Infoseek 楽天

機密権限剥奪されても、トランプは危険と言い続ける──元CIA長官

ニューズウィーク日本版 2018年8月20日 20時0分

<トランプ批判が災いして機密情報へのアクセス権限を剥奪されたが、批判は続けると言うブレナン>

CIA(米中央情報局)のジョン・ブレナン元長官は8月19日、ドナルド・トランプ大統領が「(国家に対して)反逆的な」行動をしたとの考えに変わりはないと述べた。

トランプがロシアとの共謀を否定しているのは「たわごと」だ、と断じたブレナンのニューヨーク・タイムズへの寄稿は、ワシントン政界に大きな波紋を呼んだ。ブレナンはまた、トランプ政権によって機密情報へのアクセス権限 を剥奪されたのは自分が政権に批判的な発言をしたからであり、「トランプに楯突こうとするかも知れない他の人々を脅して口を封じようとする試み」だと主張した。

19日にブレナンはNBCテレビのインタビューに応じ、これまでの発言を後悔してはいないし、アクセス権限の剥奪についてトランプを訴える ことも検討中だと述べた。訴訟を起こせば他の政府高官らに対する同様の措置を防止する効果が期待できるとブレナンは見ているようだ。

「トランプのアメリカは異常事態」

「(国家への反逆だという)考えにもまったく変わりはない。今は異常事態だと思う。情報畑のプロとしての一種の訓練なのかも知れない。トランプ氏がこれまでやってきたこと、今やっていることに関して赤信号が点滅しているのを私は見てきた。彼はこの国を国際舞台から引きずり下ろそうとしている」とブレナンは述べた。

「彼はアメリカ国民に嘘をつき続けている。声を上げる必要があるというのが私の思いで、どちらかといえばこれまではやむなく声を上げてきた。そうすることが重要だと信じているからからだ。政治的な発言だとは思わない」

ブレナンがツイッターでトランプのことを「反逆的」だと発言したのは、7月の米ロ首脳会談の後だった。ロシア疑惑を完全否定したロシアのウラジーミル・プーチン大統領に、トランプがすぐさま同調したからだ。アメリカの情報機関が掘り出した証拠や裏付けよりプーチンの言葉を信じるのか、というわけだ。

ブレナンはNBCに対し、ロシアと「共謀」という言葉を使ったことが反発を招いたことは認めながら、それでも「共謀」と陰謀の間には大きな違いがあると主張した。

「これが陰謀のレベルに達するかどうかはロバート・ムラー特別検察官の判断に任せるにとになるが、(肝心なのは)ロシアが選挙介入していることをトランプが間近に知っていたかどうかだ。私が言っているのは、アメリカの個人とロシア人との間で行われた共謀の存在であって、これが何らかの刑事告発につながるかどうかはまた別問題だ」



トランプは18日、ツイッターでブレナンに反撃した。「ブレナンがCIA長官在任中に犯した過ちを見た人はいるか? 彼は最悪の長官として歴史に名を残すことになるだろう。そしてやめてからはわが国の機密をゆだねるに値しないただのほら吹きで党派的な3流政治評論家になった」

上院情報委員会の委員長を務めるリチャード・バー上院議員も17日、ブレナン発言を強く非難した。

「もしブレナン(元)長官の発言がCIA長官在任中に手にした情報に基づくならばなぜ17年に公表された(ロシア介入疑惑に関する)報告書にそれを含めなかったのか」とバーは述べた。

「もし発言が退任後に目にした情報に基づくなら、それは情報漏えいに相当する。もし発言が憶測に基づく純粋に政治的なものであれば、大統領は行政府の長として彼の機密情報へのアクセス権を取り消す十分な権限を持つ」

「大統領は法を超えた存在ではない」

機密情報へのアクセス権剥奪の動きは情報畑の人々の間にも議論を巻き起こしている。

レオン・パネッタCIA元長官はCBSの取材に答え、トランプにはそうした決定をする権限はないかもしれないと述べた。政治紙ザ・ヒルによればパネッタは「トランプが大統領令に従っているか、きちんとした法的手続きを踏んでいるのかどうかが疑問視されるところだ」と述べたという。またパネッタは「大統領は法を超えた存在ではない」とも述べている。

一方、19日にはジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)は、アクセス権限剥奪に法的問題はないだろうとの考えを示した。これはとりもなおさず、トランプ政権とロシアの間の関係を証明するかも知れない機密情報があるということだ。

「もし機密情報を使わなければ、ブレナンはトランプ大統領とロシアとのいわゆる共謀を非難できる立場になかったのではないか、と多くの人々が述べている」とボルトンはABCテレビの取材に答えた。

(翻訳:村井裕美)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>



ジェーソン・マードック

この記事の関連ニュース