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NAFTA見直し合意でも、米加関係の修復には時間がかかる

ニューズウィーク日本版 2018年10月2日 16時46分

カナダは9月30日、アメリカとメキシコが先に合意した貿易協定に参加することで合意した。新しい貿易協定「USMCA(アメリカ・メキシコ・カナダ協定)」は、25年前に成立した北米自由貿易協定(NAFTA)に取って代わることになる。

カナダが署名に合意したのは、NAFTA再交渉の合意期限を迎える米東部時間10月1日午前0時ぎりぎりだった。カナダとアメリカの関係は、1年以上前から気まずくなっていたのだ。

だが新協定のUSMCAにより、アメリカの農家はカナダの乳製品市場に、より広くアクセスできるようになる。トランプがメキシコ・カナダに課すと脅していた自動車関税は回避された(ただし、数量規制はすることになり、非関税の対象と認められるための域内での部品調達率もこれまでより高くなった)。

アメリカ通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表と、カナダのクリスティア・フリーランド外相は共同声明を発表し、「USMCAは、私たちの労働者、農家、酪農家、企業にとって高水準の貿易協定であり、より自由な市場、より公正な貿易、強固な経済成長をこの地域にもたらすだろう」と述べた。

彼らはUSMCAを「21世紀のための現代版貿易協定」と呼び、「中所得層を強化するとともに、北米の5億人近い住民に対して、賃金の高い安定した仕事や新しい機会を与える」と述べた

「歴史に残る協定」

ドナルド・トランプ大統領にとって、NAFTAの再交渉は念願だった。NAFTAは1993年、当時のビル・クリントン大統領が署名して成立した協定だが、トランプは「史上最悪の貿易協定」と呼び、カナダが合意しなければ、アメリカとメキシコの2カ国だけで協定を結ぶと明言していた。

トランプは10月1日、合意を祝うツイートをし、これは3カ国すべてにとって「素晴らしい取り決め」であり、「USMCAは歴史に残る協定だ」と述べた。

「昨晩遅く、期限の直前に、カナダと素晴らしい貿易協定を結ぶことで合意した。メキシコとすでに合意済みの協定に、カナダも加わることになる」。トランプは米東部時間の10月1日午前11時、新協定に関する記者会見をホワイトハウス内のローズ・ガーデンで開く予定だ。

トランプは続けて、「NAFTAが持つ多くの欠点や過ちを正し、われわれの市場を農家や製造業者に向けて大きく開放し、アメリカに対する貿易障壁を減らす。偉大な3カ国の関係は、世界のほかの国々との競争において、より緊密になるだろう」とツイートした。

だが一方で、元駐カナダ米大使のブルース・ヘイマンは、ホワイトハウスがカナダとの交渉で見せた傲慢な姿勢はのちのちまで両国関係に影響をもたらすだろうと語った。

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2014年4月から2017年1月までアメリカ大使としてカナダに駐在したヘイマンは本誌に対し、「今回の合意に伴ってアメリカが失った最大のものは、カナダとの友好関係だ。修復には時間がかかる」と述べた。「もっとも大切な友人かつ隣人に対し、あれほど敵対心をむき出しにした。国と国との関係は、単なる取引ではない。より大きく、より広く、より深いものだ」

トランプはカナダのジャスティン・トルドー首相に対し、中国に対するのと同じように一方的関税引き上げという脅しを使い、「不誠実で弱虫」と罵倒した。おまけに、カナダが共闘を約束していたメキシコを裏でそそのかし、カナダ抜きで合意をまとめた。カナダが期限までに合意しないなら、二国間だけで発効手続きに入ると最後通牒を突き付けたのだ。

「何十年もかけて築いた関係でも、一瞬で損なわれてしまうことがある。修復にはそれなりに時間がかかると思う」と、ヘイマンは言う。

ほかの専門家も同様の考えだ。米エモリー大学のジェフリー・ローゼンウェイグ経営学教授はCNNに対して、「わずかな量の牛乳を売るために、主要同盟国との関係を損なってしまった」と述べた。

新貿易協定は米連邦議会に送られ、60日間におよぶ審議期間を経たうえで署名される。

(翻訳:ガリレオ)


シャンタル・ダ・シルバ

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