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中国軍は台湾を取り戻して祖国統一を成し遂げる

ニューズウィーク日本版 2018年11月22日 16時26分

<次世代の中国人は自分たちほど長く待たずに中台統一の悲願をかなえてほしい──半世紀を祖国に捧げた中国軍の古参幹部がメディアに語った>

中国人民解放軍軍事科学院の副院長を務めた何雷(He Lei)中将は11月21日、杭州市の地元メディアのインタビューに応え、鄧小平(トン・シアオピン)が改革開放に着手して以降、この40年で中国は急成長を遂げて大国の仲間入りをしたと感慨深げに語った。何中将が入隊したのはさらに10年前、建国の父である毛沢東(マオ・ツォートン)の時代だが、「50年間軍務に就いてきて、まだかなえていない望みがただ1つある」と力を込めた。「それは祖国の統一だ」

中国共産党は毛の軍隊が内戦に勝利した1949年以降、中国本土を統治してきたが、敗れた国民党は台湾に逃れ、以後その地を実効支配してきた。何中将に言わせると、「中華民族の復興という中国の夢を実現し、祖国再統一を成し遂げるために、われわれが乗り越えなければならない唯一の障害」が台湾問題だ。

「台湾の祖国復帰を待つうちに髪が白くなってしまったと、老元帥が嘆いていたのを今でも思い出す。無念にも老元帥は数年前に亡くなった。後を継いだ私も軍歴50年の古参兵となり、髪もだいぶ白くなったが、次世代はわれわれほど長く待たずにすむことを願っている」

海軍力を見せつける

アメリカは1979年初め、ちょうど鄧が市場経済を導入し始めた時期に中国と国交を樹立。以後、台湾(正式には中華民国)との関係は限定的なものとなったが、武器輸出は行ってきた。トランプ政権は台湾との外交関係を拡大する動きを見せ、ただでさえ米中間の緊張が高まるなか、さらに中国を苛立たせている。

中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は2050年を目処に、新技術の開発と戦闘能力の現代化を中心に据えて、世界最大の常備軍である中国軍の全面的な再編を進めている。特に力を入れているのは海軍力の強化だ。今年4月には南シナ海で中国史上最大規模の海上軍事パレードが行われ、習も閲兵した。

パレードに先立ち、中国軍は台湾近海で一連の軍事演習を実施。これに対して、台湾も中国と名指しは避けたものの、「外国軍の侵攻」を想定した実弾演習を行い、防衛力を誇示した。習は、必要な場合は武力による併合も辞さないと明言しており、米政府は地域の安定を脅かす重大要因として、中国の動きに神経をとがらせている。



台湾の監督が涙の訴え

中国は中小の島々すべてを含め、南シナ海のほぼ全域の領有権を主張。マレーシア、フィリピン、台湾、ベトナムも領有権を主張しており、島嶼部に小規模の軍事施設を建設しているが、中国はそれをはるかに上回るペースで軍事拠点化を進め、通信センターと思しき施設を整備し、島に建設した滑走路で重爆撃機の着陸訓練まで行っている。アメリカはこの海域の制海権を握ろうとする中国に怒りを隠さない。

戦略国際研究センターのアジア海事透明性イニシアチブは20日、中国が新たに建設した施設の衛星画像を公開した。情報収集を目的とした施設とみられ、軍事拠点化が着々と進んでいることを物語る。

中台問題はアジアの映画界にも波紋を投げかけた。17日に台北で行われた中国語映画の祭典・金馬奨の授賞式で、ドキュメンタリー賞を受賞した台湾の傳楡(フー・ユー)監督が「台湾が真に独立した国家として扱われる」ことを願っていると涙ながらに訴えたのだ。授賞式の模様を放送した中国の国営テレビは急遽、その場面をカット。中国の俳優、涂們(Tu Men)と、最近脱税事件で騒がれた女優の范氷氷(ファン・ビンビン)は、すぐさま「(中台)両岸は1つの家族」などと中国政府の公式見解に添った発言をした。

一方、米中間では引き続き貿易戦争が続いており、トランプはこれまでに2500億ドル相当の中国製品に制裁関税を課し、さらに2600億ドル相当の製品に関税を発動すると脅している。中国はこれに報復関税で応じているが、交渉再開で危機は解決されるとの観測もある。

トランプと習は今月末、20カ国・地域(G20)首脳会議が開催されるアルゼンチンのブエノスアイレスで会談を行う予定で、トランプはこの場で貿易戦争を休戦に持ち込む考えらしい。

トム・オコナー

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