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フランスの脱税対策、納税者のSNSで生活ぶりをチェックへ

ニューズウィーク日本版 2018年11月27日 18時45分

<フランスでは、脱税対策としてSNSを細かく調べ、申告された収入額がSNSで見られるライフスタイルと乖離していないか確認する意向>

SNSでの生活ぶりと申告収入額を比較

フランス政府は今後、脱税対策としてフェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディア(SNS)を細かく調べ、申告された収入額がSNSから見られるライフスタイルと乖離(かいり)していないか確認する意向であることが分かった。ジェラルド・ダルマナン行動・公会計相が明らかにしたもので、来年から実施される。

ロイター通信によると、ダルマナン公会計相はフランスのビジネス系テレビ番組「Capital(キャピタル)」に出演した際、「高級車を持つだけの財力がないのに、高級車と一緒に撮った写真が何枚もあるとしたら、財務当局はそれを見られるようになります。いとこや彼女に借りたものかもしれないし、そうでないのかもしれない」と話したという。

SNSを使った脱税対策は、10月にフランスで新たに成立した法律を受けて実施される試験的な試み。この法律は、脱税の取締りを目的に、より広範囲のオンラインデータを活用できるよう税務当局の権限を強化するものだ。当局はSNSなどで公開されている個人のデータを使って分析できるようになる。

フランスの国際ニュース専門チャンネル「フランス24」によると、新法では、民泊仲介サイト大手のエアビーアンドビー(Airbnb)や配車アプリのウーバーといった「シェアリング・エコノミー」のプラットホームに対しても、財務当局は利用者の収入などの情報を提供するよう求めることができるようになるとしている。

英国ではすでに運用中

フランスのニュースを英語で伝える「ザ・ローカル」は7月、脱税対策のおかげでフランス政府は2017年、海外に隠し口座を持つなどして申告漏れとなっていた179億ユーロ(約2兆3000億円)を取り返せたと報じていた。取り返した額としては前年(2016年)比で16億ユーロ減だというが、税収自体は前年の5940億ユーロ(約76兆5000億円)から6010億ユーロ(約77兆4000億円)に増加している。



フランス24によると、税逃れや脱税の対策にSNSを活用する方法は、英国がすでに導入して成功を収めている。英国歳入関税庁は2008年、「コネクト」と呼ばれるコンピューター・システムを導入した。このシステムにより英国の税務当局は、膨大な量の個人情報や商業的なデータを収集・分析・保存できるようになったという。

こうしたデータを使い、納税者が申告した収入額と、歳入関税庁が持っているデータの差異をチェックして、脱税を見つけている。このようにして徴収できた税収は、コネクト導入以来のべ30億ポンド(約4400億円)に達しているという。

英国歳入関税庁ではさらに、フェイスブック、ツイッター、インスタグラム、リンクトインといったSNSからも情報の提供を受けている。また、納税者が所有する物件に高価な改築などが行われていないかなどを調べるために、グーグル・アースの衛星画像も分析に活用しているという。

ただし、この政策には弱点もある。フランス24によると、あくまでもSNSで「公開されているデータ」が対象であるため、プライベート設定で鍵をかけたり閲覧できる人を制限した場合、税務当局は情報を得られなくなってしまう。フランス24はまた、納税者の生活がどれだけ正確にSNSに反映されるのか......という点についても、疑問を投げかけている。


松丸さとみ

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