rain」だという。地球温暖化と一連の異常気象がもたらした珍現象の一つである。

あまりに暑いなかで雨が降ったため、ある住民は胸が苦しくなったと証言する。「呼吸をするのも苦しいほどだった」

マスターズは、「ウェザー・アンダーグラウンド」というブログの共同創設者。天気予報専門のケーブルテレビチャンネル、ウェザーチャンネルが運営するウェブサイト「ウェザー・コム」の、いわばマニア向け裏バージョンとでも言うべき存在だ。かつてアメリカ海洋大気局(NOAA)のハリケーンハンターとも行動を共にしたマスターズは、ネットの気象情報専門家として人気だ。

とにかくこの夏のカリフォルニアは異常に暑い。マスターズの解説を振り返ってみよう。

「2018年7月24日は、カリフォルニア州で史上最高レベルの酷暑を記録した。砂漠地帯の州南西部としても異例な、強烈な熱波がこの地域を襲い、気温は最高記録に迫った」と、マスターズは解説している。

「カリフォルニア州中部の砂漠地帯、デスバレーの気温は52.7度に達した。これは、世界の観測記録のなかの最高気温にほんの1.11度だけ足りない暑さだ。リバーサイド郡パームスプリングスも過去最高に近い50度を記録した。また、インペリアル郡の町インペリアルでは49.4度と、1995年7月28日の51.1度に次ぐ高温を記録した」

降るそばから蒸発する雨

この強烈な熱波により、降雨時の世界最高気温記録が更新されることになったのだと、マスターズは言う。インペリアル郡ではこの日の午後に入って雲が発生し、太平洋夏時間午後3時53分から降水が記録されたという。この雨雲がなければ、当地の気温はさらに上昇していた可能性がある。

「雨が降り始めた時点で、気温は48.3度という驚くべき高温に達していた。これは、降雨時の気温としては、世界の観測史上最高記録を更新する数字だ」と、マスターズは言う。

「気温が高く、湿度は11~15%しかなかったため、降った雨の大半は蒸発してしまい、雨量計にも降水の痕跡が残るだけだった。それでも雨が降ったのは確かで、降雨時の気温としては史上最高を記録したことは間違いない」

マスターズによると、37.7度以上の気温で雨が降ることはまれだという。それ以上の高温には「高気圧がつきもので、下降気流によって雲の発生や降雨が妨げられる」ケースが多いからだ。



これまでの降雨時の最高気温は、カリフォルニア州サンバーナーディーノ郡にある町ニードルズで2012年8月13日に記録されたもので、この時は47.7度で雨が降った。

降雨時の最高気温記録が更新されたことに注目している気象専門家はほかにもいる。「気候変動コミュニケーター」を名乗るCBSニュースの解説者で、コロンビア大学で気象学教授に就任予定のジェフ・ベラルデッリは、この報道について、自らのツイッターで以下のようにコメントしている。「今回の記録更新から、地球は温暖化しているだけでなく、湿度も増していることがわかる。これは気候変動が人の健康に影響を及ぼす事例と言えるだろう」

インペリアルは、カリフォルニア州南部でも南東部に位置し、人口は1万7000人。この地域は砂漠地帯で過酷な環境で知られている。

(翻訳:ガリレオ)


デービッド・マギー

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