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サウジ、トランプに逆らう石油減産で対米関係悪化

ニューズウィーク日本版 2018年11月14日 17時40分

<対イラン制裁発動後の原油価格が反落するなか、サウジアラビアは石油産出量を削減する方針を発表。原油高を批判してきたトランプと衝突か>

ドナルド・トランプ米大統領の警告にもかかわらず、サウジアラビアのハリド・ファリハ石油相は11月12日、石油生産を減らす方針を発表した。

アメリカは11月5日からイラン産原油の禁輸制裁を再開したが、これまでイラン原油を大量に輸入していた国には一時的な適用除外を認めている。ファリハはこの点に触れ、「予想されたほど市場への原油供給は減っていない」と述べた。そして現在、石油の供給過剰で価格が下落しているため、市場を安定させるために生産量を抑制すると語った。

トランプは12日のツイートで、この発表を批判した。「願わくば、サウジアラビアやOPECには原油生産を削減してほしくない。供給量からすれば、石油価格はもっと下落するはずだ!」

トランプは以前から、OPECと原油価格に対するその支配力に不満を示してきた。今年7月にはOPECを「独占組織」と呼び、ツイッターでこう警告した。「ガソリンの価格が上昇しているのに、彼らはほとんど役に立っていない。それどころか、アメリカは多くのOPEC加盟国をほとんど無料で守っているのに、連中は原油価格を釣り上げている。われわれの関係は、互恵的でなければならない」

OPECは世界の主要産油国が加盟する組織で、原油生産に関する決定は、世界の原油価格を左右する。産出量が増えれば、一般的に消費者価格は下がり、産出量が減れば価格は上昇する。

トランプとOPECが真っ向勝負

金融ニュースサイトのマーケットウォッチによれば、原油価格はここ数週間で大幅に下落し、ニューヨーク商品先物市場のNY原油で1バレル当たり60ドルを割り込んだ。

プライス・フューチャーズ・グループの上級市場アナリスト、フィル・フリンは、トランプとOPECの軋轢が世界市場に緊張を引き起こしている、とコメントしている。

「株式市場の下落とドナルド・トランプのツイートの相乗効果で、原油価格は反落した」と、フリンは述べた。「石油はテクニカル的に弱いポジションにある。それに11月11日はベテランズ・デーの祝日で、通常より消費量が少なかった」

「現実を認めよう──OPECとトランプはやる気満々だ」彼は付け加えた。

アメリカ主導の対イラン制裁再開までの間、サウジアラビアとロシアは、世界の石油供給を安定させるために原油増産に同意した。市場はイラン原油に対する厳しい制裁を懸念し、原油価格は1バレル当たり85ドルに上昇した。

だが現在、原油価格は大幅に下落し、イランも依然として主要市場への輸出が可能な状態であることから、サウジとしては過剰生産を続ける必要はほとんどないと考えている。



ファリハは減産の規模については触れなかったが、OPEC関係者が日量100万バレルの減産が適当と示唆する分析を検討していることを明かした。ただし、OPECは「世界経済を減速させるつもりはない」と、付け加えた。

サウジアラビアがトランプの願いをあからさまに無視したのは、米国在住のサウジアラビア人記者ジャマル・カショギの殺害をめぐってアメリカとサウジ王室との間で緊張が高まっている時期であることも関係している。

カショギは10月にイスタンブールのサウジ領事館に入った後、殺害され、遺体は処理されたといわれている。

トランプは、サウジがアメリカ製武器の得意先であることなど両国の経済関係を重視して、サウジに対して厳しい姿勢をとることに消極的にみえた。だが先週になって、懲罰的な制裁措置をとる可能性に言及した。事件の詳細が明らかになるにつれ、民主・共和両党の議員も、事件との関与を否定するサウジアラビアを激しく非難している。

(翻訳:栗原紀子)


ジェーソン・レモン

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