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【アメリカ株】FRBの強気に市場落胆、正しいのはどちらか?

ニューズウィーク日本版 2018年12月20日 16時30分

<トランプが言うとおり、景気に配慮して利上げを見送る選択もありえたとクルーグマンは言う>

FRB(米連邦準備制度理事会)が今年4回目の追加利上げを決めたのを受けて、12月19日のダウ工業株30種平均の終値は前日比351ドル98セント(1.48%)安の2万3323ドル66セントまで下落し、今年最安値をつけた。今週に入ってからの下げ幅は1250ドルを超え、S&P500種株価指数とハイテク株が多いナスダック総合株価指数も12月の下落率としては世界恐慌さなかの1931年以来の大きさを記録した。

FRBによる追加利上げの決定が伝わる前、19日の朝方のダウ平均は一時381ドル高まで上昇する場面があった。

多くの市場関係者は、FRBが年内の利上げを見送り、2019年の利上げペースも減速させると予想していた。だが投資家や短期売買で利ざやを稼ぐ投機家とは違い、FRBは日々の株価のことは大して懸念していないと専門家はみる。

「FRBの利上げはもう終わりに近いか、2019年の利上げはあっても1回にとどまるものと市場は期待していた」と、フォート・ワシントン・インベストメント・アドバイザーズの最高投資責任者、 ニック・サージェンは米紙USAトゥデイに語った。「ところが公表された今後の金融政策見通しで、米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの過半数が2019年の利上げ回数の見通しを計2回とした。要するに、FRBより市場関係者の方が景気減速を懸念している」

トランプの利上げ牽制に反論

19日のダウ平均の終値は2万3323ドル66セントで年初来最安値を更新し、10月3日に記録した過去最高値である2万6951ドル81セントから12.1%下落した。

S&P500社株価指数とナスダック総合株価指数も今年の最安値を更新し、12月の下落率としては世界恐慌だった1931年以来最悪だった。

FRBは政策金利の誘導目標を年2.00~2.25%から2.25~2.50%へと引き上げた。FRBのジェローム・パウエル議長はFOMC後の記者会見で、政策金利の誘導目標の引き上げに伴い、利上げ回数の見通しは当初想定した3回ではなく2回にとどまると言った。

景気後退を恐れるドナルド・トランプ米大統領は、FOMCの前日にツイッターで、FRBは「表面的な数字よりも市場の動きを感じるべきだ」と投稿し、露骨に利上げを牽制していた。

パウエルはこう反論した。「我々の議論や金融政策の決定で、政治に配慮したりはしない。われわれは常に、議会に与えられた使命を果たすことに集中していく」

しかし内心はFRBもかなり苦しい決断だったろうと、ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマンはCNNに語った。「(トランプの言う通り)今は利上げをすべきではないという根拠も十分あった」が、かといって利上げを見送れば、「トランプに負けたように見える」



19日の米株式市場の急落を受け、小売や銀行、航空株にいたるまで幅広い銘柄に売りが波及した。米CNBCによれば、米航空大手ボーイングは前日比2.5%安、米鉄鋼大手USスチールは6%安、米銀行大手シティグループとウェルズ・ファーゴも1.5%以上下落した。クリスマスまで1週間を切る中、ターゲット、アマゾン、ノードストローム、ニューウェル・ブランズなどの株価も軒並み3%超下落した。

「FRBは現在も、さまざまな数値に基づき米経済は底堅いと判断しており、2019年に2回の利上げが可能とみている」と、米保険会社プルデンシャル・ファイナンシャルのチーフ・マーケット・ストラテジスト、クインシー・クロスビーはCNBCに語った。「市場に今必要なのは、FRBが米経済の底堅さを裏付ける正確で力強い経済データの数々を証拠として示すことだ」

自己責任もある

米物流大手フェデックスのフレデリック・スミスCEOは、「悪い政治的選択」をしてきた市場にも責任はあると言う。

「トランプのバラマキ減税や、イギリスのEU離脱、ドイツの難民危機や中国との貿易戦争などについて、ことごとく間違った判断を続けてきた。それらすべてがマクロ経済を停滞させた」

(翻訳:河原里香)


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