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トランプ、元側近の爆弾証言で「任期中に弾劾」のオッズが急上昇

ニューズウィーク日本版 2018年8月22日 20時0分

<トランプの元個人弁護士がトランプに不利な爆弾証言を行ったことから、弾劾もありうるという見方が強まった>

ドナルド・トランプ米大統領が人気中に弾劾されるとするオッズが8月21日、一気に跳ね上がった。トランプの元側近2人が、相次いで有罪になったからだ。長年トランプの個人弁護士を務めたマイケル・コーエンが選挙資金法違反など8件の罪を認めたのに続き、元選対幹部のポール・マナフォートには8件の容疑で有罪が言い渡された。コーエンはこれに先立ち検察との司法取引に合意しており、今後、ロシア疑惑関連でトランプに不利な証言をする可能性がある。

政治に関する予想を行うサイト「プレディクト・イット(PredictIt)」では、トランプが弾劾されるとする予想の「株価」が5ポイント上昇し、45セントとなった。予想が的中すれば、1株につき1ドルの払戻金を受け取る仕組みなので、多くの人が弾劾を予想して「株価」が上がるほど儲けは少なくなる。8月21日の終値は、過去3カ月で最高値となった。

それほど、トランプへの打撃は大きいとみられている。

とりわけコーエンは、自らの罪を認めただけではない。10年以上トランプの黒幕だったことを自認し、トランプが撃たれたら自分が弾を受けるとまで公言していた側近中の側近が、トランプの不倫相手のポルノ女優ストーミー・ダニエルズに口止め料を払ったのはトランプの指示だった、と法廷で爆弾証言を行った。

ダニエルズには口止め料として13万ドルが渡されたが、これは「大統領選挙に影響を与える」ことが目的だったと、コーエンは述べた。トランプは当初、口止め料の支払いを知らなかったとしていたが、後になって、コーエンに対して口止め料分の金額を返却していたことが明らかになった。

コーエンの罪状にはほかにも、10年ほど前にトランプと不倫関係にあったと主張している「プレイボーイ」の元モデル、カレン・マクドゥーガルへの口止め料支払いも含まれている。

これは「魔女狩りだ」を繰り返すトランプ

これらの出来事を受けて、現在トランプの個人弁護士を務めるルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長は、ニューヨークの法廷で行われているコーエンの審理はトランプとは無関係だと距離を置こうとした。「コーエン氏に対する容疑の中には、大統領の不正行為は何も含まれていない」と、ジュリアーニは言った。「検察官が指摘したように、コーエン氏の行動には、かなりの期間にわたって嘘と不誠実のパターンが見受けられるのは明らかだ」

トランプはその夜、ウェストバージニア州チャールストンで選挙集会を開いたが、コーエンやマナフォートの件には触れなかった。ただしいつものように、ロシア疑惑に関する捜査を「魔女狩りだ」と非難するのは忘れなかった。集まった聴衆からは、「あいつを収監しろ」の大合唱が怒った。2016年大統領選挙で対立候補のヒラリー・クリントンを攻撃した時の言葉だが、今回はトランプに対する皮肉にも聞こえた。



現職の大統領が連邦法に定める犯罪に関わったと指摘されたにもかかわらず、連邦議会が実効性のある行動に出るかどうかは、今のところまったく不透明だ。21日の動きに関しても、共和党側からはほとんどコメントがない。民主党の有力議員も、おそらくは11月に行われる中間選挙への影響を懸念してか、即座に弾劾手続きを開始する気配はない。

リチャード・ブルメンソール上院議員(民主党)はCNNの取材に対し、弾劾手続きに関しては、引き続きロバート・ムラー特別検察官の捜査内容を見守りたいとの姿勢を示した。トランプに対してはこれまでに連邦下院で2回、弾劾決議案が提出され投票に至っているが、民主党の有力議員はこれを支持せず、同党のナンシー・ペロシ下院院内総務も、弾劾提案をやめるよう働きかけた経緯がある。

しかし、賭け事の愛好家の間では、今度のことで情勢が変わるかもしれないとの見方が広がっている。さらに今後、11月の中間選挙で民主党が多数派となれば、事態が大きく動く可能性はある。

(翻訳:ガリレオ)


ジェイソン・ルミエール

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