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中国、新たなステルス爆撃機開発でアジアの優位確立?

ニューズウィーク日本版 2019年2月5日 16時0分

<米軍と米本土を脅かす人民解放軍の新兵器>

中国が、中距離ならびに長距離のステルス爆撃機を開発していることが、新たな報告で明らかになった。地域の脅威はもちろん、世界的な脅威にも備えるものだ。

アメリカ以外でステルス戦闘機の開発に成功したのは中国だけだ。アジアの超大国になった中国は2017年、国産のステルス戦闘機「J-20」(「殲20」)を正式に配備。軍事力のさらなる増強に取り組んでいる。

米空軍誌エア・フォース・タイムズによると、アメリカ国防情報局(DIA)が発表した報告書は、「(中国が手がける)新型爆撃機の開発においては、ステルス技術が引き続き重要な役割を果たす。新型爆撃機が初めて運用能力を持つようになるのは、2025年ごろになるだろう」と述べている。この爆撃機は、「周辺地域と、より広域のターゲットを攻撃する」能力を備えることになる。



産業スパイ疑惑も

報告書にはさらに、「それらの新型爆撃機には性能が追加され、現在運用されている爆撃機よりもあらゆる面でグレードアップする。設計においては、第5世代ジェット戦闘機技術が多く搭載されるだろう」と続く。

このニュースは、産業スパイ疑惑と貿易摩擦をめぐって米中間の緊張が続くなかで報じられた。中国政府は1月末、中距離弾道ミサイル、東風DF-26、別名「グアムキラー」の発射実験に成功。その映像を公開したばかりだ。報道によればこのミサイルは、中国本土から発射された場合、アメリカ領グアムを攻撃できる射程距離を持つ。



オーストラリアにあるマッコーリー大学の中国研究者アダム・ニーは、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストに対し、中国政府が示したかったのは「空母や基地といったアメリカの戦略資産を、中国は危険にさらすことができる」ということだった、と語った。

アメリカのドナルド・トランプ大統領は2018年、中国を相手に貿易戦争をしかけ、中国からの輸入品に莫大な関税をかけた。中国も関税引き上げでそれに対抗、報復の応酬が続いた。ZTE(中興通訊)やファーウェイ(華為技術)など中国のハイテク企業に対しては、技術の盗用を非難している。

南シナ海をめぐっても緊張関係が続いている。中国政府が同海域の領有権を主張し、国際社会の多くはそれに異議を唱えている。アメリカは、問題の海域を艦船でパトロールする「航行の自由」作戦を展開してきた。



中国海洋安全協力研究所の代表を務める戴旭大佐は2018年12月、「アメリカの艦船が再び中国の領海に侵入した場合には、2隻の軍艦を派遣すべきだ。1隻は米艦を止めるため、もう1隻は体当たりするためだ」と述べた。

エア・フォース・タイムズは、中国軍が中距離戦闘機とそれ用の長距離ミサイルを開発することで、アジア地域でアメリカよりも優位に立つ可能性があると指摘している。そして、中国政府が「太平洋の空域を支配するための方法を解き明かした可能性がある一方で、アメリカはF-35のような短距離戦闘機やB-21のような長距離爆撃機に資金をつぎ込んでいる」と懸念を示した。

アメリカ政府が中国の動きを脅威と述べたことを、中国側は一蹴した。中国外務省報道官の華春瑩は1月、アメリカ政府の反中感情は「ヒステリー」のレベルに達していると述べた。

(翻訳:ガリレオ)


ジェイソン・レモン

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