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大型ハリケーンを前に動物が避難 フラミンゴは優雅にゴルフカートで

ニューズウィーク日本版 2018年9月14日 16時30分

<世界の動物園では、戦争や災害のたびに世話をしてもらえなくなり命を落とすことも多い。だがアメリカにはここまで進んだ例もある>

9月13日午後、米サウスカロライナ州コロンビアにあるリバーバンクス動物園の職員たちは、ピンク色のフラミンゴ40羽を1羽ずつ、声を掛けて落ち着かせながら抱き上げゴルフカートに乗せ、臨時の屋内シェルターにエスコートした。9月14日未明にも米東海岸に上陸する予定の大型ハリケーン「フローレンス」には、普段暮らしている屋外の柵はとうてい歯が立たないからだ。

動物園はハリケーン上陸の前日までに、屋外で飼育する約150羽の鳥類を屋内の避難所に移す。移動はゆっくり着々と進めており、飼育係は9月10日から順次、鳥たちを避難させている。移動によるリスクを最小限に抑えるためだ。

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9月13日夜には、アフリカゾウ2頭、キリン8頭、アフリカライオン3頭、アフリカライオンの子供3頭を、屋内にある安全な鉄筋コンクリートの檻に移動させる。ハリケーン上陸中、動物と世話をする人間の安全を確保するためだ。全部で2000種の動物が、ハリケーンが通り過ぎるまでの週末を屋内で過ごすことになる。

冷蔵庫や油圧ショベルも用意

ハリケーンの直撃が予想されるサウスカロライナ州では、すでに住民42万人超が避難したが、同州の動物園や自然保護区にいる動物の命を守るためには、さらなる手助けが必要だ。

リバーバンクス動物園がハリケーン対策を開始したのは今年5月。動物福祉課のディレクターを務めるジョン・デービスが、「簡単にできる対策」を見つけるため、現場で調査を始めた時だ。ハリケーンシーズンの到来までに、現場に散らかっていたものを片づけたり、必要な修理を済ませた。現場の写真を撮り、緊急時の避難計画をチェックするために動物ごとの担当と相談した。「現場の職員には、ハリケーンに備えた行動指針を常に意識して伝えてほしい」と、彼は本誌に語った。

ハリケーン・フローレンスへの避難準備を始めたのは9月8日だ。事前に計画をしていたので、何をやるべきかはわかっていた。

「必需品の注文をして、備品を避難所に移すことから始めた」と、彼は説明した。「現場に燃料の備蓄があることを確かめた。魚や動物の餌の注文も一気に増やした」

動物園は予備の餌を保存するため、冷蔵庫が使える18輪のトレーラー2台を用意。ペンギンに適した気温を維持し、魚の水槽に酸素を供給したり浄化したりするために、発電機一式も注文した。暴風雨による倒木を素早く取り除くために油圧ショベルもレンタルした。



動物園の大半の職員は、ハリケーン上陸中は危険な道路状況での運転を避けるため、自宅待機を命じられた。「飼育係は献身的だ。自宅待機を命じなければ、動物を救うため何が何でも現場に駆け付けるような人ばかりだ」と、デービスは言った。今週末は10~12人の飼育係が園内の仮眠所に寝泊まりし、動物たちの様子を見守ると言う。

またデービスは、米動物園水族館協会のネットワークを通じ、同地域にある他の動物園の様子も監視している。もし近隣の動物園がハリケーンの被害に対処できなくなれば、一部の動物を一時的に引き取る用意があると言う。彼は2017年9月に米フロリダ州に超大型ハリケーン「イルマ」が上陸した際、それを実行した。

「われわれはハリケーン対策で大きく進歩した。今は他の動物園にいる動物の安全にも注意を払っている」と、彼は言う。心配なのは、ハリケーンへの備えが不十分なうえ、ネットワークに所属していない動物園があることだ。「そこにいる動物たちが心配だ。どうやって避難するのかも分からない」と、彼は言った。「とにかく無事でいてほしい」


ペットの犬を預かって一時避難させる愛護団体

(翻訳:河原里香)




ニコール・グッドカインド

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