Infoseek 楽天

中国・深センのマラソン大会、258人が不正で処分──でも実は「普通」のこと!?

ニューズウィーク日本版 2018年12月3日 18時50分

<中国・深セン市で開催されたハーフマラソン大会で、258人が不正行為をしたとして処分を受けたことが明らかになった。スポーツ協議会で不正が起きるのは、実は・・>

偽ゼッケン、替え玉、近道......258人が処分

中国南部の深セン市で11月25日に開催されたハーフマラソン大会で、258人もの人が不正行為をしたとして処分を受けたことが明らかになった。中国国営の通信社、新華社通信(英語版)など複数のメディアが、大会側の発表として報じている。

258人の内訳は、ゼッケンの偽造が18人、替え玉3人、近道237人の合計258人。具体的な処分内容は、偽造ゼッケンと替え玉の21人は同大会から永久追放、近道をした237人は2年間の出場禁止だ。

交通監視用のカメラがとらえた映像では、木が生い茂った広い中央分離帯がある片側3車線の広い道路(コース)で、大勢が中央分離帯を突っ切って反対側の車線へと近道をしている様子が映っている。新華社通信は大会側の説明として、本来はこの先少なくとも1キロ行ったところで折り返すコースになっており、つまり近道をした人たちが走った距離は、ハーフマラソンの21キロよりも2〜3キロ少なかったと報じている。



また、地元の写真家が撮影した画像には、全く同じゼッケンを付けて走っているランナーが2人映っていたという。

新華社通信によると、中国共産党の機関紙「人民日報」の英語版ピープルズ・デイリーは社説で、「マラソンとスポーツ精神をどうか尊重してほしい!」と書いた。また、大会側は「今大会で起こった違反行為を非常に残念に思っています。マラソンは単なるエクササイズではなく、人生を象徴するものであり、すべてのランナーは自分自身の行動に責任があります」と声明の中で述べた。

中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」のユーザーの中には、「最近の中国にはマラソン大会がありすぎるし、いわゆるランナーとやらが多すぎるけど、本当に走るのが好きなランナーはまだまだ少ない」とぼやいた人もいるという。

実際に、BBCが中国体育協会からのデータとして報じた数字によると、2011年にはランニング大会はわずか22件だったが、今年は1072件もの大会が開催されているほどの人気ぶりだ。今回の深センでの大会は1万6000人が参加したとされている。

200人の不正発覚はいたって普通?

中国では最近、マラソン大会での不正を防止するため、顔認識技術を導入している。11月の杭州マラソン大会で採用されたほか(チャイナ・デイリー)、12月2日に雲南省の昆明(こんめい)市で開催されたマラソン大会でも使われたもようだ(財新グローバルー)。



マラソン大会やトライアスロン、ウルトラマラソンなどランニングの世界でズルをする人たちを暴くウェブサイト「マラソン・インベスティゲーション」(マラソン調査)は深センでの事案について、「これだけの大人数が近道をするのは、実は驚くべき話じゃない。普通のこと」と書いている。

2015年のホノルルマラソンでは、計測地点のうち3カ所以上を通過しなかったランナーの数は400人以上に上り、2017年のディズニーワールド・マラソンでは200人以上が近道をした。さらにメキシコ・シティ・マラソンでは、2017年と2018年で、失格処分になったランナーの数は5000人に上った。

同サイトはそのため、今回中国で発覚した不正は規模としては他と比べ突出しているわけではないと説明。ここまで話題になった理由は、近道をしている様子をとらえたビデオがあったからだろうと分析している。

同サイトはまた、そもそもトップ・アスリートでないのなら、ちょっとズルをしたくらい、自分をだましているだけだからいいではないか......という意見をはっきりと否定している。近道をしておきながらフィニッシュ・ラインを踏み、完走メダルをもらうような人たちは、正直な参加ランナー全員をだまし、大会の準備に時間をかけてきた人たち全員、コースの1センチ1センチをすべて正直に走ったり歩いたりした人たち全員をだましたのだ、と述べている。

Organizers ban over 250 runners from Shenzhen-Global1 News Network



松丸さとみ

この記事の関連ニュース